最近はスマホアプリの雨雲レーダーで雨の様子が視覚化されるようになりました。
雲の形、天気図、気圧の動き。
けれども、そこに映っているのは、その時の雨の姿だけです。
雨粒が落ちるまでの過程には、その前に「水が空へ戻る工程」があります。
海面や地表から水が水蒸気として上がり、風に運ばれ、雲になり、別の場所で雨になります。
この往復が、ふだんは見えないところで回っています。
アマゾンでは数十年にわたり森林が減ってきました。
森が減れば生き物が減る、気温が上がる、そうした話はよく聞きます。
でも、雨の量そのものが長い時間でどう変わるのか、そしてそれが森の減り方とどれほど結びつくのかは、直感だけではつかみにくい疑問でした。
今回の研究は、1980年から2019年までのデータを使い、南部アマゾンで雨が減ってきたことを確かめ、その理由を「雨の水はどこから来たのか」という形でほどいていきます。
研究者たちがやったことは、乱暴に言えば二つです。
まず、40年ほどの間に雨が増えた地域と減った地域を、観測データで地図にします。
次に、その雨に入っている水が「海から来た水」なのか「陸から戻ってきた水」なのかを追いかけます。
陸から戻る水というのは、森や草地、地面から空に戻った水分が、どこかで雲になって雨として降るものです。
さらに、雨を生む水分がどのあたりから運ばれてきたかを見て、風上側の森の減り方まで含めて調べます。
南部アマゾンでは、年降水量が40年で合計8〜11%ほど減っていました。
年ごとの上下はありますが、長い目で見ると、じわじわ下がっています。
さらに大事なのは、減っていた雨の「中身」でした。
主に減っていたのは、森や地表から空に戻り、もう一度雨になるはずだった「陸から来る水」が関わる雨でした。
南部平均では、雨が減った分のうち76〜92%がこの成分の減少で説明できました。
雨そのものが消えたというより、雨を支えていた循環が弱くなった、と考えるほうが近いです。
では、その循環はなぜ弱くなったのか。
そこで森の減り方が効いてきます。
雨に影響する場所(風上側も含む)の森林が減るほど、陸から来る雨が減る関係が見えていました。
研究は、南部で観測された雨の減少のうち52〜72%が森林減少と結びつくと見積もっています。
空の側でも変化がありました。
上昇気流が育ちにくさを示す指標(CAPE)が平均で21%下がり、水蒸気は雨になる前に少し遠くへ流されやすくなり、その地域に戻ってくる割合も下がっていました。
森と空が協力して回していた水の循環が、以前ほど回らなくなった、という姿です。
ここで視点を一段引きます。
もし森林と雨の結びつきがこれほど強いなら、将来の気候を考えるときに使われてきた予測は、この関係をどう扱ってきたのでしょうか。
この研究は、森林減少が雨に及ぼす影響を、多くの気候モデルが小さめに見積もってきた可能性を示しています。
大規模な森林減少による降水への影響が、観測にもとづく推定よりも、最大で約50%ほど弱く描かれてきた、という見立てです。
これは予測が役に立たない、という話ではありません。
ただ、私たちが頼ってきた将来像が、現実よりも穏やかな前提の上に描かれていた可能性は残ります。
森と雨の結びつきが思っていた以上に強いなら、変化はゆっくりではなく、意外なほど早く表に出るかもしれません。
もちろん限界はあります。
森林データには細かさの制約があり、小さな伐採は拾いきれない場合もあります。
この関係が今後も同じ形で続く保証もありません。
それでも、雨を「空だけで決まるもの」と考えてきた見方は、ここで修正を迫られます。
その土地の雨量の変化は、その場だけではなく、何百キロも風上で進んだ森林の変化とつながっています。
そう考えると、天気は地面と空気がやり取りした結果として理解できるようになります。
参考文献:
Cui, J., Piao, S., Huntingford, C. et al. Historical deforestation drives strong rainfall decline across the southern Amazon basin. Nat Commun (2026). https://doi.org/10.1038/s41467-026-68361-z

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
