腸内細菌と血圧は、どこでつながるのか ― インドール3酢酸でたどる、腸・脳・心臓の「途中」

腸内細菌と血圧は、どこでつながるのか ― インドール3酢酸でたどる、腸・脳・心臓の「途中」

  腸内細菌は、いまや健康情報の常連です。 かつては「お腹の調子」と結びつけて語られることが多かったこの話題は、免疫、代謝、気分、記憶へと広がってきました。 以前、コーヒー習慣と腸内細菌、気分と記憶のつながりを扱ったとき…
超音波で、ウイルスは壊せるのか ― 強い衝撃ではなく、包膜に合う周波数を探した研究

超音波で、ウイルスは壊せるのか ― 強い衝撃ではなく、包膜に合う周波数を探した研究

  目に見えないウイルスに対処しようとするとき、私たちは薬や消毒、強い紫外線、熱を思い浮かべます。 物理的に「壊す」としたら、超音波洗浄機のような強い衝撃が必要でしょう。 低い周波数の超音波が水中に気泡を生み、その気泡が…
卵は、控えたほうが安心なのか ― 39,498人を15年追って見えた、食卓とアルツハイマー病の関係

卵は、控えたほうが安心なのか ― 39,498人を15年追って見えた、食卓とアルツハイマー病の関係

  外来で栄養の話になると、「卵はどのくらい食べてもいいのでしょうか」と聞かれることがあります。 すぐに答えられそうで、案外そうでもありません。 卵は長いあいだ、食卓の人気者であり、少し疑われてきた食材でもあります。 コ…
脳の下り坂に、細い道があった ― 成人3,966人を3年追って見えた、脳健康指数と生活の手がかり

脳の下り坂に、細い道があった ― 成人3,966人を3年追って見えた、脳健康指数と生活の手がかり

  鍵を探すのに時間がかかったり、数日前の出来事がすぐに出てこなかったりする。 そんな小さな記憶の淀みを、私たちはたいてい「年のせい」として受け入れます。 足腰が弱れば歩く距離を少し増やせる。 肌が乾けば保湿もできます。…
炭酸水を、ただ一本だけ置いた ― 健康成人45人の12週間試験で見えた、間食と飲酒の小さな分岐点

炭酸水を、ただ一本だけ置いた ― 健康成人45人の12週間試験で見えた、間食と飲酒の小さな分岐点

  「カロリーゼロ理論」というネタがウケるのは、もちろん理屈が正しいからではありません。 むしろ、あまりに正しくないから笑ってしまうのです。 けれど同時に、そこには少しだけ身に覚えがあります。 夕食後のひと口を「これは別…
息が上がれば、同じ運動なのか ― 水泳とランニングで違った、心臓への手ごたえ

息が上がれば、同じ運動なのか ― 水泳とランニングで違った、心臓への手ごたえ

  以前にジムに通っていた頃のことです。 私はトレーニング器具のある上階には向かわず、いつもプールへ直行していました。 決して泳ぎが達者な方ではありません。 それでも、水に浸かっている時間そのものが気持ちよかったのです。…
息が続くことは、体だけの話なのか ― 400万7638人の追跡で見えた、心肺持久力と心と記憶

息が続くことは、体だけの話なのか ― 400万7638人の追跡で見えた、心肺持久力と心と記憶

  健康診断の検査項目で、「体力」は測定されません。 まして、認知機能や心の病といった分野とも、あまり結びつけて見られていません。 階段で息が切れた話と、最近気分が沈むという話と、同じことを何度も聞き返すようになった話は…
病原体に出会う前、T細胞は何を準備していたのか ― 食後の脂質代謝で、免疫の初動が変わっていた

病原体に出会う前、T細胞は何を準備していたのか ― 食後の脂質代謝で、免疫の初動が変わっていた

  幼いころ、風邪をひくと、おばあがカチューユを作ってくれました。 お椀にたっぷりのかつお節と味噌を入れ、お湯を注ぐだけの汁物です。 医学的に万能薬という話ではありません。 それでも、体調を崩したとき、食べ物が体を支えて…
同じ挽き目なのに、なぜ流れが変わるのか ― エスプレッソの粉の中にある、通れる穴と通れない穴

同じ挽き目なのに、なぜ流れが変わるのか ― エスプレッソの粉の中にある、通れる穴と通れない穴

  コーヒーの味にこだわるほど、豆の産地や焙煎の深さが気になります。 エスプレッソでは、細かく挽いて、タンピングと呼ばれる作業で押し固めた粉に、高い圧力でお湯を通します。 お湯が粉の層を抜ける速さが変われば、成分が溶け出…
腹に力が入ると、脳が動く ― 覚醒マウスで見えた、腹圧・脳運動・脳内液体流のつながり

腹に力が入ると、脳が動く ― 覚醒マウスで見えた、腹圧・脳運動・脳内液体流のつながり

  運動が脳によい、という話はすっかり常識になりました。 散歩を続ける人は、年を重ねても頭の働きが保たれやすい。 体を動かすことは、認知機能を保つ助けになるらしい。 そう聞くと、血流がよくなる、酸素が届く、筋肉からよい物…
ランニングシューズで足の故障は防げるのか――成人ランナー1万1240人と12試験で見た、靴選びと下肢傷害

ランニングシューズで足の故障は防げるのか――成人ランナー1万1240人と12試験で見た、靴選びと下肢傷害

  ランナーは靴売り場で、少しだけ未来を買っています。 厚いクッション、軽い素材、足の倒れ込みを抑える構造、足型を見て選んでもらう一足。 どれも「これなら痛めにくい」と思わせます。 値札を見ると、先に財布のほうが痛みそう…
足し算ではなかった、脳 ― 哺乳類182種とAIモデルで見えた、二つの情報整理と進化の配分

足し算ではなかった、脳 ― 哺乳類182種とAIモデルで見えた、二つの情報整理と進化の配分

  脳の重さがほぼ同じなら、中のつくりも似ているはずだと考えたくなります。 ところが、夜に活動する小型のサル、フクロウザル(別名ヨザル)は脳の重さが約15グラム。 見た目はリスに似ていますが、尾が短く、ほとんど目立たない…
朝の一杯を待っていたのは、脳だけではなかった―健康成人62人で見た、コーヒー習慣・腸内細菌・気分と記憶のつながり

朝の一杯を待っていたのは、脳だけではなかった―健康成人62人で見た、コーヒー習慣・腸内細菌・気分と記憶のつながり

  朝の出勤途中、私はよくコンビニに寄って、ホットのカフェラテを注文します。 カップを受け取り、一口飲んで、ホッと息をつく。 そこから脳がようやく仕事用のモードに入っていく感じがあります。 これが、コーヒー好きという言葉…
雨音の届く深さで、種は目を覚ます — イネ種子の発芽を早めた雨滴音と重力感知細胞

雨音の届く深さで、種は目を覚ます — イネ種子の発芽を早めた雨滴音と重力感知細胞

   海の音山の音みな春しぐれ 中川宋淵   雨が降ると、世界の音の構造が変わります。 普段は別々に聞こえていた音が、雨音という一つの層の中で重なり、海鳴りも山の響きも、春の時雨の一部として耳に届きます。 人間はその音を…
誰かと食べた回数に、幸福感の差が表れる ― 142カ国15万人と米国20年の調査で見た、共食と幸福感

誰かと食べた回数に、幸福感の差が表れる ― 142カ国15万人と米国20年の調査で見た、共食と幸福感

  昼食を一人で済ませる日があります。 スマホを見ながら弁当のふたを開け、食べたことは覚えていても、どんな時間だったかはあまり覚えていない。 別の日には、誰かと同じ机につき、同じ弁当を前にして、短い会話を交わす。 食事は…
落ち込むから飲むのか、飲むから落ち込むのか ― 一般成人816人を12か月追った、心の状態と飲酒量の時間順序

落ち込むから飲むのか、飲むから落ち込むのか ― 一般成人816人を12か月追った、心の状態と飲酒量の時間順序

  何度目かのアラームの音で、「彼」はようやく目を開けました。 頭が重い。胃がむかむかしている。 みぞおちあたりに、昨日の酒がまだ残っている感じがします。 カーテンの隙間から入る朝の光が、目に刺さるほどまぶしい。 昨夜は…
時間より速く、空間より狭く ― 石垣島のオオヒキガエルに観察された100年未満の形態分岐

時間より速く、空間より狭く ― 石垣島のオオヒキガエルに観察された100年未満の形態分岐

  進化は、長い時間と広い空間があって初めて大きく動く。 そう考えると、小さな島の路肩にいる一匹のカエルは、進化の主役には見えません。 ところが石垣島のオオヒキガエルは、その見方を崩します。 わずか十数匹から始まった集団…
学会発表でウケ狙いはアリか―会場で冗談と笑いを本気で数えた人たちがいた

学会発表でウケ狙いはアリか―会場で冗談と笑いを本気で数えた人たちがいた

  学会の午後2時すぎ。 ランチョンセミナーでしっかり食べたあとの、最初のセッション。 人類が最も眠くなる時間帯です。 スライドは6枚目、グラフは縦軸も横軸も正しく、色分けも完璧で、そして誰も聞いていません。 聴衆の目は…