休んでいる脳は、休んでいない―思考の疲れと安静時活動を見直した神経代謝研究 2026/03/16Posted in文献, 神経科学 パソコンの電源を落とし、家に帰る。 玄関を開けるなりソファに座り込み、しばらく何もする気が起きない。 今日一日、複雑な問題を処理し続けて、頭の芯がもう動かないように感じる。 だから今は、何も考えず、ただ流れるテレビの…
風邪に、亜鉛はどこまで効くのか―急性ウイルス性呼吸器感染症の予防と治療をめぐる検討 2026/03/15Posted in健康, 医療全般, 文献 幼いころ、夏風邪で高い熱を出して寝込んだことがあります。 そんなとき、オバアがカチューユをつくってくれました。 どんぶりに削り節と味噌を入れ、湯を注ぐだけの、ごく簡素な汁物です。 沖縄では、風邪のときの家庭の手当てと…
その靴は、誰を基準に作られているのか―女性ランナー21人が語った「合わない靴」の理由 2026/03/14Posted inスポーツ, ランニング, 文献 ひもの結び方を変えても、同じ場所が痛くなる。 かかとを固定しようとすると、つま先が圧迫される。 ゆとりを持たせるとかかとが浮く。 何足替えても、同じことが起こります。 なぜ自分の足には、ちょうどよく合う靴がないの…
地球の磁場が見えていた―鳥は量子コンパスを持っている 2026/03/13Posted in文献, 生物, 科学 ヨーロッパコマドリは、秋になると数千キロメートルを南へ飛びます。 地図も標識もありません。 ただ、まっすぐ目的地へ向かいます。 人間が同じことをやろうとすれば、GPSと気象データと詳細な地図が必要になります。 鳥には…
「遺伝」という言葉の正体―CRIC研究が見つめた、家族と腎臓病の進行 2026/03/12Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 家族に同じ病気の人が多いとき、多くの人はこう考えます。 「これは遺伝だろう」と。 そして不思議なことに、「遺伝」と説明されると、それ以上深く考えなくても、どこか納得してしまうものです。 仕組みを詳しく知らなくても、原…
なぜ皮肉がわかると、人は安心するのか―ブラックユーモアと不安の関係を調べた心理実験 2026/03/11Posted in心理学, 文献, 日常 宴席でブラックジョークを口にした瞬間、場の空気が変わったことがあります。 笑った人と、表情を固めた人が、同じテーブルにいました。 笑えなかった側は「センスがない」と思われたかもしれません。 笑った側は「空気が読めない…
くり返さない秩序は、結晶と呼べるのか― 博物館の箱から始まった、宇宙46億年のミステリー 2026/03/10Posted in文献, 歴史, 科学 ある日、イタリアの博物館の地下で、一つの箱が開けられました。 その箱には、古い岩石のかけらがいくつか入っていました。特別な展示品でもなく、ただの鉱物標本として保管されていたものです。 ところが、その小さな粒を顕微…
一歩目、足の着き方が、すべてを変える ― ティラノサウルスの接地様式と歩行運動学 2026/03/09Posted in文献, 生物, 科学 ランニングを始めてマラソン大会に出るようになると、少しでも効率よく走りたいという欲が出てきます。 YouTube動画や書籍で「かかと着地」や「フォアフット(つま先着地)」という言葉を目にするのも、そのころです。 …
孤独になると、なぜ人は過去を思い出すのか ―ノスタルジア研究が見つめた「切れない構造」 2026/03/08Posted in心理学, 文献, 日常 三月になりました。 街を歩いていると、ふいに花束を抱えた人の姿が目に入りました。 晴れやかな表情。写真を撮る家族。 卒業式の帰りなのでしょう。 その光景を見ていると、自分のあの頃を思い出します。 教室の空気。友だちの…
秘密は隠すより、思い出すほうが重い―心がさまようとき、気分はあとから下がりやすい 2026/03/07Posted in心理学, 文献 誰にでも、口に出せないことのひとつやふたつはあるものです。 人はそれを話さずにいると、「守っている」と感じます。 口に出さなければ、秘密は保たれている、と。 けれど、本当にそうでしょうか。 秘密がいちばん重く感じ…
地図は、どこへ消えたのか―生成AI時代の「空洞化した心」と判断の主語 2026/03/06Posted inAI, 文献, 神経科学 スマホの地図アプリを使うと、目的地には着きます。 けれど、どの方向から歩いてきたのかを説明できないことがあります。 音声案内に従えば迷いません。 「次は右です。」「三百メートル先を左です。」 場所は見つかる。 しかし…
宇宙は乱れていく。それでも、なぜ複雑になるのか―機能的情報という考え方から見る宇宙の進化 2026/03/05Posted in文献, 科学 朝、台所でお湯をわかします。 やがて気泡が立ち、蒸気がのぼる。 放っておけば、熱は部屋に広がり、やがて冷めていきます。 これがエントロピー増大、すなわち第二法則の世界です。 秩序はほどけ、差はならされ、全体は均されて…
動ける人と、動けなくなる人のあいだ―7つのがん種・1万7141人を10年以上追跡した診断後運動とがん死亡 2026/03/04Posted in健康, 医療全般, 文献 がんと診断されたとき、多くの人はまず「安静にしなければ」と感じます。 体は治療の副作用で消耗し、気力も落ちています。 周囲も「無理しないで」と言います。 運動どころか、日常の買い物や散歩さえためらう人は少なくありませ…
「自分のものだけ、許される」―嫌悪は“におい”ではなく、“境界”を嗅いでいる 2026/03/03Posted in心理学, 文献, 日常 他人のおならの匂いは耐えがたいのに、自分のそれはなぜかそこまで気にならない。 この非対称は笑い話のようでいて、妙に引っかかります。 刺激は同じはずなのに、反応が違う。 私たちは本当に匂いに反応しているのでしょうか。 …
食べる回数は、体を変えるのか―3食か、こまめに分けるか。研究が見た「空腹」とのつきあい方 2026/03/02Posted in健康, 文献, 日常 昼前になると、少しそわそわします。 お腹が鳴る。集中力が落ちる。イライラする。 私たちはその感覚を「よくないもの」だと思いがちです。 だから、なるべく空腹にならないように食べます。 3食きちんと。あるいは2時間おきに…
先延ばしにも、意味があるのかもしれない―成人237人が示した「すぐに答えを出さない力」 2026/03/01Posted in心理学, 文献 やらなければいけないことがあるのに、なぜか手をつけない。 机に向かっているのに、別のことを考えている。 あとでやろう、と言いながら時間が過ぎていく。 そんな時間を、私たちは「無駄にしてしまった時間」と呼びます。 …
足りない重さの正体―ダークマターは“止まらなかった宇宙”だったのか 2026/02/28Posted in文献, 科学 夜空の星を見ていると、宇宙は光で満ちているように感じます。 けれど、星や銀河の動きを計算すると、見えているものだけでは重さが足りません。 その足りない重さとは、いったい何なのでしょうか。 見えない星でしょうか…
砂の海に立つ、極彩色の狩人―内陸の川辺で進化した新種スピノサウルス 2026/02/27Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 砂漠の真ん中で日が沈みかけていました。 発電は太陽光だけ。 作業時間はあとわずかです。 研究者たちは一台のノートパソコンを囲んでいました。 画面には、砂の表面から拾い集めた歯と顎の破片をCTスキャン(三次元的に内部構…
脳は、いつ変わるのだろう―12万人のデータが教えてくれた、更年期とホルモン治療の話 2026/02/26Posted in健康, 文献, 神経科学 外来で更年期を迎えた女性の話を聞いていると、「最近、自分が自分でない気がする」と言われることがあります。 理由がはっきりしない不安。 急に落ち込む気持ち。 夜中に目が覚めてしまい、そのまま眠れないこともあります。 検…
量子力学は、自分の謎をほどきはじめた―100年の測定問題に光 2026/02/25Posted in文献, 科学 机の上のりんごは、そこにあります。 赤くて、丸くて、触れば確かな手ざわりがある。 誰が見ても、同じ場所にあるとわかる。 世界は一つで、はっきりしている。 私たちは疑いなく、そう思っています。 ところが、物をとても…
身体は「一つの得意技」だけでは足りない―運動の多様性と死亡リスク 2026/02/24Posted inスポーツ, 健康, 医療全般, 文献 大人になると、運動にも肩書きが生まれます。 私は走る人。 僕はジムに行く人。 同じ時間に同じことを繰り返せば、それは習慣となり、生活は整います。 迷いが減り、管理している感覚も得られます。 けれど、整っていることと、…
1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク 2026/02/23Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常, 神経科学 正直な話、世の中、コーヒー擁護の論文が多すぎる気がしています。 心臓にいい、糖尿病にいい、肝臓にいい、うつにいい、死亡率を下げる―そして今度は「認知症」が対象です。 いつものことですが、半分ジョークでこう言い…
認知症は脳だけの病気ではなかった―日本データが示した「難聴」という最大リスクと14の修正可能因子 2026/02/22Posted in医療全般, 文献, 神経科学 日本では今、認知症はごく一部の人の問題ではなくなりました。 高齢者のあいだでは主要な健康課題のひとつであり、医療や介護だけでなく、社会保障や地域のあり方そのものに影響を与えています。 長寿は歓迎すべきことですが、その…
夜のスマホは、脳を覚醒させているのか―心拍データが映した、子どもたちの夜 2026/02/21Posted in健康, 文献, 神経科学 夜、布団に入り、顔のすぐ横にスマートフォンの光が浮かぶ。 部屋は暗く、体は横たわっているのに、親指だけが静かに画面を動かしている。 こうした光景を前に、「寝る前のスマホはよくない」と言われることは少なくありません。 …
傷は、どこで最初に気づかれるのか―マクロファージ核が読み取る“形”の変化と即時血管応答 2026/02/20Posted in医療全般, 文献, 生物, 科学 「そこ、耳の後ろ、少し血が出てるよ」 そう言われて、はじめて触れてみる。 自分ではまったく気づいていなかったのに、指先にわずかな湿り気が残る。 痛みは、そのあとから追いついてくる。 異変は、自覚よりも先に、どこか…