睡眠時血圧と腎機能の新たな視点―夜の血圧が何を変えるのか

睡眠時血圧と腎機能の新たな視点―夜の血圧が何を変えるのか

 

夜中にふと目が覚めたとき、耳のあたりで脈の拍動を感じることがあります。

体は横になっていますし、呼吸も落ち着いていますが、心臓の鼓動を意識してしまう時間です。

朝になれば忘れてしまって、起床後に測った血圧が問題なければ、そのまま一日が過ぎていきます。

 

慢性腎臓病では、高血圧が深く関わることが知られています。

当然ですが、診察室で測る値が基準内なら安心します。

その一方で、腎臓は一日中血流を受け止め、特に夜間、体が修復と調整に回る時間帯の影響を強く受けるものです。

これまで夜の血圧は、「昼より少し低ければよい」という大ざっぱな扱いでした。

 

その考え方が、ここ数年で見直され始めました。

夜間血圧の基準が見直され、寝ているあいだの収縮期血圧が110〜120mmHg、拡張期が65〜70mmHgに入る状態を「夜間ステージ1高血圧」と呼ぶようになりました。

昼なら「まず問題なし」と判断される、高すぎるわけでも、正常とも言い切れない、その中間です。

 

この「わずかな高め」が本当に意味を持つのか。

そこを確かめるために、透析をしていない慢性腎臓病の人たちを数年にわたって追った研究があります。

昼の血圧が正常な人も含め、夜の血圧の違いで、その後の腎臓の経過がどう変化するかを追いました。

昼の検査表には表れない情報が、夜に隠れていないかを探したのです。

 

観察の中で浮かび上がったのは、境界にいる人たちの変化でした。

夜の血圧が110〜120mmHgに収まっているだけの群で、腎臓の働きが低下する傾向が見られました。

毎晩ほんの数ミリ高い血圧が、薄紙を一枚ずつ重ねるように腎臓に影響していく。

気づいたときには、その厚みが明確な差をつけていました。

昼の血圧が良好でも、この傾向は変わりませんでした。

 

年齢によって状況は変わります。

高齢になると、夜の血圧が低すぎる人でも、腎臓の経過が思わしくない場合がありました。

夜中にトイレで立ち上がったときのふらつきや、朝のぼんやりした感じを思い出す人もいるかもしれません。

夜は下げれば下げるほど良い、という単純な話ではありません。

体を休ませるための夜が、血圧を下げすぎることで別の負担を生む側面がある。

その可能性が見えてきます。

 

この研究は介入試験ではなく、夜の血圧も夜中に一回測定しただけの値です。

治療や生活の変化をすべて反映しているわけではありません。

それでも、昼の血圧が正常であるという安心感の裏で、夜に110〜120mmHgの圧が続くこと自体が、腎臓にとって無視できない意味を持つ可能性を示しました。

 

朝、血圧計の数字を見てほっとする。

その習慣は変わらないでしょう。

ただ、夜のあいだ体にかかっている圧を一度思い浮かべると、同じ数字の見え方が少し変わります。

眠っている時間に起きていることが、今日の体調ではなく、数年後の体を形づくっている。

こうした見方があると、夜に起きていることの意味が少し違って見えてきます。

 

参考文献:

Zhang T, Zhou Z, Li Q, et al. Nocturnal Stage 1 Hypertension Defined by 2025 Guidelines in Adults With Chronic Kidney Disease. JAMA Netw Open. 2026;9(1):e2554035. Published 2026 Jan 2. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.54035

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。