査読を越えたAI論文―人はどこに本物を見るのか 2026/04/05Posted inAI, 文献, 科学 人気のテレビ番組のように、銘柄を隠して飲み比べると、高級ワインを言い当てられないことがあります。 署名を伏せた絵や詩でも、私たちの審美眼は名前に引っぱられがちです。 だから科学の世界には、論文から著者名を外し、同じ分…
腎臓を守る薬が逆効果に見えるとき―検査の数字が悪く見えても、薬を続ける理由 2026/04/04Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 腎臓の中には、糸球体と呼ばれる微小なフィルターが、左右あわせておよそ200万個あります。 血液はここでこし取られ、老廃物や余分な水分が尿として外に出されます。 ところが、高血圧や糖尿病が長く続くと、このフィルターには…
平均の食卓から、こぼれ落ちる人がいる―肉の摂取量とAPOE ε4遺伝子型と認知症リスク 2026/04/03Posted in健康, 医療全般, 文献 食卓に肉が続くと、少し野菜も食べなきゃという気になります。 量の問題だけではありません。肉には、それだけで少し身構えさせる空気があります。 「赤肉は老化に悪い」という見出しを目にすると、その感覚にもっともらしい根拠を…
「正しいか」ではなく「他にあるか」 ―弦理論58年の膠着を動かした、問いの反転 2026/04/02Posted in文献, 科学 ジグソーパズルで、最後の1ピースだけが見つからないことがあります。 絵そのものは見えなくても、まわりの形を見れば、そこに入りそうなピースはかなり絞れます。 科学でも、ときどき同じことをします。 答えを直接つかめないな…
顔が顔になる時刻―げっ歯類の白い眼輪はなぜ昼に現れたのか 2026/04/01Posted in文献, 生物 目のまわりは、本来、目立たないほうがいい場所です。 少なくとも、夜行性の祖先をもつげっ歯類(ネズミやリスの仲間)ではそうでした。 黒い斑は、眼の位置を目立ちにくくし、眼に入る反射を減らすはたらきがあると考えられてきま…
できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路 2026/03/31Posted in文献, 日常, 神経科学 ギターを練習していて、何日も引っかかっていたフレーズが、ふいに弾ける瞬間があります。 指が勝手に動き出す。 昨日まで転んでいた自転車を、ある朝すっと乗りこなしている。 けれど、その「できた」は脆い。 どうやって弾いた…
補充する側が、先に壊れていた―ターコイズキリフィッシュの腎骨髄で見えた、前駆細胞のDNA損傷 2026/03/30Posted in医療全般, 文献, 生物 免疫細胞には寿命があります。 古くなった細胞は消え、新しい細胞が骨髄の前駆細胞(成熟した免疫細胞の"もと"になる細胞)から絶えず補充される。 この補充ラインが動いているかぎり、免疫の前線は保たれます。 では、年をとっ…
涙が届く場所―「女性の涙」は、男性の攻撃性にブレーキをかけていた 2026/03/29Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献, 生物 サンジや冴羽獠のように、女性の涙の前で男性の勢いが急にほどける場面は、アニメや映画で何度も繰り返されてきました。 私たちはそれを、やさしさや騎士道精神の表れとして理解してきました。 あるいは、攻撃を控えるための演技だ…
時刻という変数―2型糖尿病の体内時計が運動の効き方を書き換える 2026/03/28Posted in健康, 医療全般, 文献 運動不足を自覚したとき、一念発起して朝活を習慣化しようと試みます。 何度試みたことか知れません。 早朝、まだ薄暗い中を走る。冷たい空気を肺に満たし、体に活力を注ぎ込む。健康のために正しいことをしているという達成感はあ…
歴史の時間軸を揺さぶる脛骨— 7400万年前の地層が問い直す巨大ティラノサウルスの出自 2026/03/27Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 ティラノサウルス・レックスは、体重およそ10トン、白亜紀の最末期に北米大陸の生態系を支配した捕食者です。 北米で知られる同時代以前の近縁種の多くが2〜3トン級にとどまるなかで、この動物だけが桁違いの体格に到達しました…
飲み込まれた先の、数秒間―ナマズと水生甲虫8種の捕食実験が覆した「体格差の常識」 2026/03/26Posted in文献, 生物 ナマズは、口を開いた瞬間に水ごと獲物を吸い込みます。 噛み殺すのではありません。 生きたまま丸飲みにします。 魚、カエル、エビ、水中の昆虫。 歯を持たない代わりに、口腔そのものが陰圧で獲物を捕らえる装置として働いてい…
怒りの届け先が、関係の形を決めている―チンパンジーとボノボ22集団・189頭の攻撃行動をくらべた研究 2026/03/25Posted in文献, 生物 穏やかで誰にでも優しい友人が、特定の相手にだけ、ひどく冷たい言葉を放つ瞬間を見たときの、あの戸惑い。 普段の温厚な姿からは想像もつかないような険しい表情。 そういう時、私たちはどちらが本当の姿なのだろうと考えます。 …
くすぐられる前に、もう笑っている―3〜5歳144家族にみる、父親と母親の笑わせ方 2026/03/24Posted in心理学, 文献 子どもは、くすぐられる前から笑うことがあります。 指が近づいただけで、もう顔がゆるみます。 追いかけられる前ぶれだけで、声を立てて笑うこともあります。 面白い出来事が起きたから笑う、という説明だけでは足りません。 こ…
差し出された不安— 診察室で、なぜ話がすれ違うのか 2026/03/23Posted in医療全般, 心理学, 文献 体のことが気になると、人はまず調べます。 検索窓に症状を入れ、AIの答えを読み、動画で誰かの体験談を見る。 家族や友人から聞いた話も頭に残ります。 そうして集めた言葉を診察室に持っていくのは、知識を見せびらかしたいか…
時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究 2026/03/22Posted in心理学, 文献, 神経科学 二つの画像を見せられ、「この間にどれくらい時間が経っていたか」を問われます。 客観的な時間は、どちらの組み合わせも正確に32.5秒です。 それなのに、ある条件のときだけ、人はその間をより長く見積もります。 記憶の中の…
棲めない砂漠に残されたオウムの羽―パチャカマク遺跡が明かした、生きた鳥の山越え移送 2026/03/21Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 ペルーの太平洋岸は、地球上でも極端に乾いた土地のひとつです。 年間降水量はほぼゼロに近く、見渡すかぎり砂と岩の風景が続きます。 熱帯雨林に棲む大型のオウムが、生きて暮らせる環境ではありません。 その砂漠の聖地パチャカ…
約束された空白の時間―時計の針から見えてくる「孤独なランナー予想」と、10人まで進んだ未解決問題 2026/03/20Posted in数学, 文献 時計を思い浮かべてください。 秒針、分針、時針の3本の針は、12時ちょうどにぴたりと重なります。 そこから時間がたつと、3本はそれぞれ違う速さで回るので、少しずつばらけていきます。 では、どの針もほかの針から十分に離…
変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究 2026/03/19Posted in心理学, 文献, 日常 「人は変わらない。」 昔からよく聞く言葉です。 私自身もそう考えることがあります。 事態を動かしたいなら、相手を変えようとするより、自分が変わるほうが早い。 少し冷えた戦略にも見えますが、この考え方には別の面もありま…
同じ曲を聴いても、同じ場所には届かない―音楽を楽しむ力に、遺伝も関わっていた 2026/03/18Posted in心理学, 文献, 音楽 好きな曲を人に勧めたのに、思ったほど響かなかったことがあります。 こちらにとっては、ある時期の空気ごと抱えているような曲でも、相手には「いい曲だね」で終わることがあります。 逆に、どうしてこの曲でそこまで心が動くのだ…
眠りは、脳が発明したのではない―脳を持たないヒドラが残していた、睡眠の原型 2026/03/17Posted in文献, 生物, 科学 夜、眠くなる。 朝、目が覚める。 この繰り返しがあまりにも当たり前なので、私たちは眠りを「脳の仕事」だと思い込んでいます。 疲れた脳が休息を求め、複雑な神経回路が切り替わる。 そう考えるのは自然なことです。 けれど、…
休んでいる脳は、休んでいない―思考の疲れと安静時活動を見直した神経代謝研究 2026/03/16Posted in文献, 神経科学 パソコンの電源を落とし、家に帰る。 玄関を開けるなりソファに座り込み、しばらく何もする気が起きない。 今日一日、複雑な問題を処理し続けて、頭の芯がもう動かないように感じる。 だから今は、何も考えず、ただ流れるテレビの…
風邪に、亜鉛はどこまで効くのか―急性ウイルス性呼吸器感染症の予防と治療をめぐる検討 2026/03/15Posted in健康, 医療全般, 文献 幼いころ、夏風邪で高い熱を出して寝込んだことがあります。 そんなとき、オバアがカチューユをつくってくれました。 どんぶりに削り節と味噌を入れ、湯を注ぐだけの、ごく簡素な汁物です。 沖縄では、風邪のときの家庭の手当てと…
その靴は、誰を基準に作られているのか―女性ランナー21人が語った「合わない靴」の理由 2026/03/14Posted inスポーツ, ランニング, 文献 ひもの結び方を変えても、同じ場所が痛くなる。 かかとを固定しようとすると、つま先が圧迫される。 ゆとりを持たせるとかかとが浮く。 何足替えても、同じことが起こります。 なぜ自分の足には、ちょうどよく合う靴がないの…
地球の磁場が見えていた―鳥は量子コンパスを持っている 2026/03/13Posted in文献, 生物, 科学 ヨーロッパコマドリは、秋になると数千キロメートルを南へ飛びます。 地図も標識もありません。 ただ、まっすぐ目的地へ向かいます。 人間が同じことをやろうとすれば、GPSと気象データと詳細な地図が必要になります。 鳥には…
「遺伝」という言葉の正体―CRIC研究が見つめた、家族と腎臓病の進行 2026/03/12Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 家族に同じ病気の人が多いとき、多くの人はこう考えます。 「これは遺伝だろう」と。 そして不思議なことに、「遺伝」と説明されると、それ以上深く考えなくても、どこか納得してしまうものです。 仕組みを詳しく知らなくても、原…