腎臓を守る薬が逆効果に見えるとき―検査の数字が悪く見えても、薬を続ける理由 2026/04/04Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 腎臓の中には、糸球体と呼ばれる微小なフィルターが、左右あわせておよそ200万個あります。 血液はここでこし取られ、老廃物や余分な水分が尿として外に出されます。 ところが、高血圧や糖尿病が長く続くと、このフィルターには…
平均の食卓から、こぼれ落ちる人がいる―肉の摂取量とAPOE ε4遺伝子型と認知症リスク 2026/04/03Posted in健康, 医療全般, 文献 食卓に肉が続くと、少し野菜も食べなきゃという気になります。 量の問題だけではありません。肉には、それだけで少し身構えさせる空気があります。 「赤肉は老化に悪い」という見出しを目にすると、その感覚にもっともらしい根拠を…
補充する側が、先に壊れていた―ターコイズキリフィッシュの腎骨髄で見えた、前駆細胞のDNA損傷 2026/03/30Posted in医療全般, 文献, 生物 免疫細胞には寿命があります。 古くなった細胞は消え、新しい細胞が骨髄の前駆細胞(成熟した免疫細胞の"もと"になる細胞)から絶えず補充される。 この補充ラインが動いているかぎり、免疫の前線は保たれます。 では、年をとっ…
時刻という変数―2型糖尿病の体内時計が運動の効き方を書き換える 2026/03/28Posted in健康, 医療全般, 文献 運動不足を自覚したとき、一念発起して朝活を習慣化しようと試みます。 何度試みたことか知れません。 早朝、まだ薄暗い中を走る。冷たい空気を肺に満たし、体に活力を注ぎ込む。健康のために正しいことをしているという達成感はあ…
差し出された不安— 診察室で、なぜ話がすれ違うのか 2026/03/23Posted in医療全般, 心理学, 文献 体のことが気になると、人はまず調べます。 検索窓に症状を入れ、AIの答えを読み、動画で誰かの体験談を見る。 家族や友人から聞いた話も頭に残ります。 そうして集めた言葉を診察室に持っていくのは、知識を見せびらかしたいか…
風邪に、亜鉛はどこまで効くのか―急性ウイルス性呼吸器感染症の予防と治療をめぐる検討 2026/03/15Posted in健康, 医療全般, 文献 幼いころ、夏風邪で高い熱を出して寝込んだことがあります。 そんなとき、オバアがカチューユをつくってくれました。 どんぶりに削り節と味噌を入れ、湯を注ぐだけの、ごく簡素な汁物です。 沖縄では、風邪のときの家庭の手当てと…
「遺伝」という言葉の正体―CRIC研究が見つめた、家族と腎臓病の進行 2026/03/12Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 家族に同じ病気の人が多いとき、多くの人はこう考えます。 「これは遺伝だろう」と。 そして不思議なことに、「遺伝」と説明されると、それ以上深く考えなくても、どこか納得してしまうものです。 仕組みを詳しく知らなくても、原…
動ける人と、動けなくなる人のあいだ―7つのがん種・1万7141人を10年以上追跡した診断後運動とがん死亡 2026/03/04Posted in健康, 医療全般, 文献 がんと診断されたとき、多くの人はまず「安静にしなければ」と感じます。 体は治療の副作用で消耗し、気力も落ちています。 周囲も「無理しないで」と言います。 運動どころか、日常の買い物や散歩さえためらう人は少なくありませ…
身体は「一つの得意技」だけでは足りない―運動の多様性と死亡リスク 2026/02/24Posted inスポーツ, 健康, 医療全般, 文献 大人になると、運動にも肩書きが生まれます。 私は走る人。 僕はジムに行く人。 同じ時間に同じことを繰り返せば、それは習慣となり、生活は整います。 迷いが減り、管理している感覚も得られます。 けれど、整っていることと、…
1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク 2026/02/23Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常, 神経科学 正直な話、世の中、コーヒー擁護の論文が多すぎる気がしています。 心臓にいい、糖尿病にいい、肝臓にいい、うつにいい、死亡率を下げる―そして今度は「認知症」が対象です。 いつものことですが、半分ジョークでこう言い…
認知症は脳だけの病気ではなかった―日本データが示した「難聴」という最大リスクと14の修正可能因子 2026/02/22Posted in医療全般, 文献, 神経科学 日本では今、認知症はごく一部の人の問題ではなくなりました。 高齢者のあいだでは主要な健康課題のひとつであり、医療や介護だけでなく、社会保障や地域のあり方そのものに影響を与えています。 長寿は歓迎すべきことですが、その…
傷は、どこで最初に気づかれるのか―マクロファージ核が読み取る“形”の変化と即時血管応答 2026/02/20Posted in医療全般, 文献, 生物, 科学 「そこ、耳の後ろ、少し血が出てるよ」 そう言われて、はじめて触れてみる。 自分ではまったく気づいていなかったのに、指先にわずかな湿り気が残る。 痛みは、そのあとから追いついてくる。 異変は、自覚よりも先に、どこか…
睡眠時血圧と腎機能の新たな視点―夜の血圧が何を変えるのか 2026/01/27Posted in健康, 医療全般, 文献, 腎臓のこと 夜中にふと目が覚めたとき、耳のあたりで脈の拍動を感じることがあります。 体は横になっていますし、呼吸も落ち着いていますが、心臓の鼓動を意識してしまう時間です。 朝になれば忘れてしまって、起床後に測った血圧が問題なけれ…
骨の話だと思っていたものが、腸の話だった―ビタミンDと消化管疾患をめぐって 2026/01/10Posted in健康, 医療全般, 文献 外来で腹部症状を訴える患者を診ているとき、その鑑別にビタミンDの関連を入れることはまずありません。 骨粗鬆症や転倒予防が主な関心事で、腸の不調と直結させて考える習慣は、少なくとも日本の臨床現場では一般的ではないでしょ…
父親の体は、思っているより未来に近い―6週間の食事が示した、見えない変化 2026/01/09Posted in健康, 医療全般, 文献 「精子は、ただ遺伝子を運ぶだけの存在だ。」 私たちは長いあいだ、そう理解してきました。父親の体調や食生活が、子どもの将来に影響する―そんな話は、どこか眉に唾をつけて聞くものだったはずです。 しかし、もし「たった6…
「走りすぎると心臓に悪い」は本当なのか―10年後の検査で明らかになったこと 2026/01/08Posted inスポーツ, ランニング, 健康, 医療全般, 文献 私のような、いわゆる「レクリエーション・ランナー」にとっても、マラソンシーズンは心躍る季節です。 調子が良ければひと冬に三、四回はフルマラソンのスタートラインに立ちます。 しかし、その高揚感の裏で、常に小さな影を落と…
「3姉妹の家」の謎と、歪んだコイン―出生時の性別は、どこまで偶然なのか 2026/01/07Posted in医療全般, 文献, 科学 待合室を見渡していると、家族の並び方に目が止まることがあります。 元気な男の子を3人連れてぐったりしているお母さんもいれば、年の近い3姉妹が同時にしゃべって場を明るくしているお母さんもいる。 診療の合間に、そうした光…
走るほど健康、という神話の揺らぎ― 臨床医が考える「運動と大腸がん」の関係 2026/01/05Posted inランニング, 健康, 医療全般, 文献 健康のために良かれと思って続けている習慣が、身体に別の負荷を残しているかもしれない。 臨床の場にいると、そうした医学的な逆説に出会うことがあります。 外来で長距離ランナーと話していると、走ったあとの下血や腹部違和感を…
健康志向が裏目に出るとき―ビタミンB6の過剰摂取の落とし穴 2026/01/04Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 外来で「足の裏がジンジンする」「指先の感覚が鈍い」と訴えられる場面は、決して珍しくありません。 糖尿病、甲状腺疾患、頸椎症、腎機能障害、薬剤性――鑑別診断は多岐にわたります。 問診を進め、検査を重ねても、決め手に欠け…
それっぽく答えるという病 ― 医師とAIに共通する弱点 2026/01/03Posted inAI, 医療全般, 文献 診察室で「わかりません」と言わざるを得ない場面は、思った以上に気力を使います。 沈黙が続く。相手の視線が集まる。 そこで耐えられなくなって、もっともらしい言葉をつい口走ってしまう。 多くの医師が、一度や二度ではなく、…
自己診断の落とし穴―疾患の啓発の副作用 2025/12/20Posted in健康, 医療全般, 心理学, 文献 2020年のドキュメンタリー映画『Social Dilemma(日本語タイトル:監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影)』では、日常の何気ないクリックが、知らないうちに「自分はこういう人間だ」という確信へ形を変え…
AI書記は診察室の空気をどう変えるのか―画面に奪われた視線の、その先で 2025/12/09Posted inAI, 医療全般, 文献 診察室で患者が話し始めても、医師の視線は必ずしも相手の表情に向かっていないことがあります。 カルテへ入力する文字列が遅れないようにと、モニターに釘づけになってしまうことがあるからです。 距離は近いのに、視線だけが交わ…
尿酸の“裏の顔”―筋力との意外な関係 2025/12/05Posted in医療全般, 文献 尿酸といえば、健診で必ず注意される「悪者」の代表格です。 痛風の原因として恐れられ、プリン体と聞けばすぐに身構えてしまう人もいます。 数値がわずかに上がっただけで、食事や飲酒を振り返ってため息をついた経験は、多くの人…
治療方針は“数”に揺れる―選択肢の増減が医師をどう動かすのか 2025/11/25Posted in医療全般, 文献 実際の診療では、同じ症例でも医師によって治療の選び方が揺れるものです。 腰痛の患者さんにオピオイドを続ける医師もいれば、別の薬へ切り替える医師もいます。 股関節痛の患者さんをすぐに手術に紹介する診療所もあれば、薬物治…
心房細動とコーヒー :「やめる」より「いつもの一杯」を続ける選択 2025/11/24Posted in健康, 医療全般, 文献 心房細動の患者さんから、「先生、コーヒーはもう一生やめた方がいいですよね?」と訊かれることがあります。 動悸が出た日の朝にコーヒーを飲んでいたという記憶が重なると、「これが悪かった」と感じても不思議ではありません。 …