仲間を助ける一匹 ― アリの救助と、脳の遺伝子発現 2026/09/11Posted in文献, 生物, 科学 アリの世界をのぞき見るとき、私たちは個体よりも集団としての動きに目を奪われがちです。 分業しながら協力して暮らすアリには、動けなくなった仲間を助ける種類もいます。 砂漠アリの一種、カタグリフィス・ニグラもその一つです…
笑い声にも土地柄 ― チンパンジーの声と育ち 2026/09/10Posted in文献, 生物 電話の向こうの語尾や抑揚に、相手が暮らしてきた土地を感じることがあります。 同じ言葉を使っていても、育った土地によって音の上がり下がりや間の取り方に違いが出るものです。 でも、笑い声となると、土地の違いをあまり感じま…
もっと速く走りたいランナーへ ― 「自分に合う練習」を探す科学 2026/09/09Posted inスポーツ, ランニング, 文献 健康診断の結果に背中を押されて、歩き始める。 運動不足が気になって、近所をひと回りしてみる。 走るきっかけは、そんな身近なことだったかもしれません。 初めは少し走るだけで息が上がっていたのに、歩いたり走ったりを続ける…
サンゴの枝のあいだ ― 魚が払う家賃 2026/09/08Posted in文献, 生物, 科学, 自然環境 子どものころ、慶良間諸島でグラスボートに乗った記憶が、今も残っています。 船底のガラス越しに見えた海底は、青緑色の光に沈んでいました。 枝分かれしたサンゴの隙間を、小さな魚の群れが出たり入ったりしていました。 魚がサ…
救急車を待つ時間 ― 0分はゼロではない 2026/09/07Posted in医療全般, 文献, 日常 目の前で人が倒れたとします。 119番に電話をかけます。 通報を終えても、サイレンはすぐには聞こえません。 救急隊が到着するまでの時間は、永遠にも思える空白です。 日本の研究チームは、2010年から2023年まで…
ゴールのあと、答えは一つにならなかった ― 「ランナーズハイ」という一語 2026/09/06Posted inスポーツ, ランニング, 文献, 神経科学 ジョギングの走り始めは、たいてい体が重く、息も上がります。 それでもその時間をやり過ごして走り続けると、私の場合、5キロを過ぎるころから、それまで重かった足がふっと軽くなり、気分も晴れてきます。 私はこれを、勝手に「…
腎臓の病気を、腎臓の外から見る ― 腎周囲脂肪という場所 2026/09/05Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 「腎周囲脂肪」という名は、説明がそっけない。 腎臓の周りにある脂肪。 それしか教えてくれません。 働きではなく、住所を記した名前です。 今回の研究は、その住所そのものを実験の対象にしました。 糖尿病性腎臓病では、…
1度と6度 ― 目を動かす距離で、粗い像が前に出る 2026/09/04Posted in文献, 神経科学 沖縄では、きょろきょろ見回すことを「みーぐるぐるー」と言います。 探し物をしていなくても、視線は日常の中をあちらへこちらへと動いています。 本の文字を追うときも、部屋を見渡すときも、眼球は小さく素早いジャンプを繰り返…
加齢と細胞の顔ぶれ ― 1,828種類のうち499種類に年齢差 2026/09/03Posted in健康, 医療全般, 文献, 腎臓のこと だいぶ前の話ですが、鏡の前で眉毛に白いものを見つけ、少なからず動揺しました。 耳の周りの白髪は、その前から目立つようになっていました。 「いよいよ広がってきたか」 年を取っていく自分の体を、まざまざと見せつけられた気…
ふくらはぎの硬さでは分からないもの ― 押し出す力と、足の潰瘍 2026/09/02Posted in健康, 医療全般, 文献 足がむくんで心配だと言って外来にみえる方が、ときどきいらっしゃいます。 まず脛の前を指で押します。 跡がへこんだまま残るか、何秒で戻るか。 それから両手でふくらはぎを包んで、硬さと張りを確かめます。 長く診ていると、…
マインドフルネスで調子を崩すということ ― 「起きた」と「起こした」のあいだ 2026/09/01Posted inマインドフルネス, 健康, 医療全般, 文献 瞑想や坐禅で調子を崩すことは、新しい話ではありません。 私は長く瞑想に関心を持ち、白隠禅師が経験したという「禅病」についても、これまで詳しく調べてきました。 白隠は厳しい修行のさなかに心身の調子を崩し、白幽仙人から教…
運転中のスマートフォン、音楽でも注意 ― 新譜発売日は交通事故死が15%多かった 2026/08/31Posted in医療全般, 文献, 日常, 音楽 運転中に音楽をかけるのは、ごく普通のことです。 交通事故の危険といえば、雨や雪、夜道、飲酒運転などがまず浮かびます。 こうした危険は目につきやすく、運転者も十分に警戒します。 ところが、晴れた道で好きな音楽を選ぶとき…
スクショに残った画像 ― 記憶の行方 2026/08/30Posted in心理学, 文献, 日常 何か気になる情報や画像を見つけたとき、スマートフォンの両脇を押して手慣れた操作で画面をスクショします。 画像がカメラロールにおさまるのを確認して、安心します。 細部を覚えていなくても、必要なときに端末から取り出せるか…
1%の蚊、90%の右利き ― 一般化は割合だけでは決まらない 2026/08/29Posted in哲学, 文献, 日常 バス停で待つとき、次のバスが必ず止まる保証はありません。 満員かもしれませんし、回送かもしれません。 それでも私たちは、「バスは停留所で客を乗せるものだ」と考え、そこで待ちます。 例外があるたびに考え直していては、頭…
走りの平熱計 ― 徹夜の跡は「いつもの自分」との差に現れた 2026/08/28Posted inスポーツ, ランニング, 健康, 文献 マラソン大会の前夜は、なかなか寝つけないものです。 とくに前泊したときは、枕が合わなかったり、翌日のレースが気になったりして、時計を見るたびに焦り、ますます眠れなくなります。 寝不足の朝は、思い通りには走れないだろう…
40歳の近く、60歳を越えて ― 免疫細胞の発現差に現れた2つの山 2026/08/27Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常 年齢は、とにかく律儀です。 こちらが忘れていても、誕生日ごとにきっちり一つ増えます。 39歳から40歳も、59歳から60歳も、足すのはどちらも同じ1歳ずつです。 ところが、異なる年齢の人々から得た免疫細胞のRNAを比…
カードが現れたあとに残るもの ― ホアン・タマリッツを悼む 2026/08/26Posted inマジック, 勝手にマジシャン・シリーズ, 日常 2023年11月、私は「勝手にマジシャン・シリーズ」でホアン・タマリッツを紹介しました。 選んだ映像は「タマリッツ・シルク」。 観客が持つ白いシルクに、別の観客が選んだカードが現れる演目です。 当時の私は、彼のにぎや…
座るのをやめて、立った ― えっ、まだ動けって? 2026/08/25Posted in健康, 医療全般, 文献 座りすぎは健康に良くない――そんな話を何度も耳にしてきました。 何年か前、テレビを見ている時間を座っている時間の目安にして、長い人ほど健康を損ないやすいという論文を読んだ記憶もあります。 ならば、座っている時間をその…
ぶつかる瞬間を消して確かめた、ブラックホールの面積の増え方 2026/08/24Posted in宇宙, 文献, 科学 細い道を歩いていると、後ろから車の音が近づいてきます。 道の端に寄り、その車がそばを通り過ぎるのを待ちます。 いちばん気になるのは、車が横を通る短い一瞬です。 けれど耳に届く時間の大半は、その一瞬ではなく、近づいてく…
4.94対4.94 ― 痛みの点数と鎮痛薬のあいだ 2026/08/23Posted in医療全般, 文献, 日常 医療機関では、「今の痛みを0から10で表すと、いくつですか」と尋ねることがあります。 0は痛みなしです。 この数値評価尺度は、目に見えず本人にしか分からない痛みを、医療者と数字で共有するためのものです。 救急現場では…
「She’s a Woman」 ― 短く切れるギター、長く動くベース 2026/08/22Posted inビートルズ, 音楽 ギター教室の8月の課題曲は、The Beatlesの「She’s a Woman」にしてもらいました。 7月の「The Night Before」に続き、今月もビートの効いた曲を弾きたかったのです。 もちろん、ジョン…
長寿動物のゲノムで、隣よりわずかに変わりにくかった場所 2026/08/21Posted in医療全般, 文献, 生物, 科学 長い文章を何度も書き写せば、どこかに誤字が入ります。 けれど、意味を左右する語まで、ほかの箇所と同じように変わっていくとは限りません。 生物のゲノムにも、世代を重ねる間に変化が残りやすい場所と、残りにくい場所がありま…
冷房の風と、夏風邪の始まる場所 2026/08/20Posted in健康, 医療全般, 文献 外来で、喉がいがらっぽくて鼻水も出ていると言う高齢の患者さんが、「クーラーをつけて寝ているから、そのせいだと思う」と話していました。 「熱中症に気をつけろと子どもたちがうるさいから、仕方なくつけている。でも、だからク…
心の健康をめぐる専門家の判断 ― 19項目で合意し、向きは決まらなかった 2026/08/19Posted in健康, 心理学, 文献 親しい人と話したあと、気持ちが軽くなることがあります。 会話に救われたのか、もともと心に余裕があったから楽しく話せたのか。 その一度の出来事だけでは、どちらが先だったのか分かりません。 心の健康という言葉を扱う専門家…
ゴリラが5秒歩いても ― 追っていたシャツの色 2026/08/18Posted in心理学, 文献 人混みで待ち合わせの相手を探すとき。 あらかじめ聞いていた服の色を手がかりにします。 その色で人混みをふるいにかけ、知らない顔を見送って、やっと相手を見つけます。 後日、偶然その場にいた別の知人から、「あのとき合図し…