白熊を押しのける手は、そのたびに白熊に触れている 2026/08/15Posted in心理学, 文献 寝ようとして明かりを消したあと、明日の予定が頭に浮かびます。 考えないでおこうと決め、いったん頭の隅へ押しやります。 数分して、また戻ってきます。 考えたくないことは、押しのければ視界の外に置ける。 押しのける動作そ…
認知症のない年数という目盛り 2026/08/14Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 健診の結果をお渡しするとき、患者さんの目はたいてい一つの数字の上で止まります。 血圧が140を超えているかどうか、HbA1cが6.5%に届いているかどうか。 線を越えたか越えていないか、そこで話が決まるように見えます…
アイスクリームの溶けにくさを決める、見えない骨格 2026/08/13Posted in文献, 日常, 科学 夏の午後、冷凍庫から出したばかりのカップアイスは、しばらく待たないとスプーンが入りません。 少し置いてから戻ると、今度は縁のほうが縁のかたちを失っていて、すくうとゆるくスプーンに乗ってきます。 硬いあいだと、崩れはじ…
スズメガの翅は、においを選り分けている 2026/08/12Posted in文献, 生物, 科学 においを確かめるときには、鼻を近づけます。 鼻だけが嗅ぐための器官だからです。 昆虫で鼻にあたるのは触角で、蛾は太い触角を前に向けて花を探します。 花に来たスズメガも触角を向けていますが、止まらずに翅を打ち続けてもい…
声と鉛筆と算数の30分 ― 12週間後の認知検査に残った小さな変化 2026/08/11Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 コンビニの雑誌コーナーには、脳を鍛えるとうたうドリルやパズル誌が並んでいます。 子どもの学習用ではなく、大人向けの「脳トレ」です。 2005年に発売された『脳を鍛える大人のDSトレーニング』はシリーズ化され、大人やシ…
ピーナツを分ける前に、まず抱きしめる ― 類人猿が争いをほどく方法 2026/08/10Posted in心理学, 文献, 生物, 科学 雄のチンパンジーが、別の雄を後ろから抱きしめます。 そこへ3頭目、4頭目と一頭ずつ加わり、やがてできたのは抱擁の列です。 研究者たちは、この連なりを “reassurance train”――「安心の列車」と呼びまし…
一致のあとに残った食い違い ― ミューオンg−2とパイオンの測定 2026/08/09Posted in文献, 科学 月末、家計簿の残高と通帳の残高が合えば、計算は終わったと思えます。 ところが、別の明細を使うと違う答えが出るなら、話は終わりません。 最後の数字から一つずつ戻り、どの記録を使ったのかを確かめる必要があります。 と…
同じ年数を、性格には数えていない 2026/08/08Posted in心理学, 文献, 日常 「三つ子の魂百まで」といいます。 60歳を過ぎて何十年ぶりかに同級生と会うと、最初は誰なのかわかりません。 ところが、共通の思い出をたどりながら話しているうちに、目の前の顔へ昔の面影が少しずつ重なってきます。 そして…
牛のげっぷは毛の根元から始まる 2026/08/07Posted in文献, 生物, 科学 牧草地で草をはむ牛の姿は、のどかな風景として思い浮かびます。 その牛のげっぷが地球の気温に関わっているという話も、どこかで耳にしたことがあるかもしれません。 牛の胃は4つの区画に分かれ、いちばん大きな第一胃(ルーメン…
一足に集まる走行距離 ― ランニングシューズと故障の関係 2026/08/06Posted inランニング, 健康, 文献 私はポッドキャストが好きで、車のオーディオにつないだり、ジョギングをしながら聴いたりしています。 毎週の更新を楽しみにしている番組の一つが、上田玲さんの「ランニングチャンネル」です。 毎回一つのテーマを決め、リスナー…
丸い石と背骨の穴 ― 一頭の魚竜に残った出来事の断片 2026/08/05Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 夏休みになると、各地で「恐竜展」が開かれます。 会場には恐竜だけでなく、同じ時代の海を泳いだ魚竜の化石が並ぶこともあります。 その骨格を見れば、海を泳いでいた姿や体の大きさを思い描けます。 見つかった地層から、いつご…
鳥は飛ぶのが楽しいか? 2026/08/04Posted in文献, 生物, 科学 午後、オランダの鳥類公園で、モモイロインコの禽舎の扉が開きます。 17羽は、外へ出ても、中に残ってもかまいません。 外では約20分、飛ぶことも、芝生にまかれた種子をついばむことも、木で休むこともできます。 中に残って…
コーヒーカップには、2つの時計がある 2026/08/03Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 「血圧を測る前は、コーヒーを飲まないでください」 私は日ごろ、患者さんにそう伝えています。 カフェインを摂った直後には、血圧が上がることがあるからです。 そうなると、その1杯を毎日重ねることで、何年か先に病気になる危…
抜け毛の記録を日付からたどる ― GLP-1受容体作動薬と最初の1年 2026/08/02Posted in健康, 医療全般, 文献 風呂の排水口にたまった髪を、指でつまんで捨てます。 前より多い気がすると、年齢、体質、季節の変わり目と、原因はいくつも浮かびます。 けれど、量ばかり見ていると、もう一つの手がかりが抜けます。 増え始めたのは、いつだっ…
丸い金魚鉢の外と内 ― 魚のいる場所から見た窓枠 2026/08/01Posted in文献, 日常, 科学 水を張った丸いガラスの器を、一歩離れて覗いてみます。 向こう側の窓枠や本棚の線が、ふちに近いほど太く曲がって見えます。 丸い壁がこれほど像を崩せば、その内側もまた、曲がった線に囲まれているように見えます。 けれど、そ…
夏に靴ひもを結ぶ理由 ― 暑熱順化4週間で見えたもの 2026/07/31Posted inスポーツ, ランニング, 健康, 医療全般, 文献 夏になると走る気が起きません。 7月の午後は、外に出る前から気力のほうが先に落ちています。 そういう時期に雑誌をめくっていて、夏のランには高地トレーニングに近い効果が期待できる、という趣旨の見出しに目が止まりました。…
インフルエンザの予防接種は午前中に受けたほうがいい? 2026/07/30Posted in健康, 医療全般, 文献 インフルエンザの予防接種は午前中に受けたほうがいい、という話をどこかで聞いたことがあります。 それを信じて、午前の接種にこだわる人もいます。 実際、朝に接種した人のほうが抗体の反応が大きかった例も報告されてきました。…
一枚の紙で変わる一杯 ― コーヒーとコレステロール 2026/07/29Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 朝、出勤前にコンビニでコーヒーを買うのが日課です。 店によって、ボタンを押すのは客だったり店員だったりします。 けれど、誰が押しても、私たちに見えるのは始まりと終わりだけです。 豆を挽く音がして、しばらくすると湯気の…
太陽は地球を飲み込むのか ― 鍵を握るのは軌道の移動 2026/07/28Posted in宇宙, 文献, 科学 紙に太陽と地球を描くなら、中央に太陽を置き、その周りに地球の軌道を円で描きます。 太陽が年老いて膨らむ未来を考えるときも、つい地球をその円の上に置いたまま、太陽だけを大きくしたくなります。 膨らんだ太陽の縁が地球まで…
声のした方ではなく、声の向いた方へ 2026/07/27Posted in文献, 生物 台所から「そこにあるよ」と声が聞こえたとします。 姿は見えなくても、声の主がどのあたりにいるのかは、だいたいわかります。 では、物のありかまで声だけで示せるのでしょうか。 普通なら、指さしや視線が必要に思えます。 け…
初期宇宙の絵は、何度でも描き直せる 2026/07/26Posted in宇宙, 文献 コペンハーゲンの研究所にいる天文学者は、考えがまとまらないと紙に絵を描くそうです。 小さな丸を塗ってブラックホールにし、中心を横切る線で円盤を、その外側の大きな丸でガス雲を表します。 観測と合わない部分があれば、また…
1日の摂取エネルギーはほぼ同じ ― 夜型で違った脂肪のつき方 2026/07/25Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 ダイエットの話は、たいてい量の話です。 何を、どれだけ食べたか。 菓子を1つ減らす、ごはんを軽くよそう、揚げ物を控える。 減らした分だけ体は軽くなるはずで、裏を返せば、1日の摂取エネルギーが同じくらいなら、体も似てく…
祈りのあとに、雨が来た ― 雨乞いと乾燥期間の確率 2026/07/24Posted in文献, 日常, 科学, 自然環境 今年、沖縄本島のダム貯水率は、4月末から5月初めにかけて50%を下回りました。 その後の雨で、7月半ばには平年並みまで回復しています。 雨を待つことは、沖縄では昔話だけではありません。 2024年3月31日、うる…
王女の墓の武器 ― 矢と右手の骨を重ねて見る 2026/07/23Posted in文献, 歴史 エジプトの王女、と聞くと、クレオパトラのような姿が浮かびます。 王宮の奥で香をたきしめ、召使いにかしずかれて暮らす人。 手を汚す仕事や身体を鍛えることとは縁遠く、その手は柔らかく保たれている。 そんなイメージです。 …
熱波と進行した腎臓病 ― 負担と病院までの時間にみる地域格差 2026/07/22Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと, 自然環境 沖縄の夏は、少し歩くだけで背中に汗がにじみ、喉が渇きます。 汗で体の水分が減ると、腎臓は尿として出す水分を減らし、体液の量と濃さを保とうとします。 腎臓の病気と聞くと、多くの人は血圧や血糖、年齢といった、その人自身の…