認知症のない年数という目盛り 2026/08/14Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 健診の結果をお渡しするとき、患者さんの目はたいてい一つの数字の上で止まります。 血圧が140を超えているかどうか、HbA1cが6.5%に届いているかどうか。 線を越えたか越えていないか、そこで話が決まるように見えます…
声と鉛筆と算数の30分 ― 12週間後の認知検査に残った小さな変化 2026/08/11Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 コンビニの雑誌コーナーには、脳を鍛えるとうたうドリルやパズル誌が並んでいます。 子どもの学習用ではなく、大人向けの「脳トレ」です。 2005年に発売された『脳を鍛える大人のDSトレーニング』はシリーズ化され、大人やシ…
コーヒーカップには、2つの時計がある 2026/08/03Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 「血圧を測る前は、コーヒーを飲まないでください」 私は日ごろ、患者さんにそう伝えています。 カフェインを摂った直後には、血圧が上がることがあるからです。 そうなると、その1杯を毎日重ねることで、何年か先に病気になる危…
抜け毛の記録を日付からたどる ― GLP-1受容体作動薬と最初の1年 2026/08/02Posted in健康, 医療全般, 文献 風呂の排水口にたまった髪を、指でつまんで捨てます。 前より多い気がすると、年齢、体質、季節の変わり目と、原因はいくつも浮かびます。 けれど、量ばかり見ていると、もう一つの手がかりが抜けます。 増え始めたのは、いつだっ…
夏に靴ひもを結ぶ理由 ― 暑熱順化4週間で見えたもの 2026/07/31Posted inスポーツ, ランニング, 健康, 医療全般, 文献 夏になると走る気が起きません。 7月の午後は、外に出る前から気力のほうが先に落ちています。 そういう時期に雑誌をめくっていて、夏のランには高地トレーニングに近い効果が期待できる、という趣旨の見出しに目が止まりました。…
インフルエンザの予防接種は午前中に受けたほうがいい? 2026/07/30Posted in健康, 医療全般, 文献 インフルエンザの予防接種は午前中に受けたほうがいい、という話をどこかで聞いたことがあります。 それを信じて、午前の接種にこだわる人もいます。 実際、朝に接種した人のほうが抗体の反応が大きかった例も報告されてきました。…
一枚の紙で変わる一杯 ― コーヒーとコレステロール 2026/07/29Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 朝、出勤前にコンビニでコーヒーを買うのが日課です。 店によって、ボタンを押すのは客だったり店員だったりします。 けれど、誰が押しても、私たちに見えるのは始まりと終わりだけです。 豆を挽く音がして、しばらくすると湯気の…
1日の摂取エネルギーはほぼ同じ ― 夜型で違った脂肪のつき方 2026/07/25Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 ダイエットの話は、たいてい量の話です。 何を、どれだけ食べたか。 菓子を1つ減らす、ごはんを軽くよそう、揚げ物を控える。 減らした分だけ体は軽くなるはずで、裏を返せば、1日の摂取エネルギーが同じくらいなら、体も似てく…
熱波と進行した腎臓病 ― 負担と病院までの時間にみる地域格差 2026/07/22Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと, 自然環境 沖縄の夏は、少し歩くだけで背中に汗がにじみ、喉が渇きます。 汗で体の水分が減ると、腎臓は尿として出す水分を減らし、体液の量と濃さを保とうとします。 腎臓の病気と聞くと、多くの人は血圧や血糖、年齢といった、その人自身の…
運動の置き土産は腸にもあった ― 動かさない筋肉を守った2つの代謝物 2026/07/18Posted in健康, 医療全般, 文献, 生物 朝のランニングを終えると、ふくらはぎは張り、息はまだ少し速く、シャツには汗が残ります。 運動の効果が生まれる場所として思い浮かぶのは、動いた筋肉や心臓、肺です。 反対に、ギプスで固定された脚の筋肉が減るのは、その脚を…
体重計の下の名簿 ― 食事を減らすとき、血液のなかで入れ替わるもの 2026/07/17Posted in健康, 医療全般, 文献 朝、体重計に現れる数字は、私たちにとって小さな判決のようなものです。 ゆうべ食べすぎたか、今週は少し抑えられたか。 数字が下がれば安堵し、上がれば小さく落胆します。 食事を減らした効果は、この数字に表れる。 それが体…
「つわり」を測る試み ― マーモセットとマウスに見えた足踏みの記録 2026/07/06Posted in医療全般, 文献, 生物 つわりは、外から見えにくい不調です。 吐き気、食欲の低下、においへの敏感さ、体重の変化。本人には切実でも、周囲にはその強さがわかりにくい。 そのため、ときに「個人差」や「気の持ちよう」という言葉の棚に置かれてきました…
週末の寝だめ ― 睡眠不足は足し算だけでは清算できない 2026/07/04Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 週末の朝、目覚ましを止めて、布団に戻る。 平日に削られた眠りを、今日こそ取り返す。 生活のリズムが多少崩れても、それはあとで考える。 いまは眠るほうが先です。 私たちは眠りを、口座の残高のように考えがちです。 平日に…
同じ住所でも、同じ環境ではない ― 体が出会う場所を測る 2026/06/26Posted in健康, 医療全般, 文献 健康と環境の関係を調べるとき、研究者は一人ひとりを、地図の上の一点として置きます。 多くの人にとって、それは夜に眠る家の住所です。 その点を中心に半径3kmほどの円を描き、円の中の空気の汚れや緑の量を平均して、それを…
百寿者の血液に残るもの ― 脳の老いは、こぼれ出るものにも表れる 2026/06/21Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 長く使った道具には、表面に汚れがこびりつきます。 脳の老化について語るときにも、似たような「汚れ」が問題になります。 アミロイドβです。 神経細胞のあいだに年月をかけて沈着するたんぱく質で、アルツハイマー病の代表的な…
耳鳴りと距離をとる練習 ― スマホアプリが試したこと 2026/06/19Posted inマインドフルネス, 医療全般, 文献 耳鳴りに悩む人は少なくありません。 キーン、ジーといった、実際には鳴っていないはずの音が耳の奥で鳴っている。 加齢や大きな音で耳の奥の細胞が傷むと、脳へ送られる信号が変わり、外に音がなくても本人にだけ聞こえる音が生ま…
鉄はあるのに、届かない ― ビタミンCと透析貧血のあいだ 2026/06/15Posted in健康, 医療全般, 文献, 透析関連 戸棚を開けると、奥まで食材で満ちています。 それなのに、今夜すぐ食卓に出せるものが、見当たらない。 買い置きはあるのに、手が止まる。 そんな夜が、たまにあります。 蓄えがあることそのものを、足りている証拠だと思ってい…
返事がないことと、届いていないこと 2026/06/12Posted in医療全般, 文献, 神経科学 「ご家族の声は聞こえているといいますから、名前を呼んであげてくださいね。」 病院で勤務していたころ、昏睡状態の患者さんのご家族に、私は何度もそうお伝えしました。 確かな根拠を示せたわけではありません。 それでも、…
低たんぱく食は腎臓を守るのか ― 尿から見えた、食事指導と実際の摂取量の差 2026/06/05Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 低たんぱく食が腎臓を守るのかどうか。 この問題に、専門家たちは30年以上、はっきりした答えを出せずにいました。 ある研究では効果あり、別の研究では差なし。 同じ病気を扱い、似た食事を指示しているのに、結論が研究ごとに…
AIは病気を当てた。そのあと、何が動いたのか ― 腎臓診療で見えた、予測と一手の距離 2026/06/04Posted inAI, 医療全般, 文献, 腎臓のこと, 透析関連 入院した人の腎臓が、働きを落とし始める。 その急変を、AIが半日から2日ほど前に知らせる。 検査値がまだ正常に見える段階で、カルテに並ぶ細かな数字の動きから、危険を見積もる仕組みです。 腎臓の領域では、こうした予測の…
グアバジュースと妊娠中の貧血 ― 鉄剤の働きを助けた赤い一杯 2026/05/30Posted in健康, 医療全般, 文献 以前、私の実家の庭にはバンシルーの木がありました。 時期になると、たくさんの実をつけたものです。 沖縄でバンシルーと呼ばれるこの実は、グアバと言った方がわかりやすいでしょう。 実をしぼれば、赤みがかったジュースになり…
痛みを伝える神経は、がんのそばで何をしていたのか 2026/05/29Posted in医療全般, 文献, 生物, 科学 机の角に足の小指をぶつけたとき、私たちは痛みを「危険を知らせる合図」として受け取ります。 熱い、鋭い、傷んでいる。 痛みを伝える感覚神経は、体の見張り役であり、多くの場合、こちら側の味方として働く安全装置です。 …
美術館に行くと、老化時計は遅れるって? ― 3556人の血液で見た、芸術・運動・歳のとり方 2026/05/22Posted in健康, 医療全般, 文献 人は古くから、老いを恐れるだけでなく、その進み方を知ろうとしてきました。 最古級の文学として語られる『ギルガメッシュ叙事詩』にも、永遠の命を求める王の姿があります。 私たちは不老不死の霊薬を探して旅に出るわけではあり…
AIは「わかりません」と言えるのか ― 立ち止まりの数秒という、知性のかたち 2026/05/21Posted inAI, 医療全般, 文献 AIに何かを尋ねると、答えが返ってきます。 それも、流暢に、自信ありげに。 便利な道具です。 けれど、医療や法律のような場面で、この「自信ありげな応答」がときに困ったことを起こします。 問題は、AIが間違うこと自体で…
腸内細菌と血圧は、どこでつながるのか ― インドール3酢酸でたどる、腸・脳・心臓の「途中」 2026/05/19Posted in健康, 医療全般, 文献 腸内細菌は、いまや健康情報の常連です。 かつては「お腹の調子」と結びつけて語られることが多かったこの話題は、免疫、代謝、気分、記憶へと広がってきました。 以前、コーヒー習慣と腸内細菌、気分と記憶のつながりを扱ったとき…