査読を越えたAI論文―人はどこに本物を見るのか

査読を越えたAI論文―人はどこに本物を見るのか

  人気のテレビ番組のように、銘柄を隠して飲み比べると、高級ワインを言い当てられないことがあります。 署名を伏せた絵や詩でも、私たちの審美眼は名前に引っぱられがちです。 だから科学の世界には、論文から著者名を外し、同じ分…
腎臓を守る薬が逆効果に見えるとき―検査の数字が悪く見えても、薬を続ける理由

腎臓を守る薬が逆効果に見えるとき―検査の数字が悪く見えても、薬を続ける理由

  腎臓の中には、糸球体と呼ばれる微小なフィルターが、左右あわせておよそ200万個あります。 血液はここでこし取られ、老廃物や余分な水分が尿として外に出されます。 ところが、高血圧や糖尿病が長く続くと、このフィルターには…
平均の食卓から、こぼれ落ちる人がいる―肉の摂取量とAPOE ε4遺伝子型と認知症リスク

平均の食卓から、こぼれ落ちる人がいる―肉の摂取量とAPOE ε4遺伝子型と認知症リスク

  食卓に肉が続くと、少し野菜も食べなきゃという気になります。 量の問題だけではありません。肉には、それだけで少し身構えさせる空気があります。 「赤肉は老化に悪い」という見出しを目にすると、その感覚にもっともらしい根拠を…
できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路

できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路

  ギターを練習していて、何日も引っかかっていたフレーズが、ふいに弾ける瞬間があります。 指が勝手に動き出す。 昨日まで転んでいた自転車を、ある朝すっと乗りこなしている。 けれど、その「できた」は脆い。 どうやって弾いた…
補充する側が、先に壊れていた―ターコイズキリフィッシュの腎骨髄で見えた、前駆細胞のDNA損傷

補充する側が、先に壊れていた―ターコイズキリフィッシュの腎骨髄で見えた、前駆細胞のDNA損傷

  免疫細胞には寿命があります。 古くなった細胞は消え、新しい細胞が骨髄の前駆細胞(成熟した免疫細胞の"もと"になる細胞)から絶えず補充される。 この補充ラインが動いているかぎり、免疫の前線は保たれます。 では、年をとっ…
涙が届く場所―「女性の涙」は、男性の攻撃性にブレーキをかけていた

涙が届く場所―「女性の涙」は、男性の攻撃性にブレーキをかけていた

  サンジや冴羽獠のように、女性の涙の前で男性の勢いが急にほどける場面は、アニメや映画で何度も繰り返されてきました。 私たちはそれを、やさしさや騎士道精神の表れとして理解してきました。 あるいは、攻撃を控えるための演技だ…
歴史の時間軸を揺さぶる脛骨— 7400万年前の地層が問い直す巨大ティラノサウルスの出自

歴史の時間軸を揺さぶる脛骨— 7400万年前の地層が問い直す巨大ティラノサウルスの出自

  ティラノサウルス・レックスは、体重およそ10トン、白亜紀の最末期に北米大陸の生態系を支配した捕食者です。 北米で知られる同時代以前の近縁種の多くが2〜3トン級にとどまるなかで、この動物だけが桁違いの体格に到達しました…
怒りの届け先が、関係の形を決めている―チンパンジーとボノボ22集団・189頭の攻撃行動をくらべた研究

怒りの届け先が、関係の形を決めている―チンパンジーとボノボ22集団・189頭の攻撃行動をくらべた研究

  穏やかで誰にでも優しい友人が、特定の相手にだけ、ひどく冷たい言葉を放つ瞬間を見たときの、あの戸惑い。 普段の温厚な姿からは想像もつかないような険しい表情。 そういう時、私たちはどちらが本当の姿なのだろうと考えます。 …
時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究

時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究

  二つの画像を見せられ、「この間にどれくらい時間が経っていたか」を問われます。 客観的な時間は、どちらの組み合わせも正確に32.5秒です。 それなのに、ある条件のときだけ、人はその間をより長く見積もります。 記憶の中の…
棲めない砂漠に残されたオウムの羽―パチャカマク遺跡が明かした、生きた鳥の山越え移送

棲めない砂漠に残されたオウムの羽―パチャカマク遺跡が明かした、生きた鳥の山越え移送

  ペルーの太平洋岸は、地球上でも極端に乾いた土地のひとつです。 年間降水量はほぼゼロに近く、見渡すかぎり砂と岩の風景が続きます。 熱帯雨林に棲む大型のオウムが、生きて暮らせる環境ではありません。 その砂漠の聖地パチャカ…
約束された空白の時間―時計の針から見えてくる「孤独なランナー予想」と、10人まで進んだ未解決問題

約束された空白の時間―時計の針から見えてくる「孤独なランナー予想」と、10人まで進んだ未解決問題

  時計を思い浮かべてください。 秒針、分針、時針の3本の針は、12時ちょうどにぴたりと重なります。 そこから時間がたつと、3本はそれぞれ違う速さで回るので、少しずつばらけていきます。 では、どの針もほかの針から十分に離…
変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究

変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究

  「人は変わらない。」 昔からよく聞く言葉です。 私自身もそう考えることがあります。 事態を動かしたいなら、相手を変えようとするより、自分が変わるほうが早い。 少し冷えた戦略にも見えますが、この考え方には別の面もありま…
風邪に、亜鉛はどこまで効くのか―急性ウイルス性呼吸器感染症の予防と治療をめぐる検討

風邪に、亜鉛はどこまで効くのか―急性ウイルス性呼吸器感染症の予防と治療をめぐる検討

  幼いころ、夏風邪で高い熱を出して寝込んだことがあります。 そんなとき、オバアがカチューユをつくってくれました。 どんぶりに削り節と味噌を入れ、湯を注ぐだけの、ごく簡素な汁物です。 沖縄では、風邪のときの家庭の手当てと…
その靴は、誰を基準に作られているのか―女性ランナー21人が語った「合わない靴」の理由

その靴は、誰を基準に作られているのか―女性ランナー21人が語った「合わない靴」の理由

  ひもの結び方を変えても、同じ場所が痛くなる。 かかとを固定しようとすると、つま先が圧迫される。 ゆとりを持たせるとかかとが浮く。   何足替えても、同じことが起こります。 なぜ自分の足には、ちょうどよく合う靴がないの…