できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路

できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路

  ギターを練習していて、何日も引っかかっていたフレーズが、ふいに弾ける瞬間があります。 指が勝手に動き出す。 昨日まで転んでいた自転車を、ある朝すっと乗りこなしている。 けれど、その「できた」は脆い。 どうやって弾いた…
変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究

変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究

  「人は変わらない。」 昔からよく聞く言葉です。 私自身もそう考えることがあります。 事態を動かしたいなら、相手を変えようとするより、自分が変わるほうが早い。 少し冷えた戦略にも見えますが、この考え方には別の面もありま…
なぜ皮肉がわかると、人は安心するのか―ブラックユーモアと不安の関係を調べた心理実験

なぜ皮肉がわかると、人は安心するのか―ブラックユーモアと不安の関係を調べた心理実験

  宴席でブラックジョークを口にした瞬間、場の空気が変わったことがあります。 笑った人と、表情を固めた人が、同じテーブルにいました。 笑えなかった側は「センスがない」と思われたかもしれません。 笑った側は「空気が読めない…
孤独になると、なぜ人は過去を思い出すのか ―ノスタルジア研究が見つめた「切れない構造」

孤独になると、なぜ人は過去を思い出すのか ―ノスタルジア研究が見つめた「切れない構造」

  三月になりました。 街を歩いていると、ふいに花束を抱えた人の姿が目に入りました。 晴れやかな表情。写真を撮る家族。 卒業式の帰りなのでしょう。 その光景を見ていると、自分のあの頃を思い出します。 教室の空気。友だちの…
食べる回数は、体を変えるのか―3食か、こまめに分けるか。研究が見た「空腹」とのつきあい方

食べる回数は、体を変えるのか―3食か、こまめに分けるか。研究が見た「空腹」とのつきあい方

  昼前になると、少しそわそわします。 お腹が鳴る。集中力が落ちる。イライラする。 私たちはその感覚を「よくないもの」だと思いがちです。 だから、なるべく空腹にならないように食べます。 3食きちんと。あるいは2時間おきに…
1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク

1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク

  正直な話、世の中、コーヒー擁護の論文が多すぎる気がしています。   心臓にいい、糖尿病にいい、肝臓にいい、うつにいい、死亡率を下げる―そして今度は「認知症」が対象です。   いつものことですが、半分ジョークでこう言い…
眠らなければ終わる夜に、なぜ目だけが冴えるのか―新奇環境で覚醒が続く理由と「初日効果」が残した回路

眠らなければ終わる夜に、なぜ目だけが冴えるのか―新奇環境で覚醒が続く理由と「初日効果」が残した回路

  出張の前泊で、慣れないホテルに泊まった夜、電気を消してからが本番になる。 明日は朝から大事な仕事がある。 失敗は許されない。 体は疲れている。 条件は揃っている。 なのに眠れない。 布団の感触も、空調の音も、いつもよ…
体は、食べた瞬間には変わらない―オーツ麦が残した“時間差の反応”を、腸内で読み解く

体は、食べた瞬間には変わらない―オーツ麦が残した“時間差の反応”を、腸内で読み解く

  健康食品には流行があります。 ファッションと同じで、ある時期に評価が高まり、しばらくすると別のものに置き換わっていく。 その流れの中で、私たち自身も、意識するほどではなく、流行に乗ったり降りたりを繰り返しています。 …
円と四角は、なぜ一つの絵に収まったのか―《ウィトルウィウス的人体図》を読み直す

円と四角は、なぜ一つの絵に収まったのか―《ウィトルウィウス的人体図》を読み直す

  十五世紀の終わり、レオナルド・ダ・ヴィンチは一枚の素描を描きました。 円と正方形の中に、手足を大きく広げた人の体が重ねて描かれているその図は、今もなお世界で最も有名な人体図の一つです。 多くの人がその美しさに目を奪わ…
音楽教育は、貧困による学業の遅れから子どもを守る―アメリカの大規模追跡研究から見えてきたこと

音楽教育は、貧困による学業の遅れから子どもを守る―アメリカの大規模追跡研究から見えてきたこと

  子どもが新しい言葉を覚える瞬間は、案外あっけないものです。 意味を正確に理解していなくても、音のかたちや使われ方を真似しながら、会話の中に滑り込ませていく。 その様子を見ていると、言葉は教室で与えられるというより、日…
死はいつも、こちら側に残される―日本版デス・リテラシー指標で見えてきた、動けない空白

死はいつも、こちら側に残される―日本版デス・リテラシー指標で見えてきた、動けない空白

  フランスの思想家モーリス・ブランショは、「死はいつも他人の死である」という言葉を残しました。 私たちは、自分の死を自分で「見る」ことはできません。 死は、いつも誰かの出来事として、生きている私たちの前に現れます。 病…
2026年を迎えて

2026年を迎えて

  あけましておめでとうございます。 2026年の元日を迎え、こうして皆さんにごあいさつできることを、院長として率直にうれしく思っています。   昨年を振り返ると、「あっという間でした」と軽く言ってしまうには、決して平坦…
会話が途切れた一瞬で、指は画面へ伸びる―不安な心は、なぜ目の前の人よりスマホを選ぶのか

会話が途切れた一瞬で、指は画面へ伸びる―不安な心は、なぜ目の前の人よりスマホを選ぶのか

  会話が途切れた、その一瞬です。 気まずさが生まれる前に、指は自然とスマートフォンへ伸びます。 隣に誰かが座っていても、この動きは止まりません。 気づけば、沈黙を埋める相手は人ではなく、画面になっています。 この反射の…