余裕がないと、人はやさしくなる?―環境の「豊かさ」が変える、私たちの判断 2026/02/18Posted in心理学, 文献 私たちは、心の余裕と懐の余裕は比例すると、どこかで信じています。 お金や時間にゆとりがあれば、人は穏やかで寛大になる。 逆に、追い詰められれば、他人どころではなくなる。 理屈でなく、それが人間なのだと思っています。 …
孫の世話は、高齢者の脳の健康につながる―祖父母の育児参加と認知機能を調べた心理学研究 2026/02/17Posted in健康, 心理学, 文献 「孫はかわいいけれど、1日ずっと一緒に過ごすのは疲れる」と、母はよく言っていました。 体力的な理由だけではなく、気持ちのほうが先に疲れるのだそうです。 質問に答え、様子をうかがい、先回りして動く。 その積み重ねが、あ…
失敗の処方箋―情動調節と目標への再コミットメントを巡る分析 2026/02/16Posted in心理学, 文献 若いころ、成功哲学や自己啓発書を手当たり次第に読んでいた時期がありました。 誰の言葉だったかは思い出せませんが、「諦める一歩先に必ず宝がある」という一文は、今も胸に残っています。 その言葉と重なるように思い浮かぶ…
体が先に反応した日―サッカー決勝戦と、からだに現れた高ぶりの記録 2026/02/15Posted inスポーツ, 心理学, 文献 スタジアムの歓声、張り詰めた空気、そして勝敗が決した瞬間の爆発的な感情。 スポーツ観戦が私たちの心を揺さぶるのは自明のことです。 そのとき私たちの「体」の内部では一体何が起きているのでしょうか。 ドイツの研究チームが…
声にならない音が、身体を先に落ち着かせる―ハミングと自律神経に起きていた反応 2026/02/14Posted in心理学, 文献, 神経科学 気がつくと、妻はよく鼻歌を口ずさんでいます。 歌と呼ぶほど整った旋律ではなく、正体のわからないメロディに、「んー」という発声が重なっているだけのものです。 「機嫌がいいんだね」と声をかけると、妻はきょとんとした顔で「…
患者になりたがる私たち— SNS利用を「依存」と呼ぶことは、本当に救いなのか 2026/02/01Posted in心理学, 文献, 日常 夜、ベッドに腰を下ろした瞬間、特に理由もなくスマホを手に取ってしまう。 画面を閉じたあと、胸の奥に薄い重さが残る。 「またやってしまった」 この一言を、私たちはずいぶん手際よく強い言葉に置き換えてきました。 自分はS…
「やる気が出ない」「重たい腰」の正体 — 価値はわかっていても動き出せない 2026/01/30Posted in心理学, 文献, 神経科学 やるべきことは分かっている。 終われば報酬があり、意味も理解している。 それでも、どうしても始められない。 「やる気が出ない」「腰が重い」。 私たちはこの感覚を、意志の弱さや気分の問題として処理しがちです。 しかし研…
集中したいときはゲーム音楽がよい?―BGMが意識を動かす仕組み 2026/01/25Posted in心理学, 文献, 音楽 音楽を聴いているとき、私たちは本当に「音」だけを聴いているのでしょうか。 通勤の車内で流れていた曲が、いつの間にか昔の帰り道を呼び戻していたり、作業用にかけたはずのBGMが、気づけば仕事とは無関係な空想に火をつけてい…
死はいつも、こちら側に残される―日本版デス・リテラシー指標で見えてきた、動けない空白 2026/01/20Posted in心理学, 文献, 日常 フランスの思想家モーリス・ブランショは、「死はいつも他人の死である」という言葉を残しました。 私たちは、自分の死を自分で「見る」ことはできません。 死は、いつも誰かの出来事として、生きている私たちの前に現れます。 病…
「優しい嘘」に溺れる私たち―AI画像が映し出す、感情と現実のずれ 2026/01/16Posted inAI, 心理学, 文献 指先一つで世界中の出来事に触れられる時代、私たちは画面の中に「見たいと願う物語」を探し続けています。 Facebookのフィードを流れてくる、仲睦まじい老夫婦の銀婚式や、手作りの作品を誇らしげに掲げる子供の姿。 それ…
呼吸がうまくいかないとき、体の中で起きていること―1週間の実験が見せた、緊張と分子の距離 2026/01/11Posted inマインドフルネス, 心理学, 文献 緊張する場面に出くわしたとき、「落ち着こう」と思って深呼吸を試みることがあります。 ところが、意図とは裏腹に息が速くなり、うまく吸えない。 そんな経験は珍しくありません。 何度か呼吸を繰り返し、ふっと深く吸える瞬間が…
会話が途切れた一瞬で、指は画面へ伸びる―不安な心は、なぜ目の前の人よりスマホを選ぶのか 2025/12/29Posted in心理学, 文献, 日常 会話が途切れた、その一瞬です。 気まずさが生まれる前に、指は自然とスマートフォンへ伸びます。 隣に誰かが座っていても、この動きは止まりません。 気づけば、沈黙を埋める相手は人ではなく、画面になっています。 この反射の…
女性はどうやって嘘を見抜くのか―恋愛で騙されないための行動戦略 2025/12/25Posted in心理学, 文献 コメディ映画『ラブ・アゲイン』のクライマックスでは、ある家族の庭先で、積み上げられてきた関係が一気に崩壊します。 娘が「運命の人」だと信じて連れてきた恋人は、実は父親に恋愛の手ほどきをしていた人物でした。 家族という…
自己診断の落とし穴―疾患の啓発の副作用 2025/12/20Posted in健康, 医療全般, 心理学, 文献 2020年のドキュメンタリー映画『Social Dilemma(日本語タイトル:監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影)』では、日常の何気ないクリックが、知らないうちに「自分はこういう人間だ」という確信へ形を変え…
書くことは脳を編み直す―言葉がレジリエンスを育てる理由 2025/12/15Posted in心理学, 文献, 日常 映画『潜水服は蝶の夢を見る』(2007年)。 脳卒中によって身体の自由をほとんど失った編集長ジャン=ドミニク・ボビーは、左目のまばたきだけを使って自伝を書き上げます。 動かない身体は潜水服のように彼を閉じ込め、まばた…
報酬と感情のズレを聴き分ける脳―人間関係の「見えない計算式」 2025/12/12Posted in心理学, 文献, 神経科学 映画『ソーシャル・ネットワーク』(2010年)には、裏切りの瞬間が“数字”と“感情”の二重露光のように重なる場面があります。 共同創業者エドゥアルドが、書類に記された自分の持ち株―30%超だった数字が、0.03%へと…
ピックルボールのコートで起きていること―“遊ぶ量”が心をどう動かすのか 2025/12/08Posted inスポーツ, 健康, 心理学, 文献 「ピックルボール」というスポーツがあるらしいです。 この論文を読むまで、私は聞いたこともありませんでした。 調べてみると、アメリカでは高齢者を中心に人気が広がり、朝の公園でも人が自然に集まるといいます。 激しい動きは…
緑が支える心のバランス―室内の小さな自然がつくるストレスの緩衝帯 2025/11/30Posted in心理学, 文献, 自然環境 映画『サンシャイン2057』には、宇宙船イカロス2号という閉ざされた人工空間が登場します。 その船内で唯一“生命の色”を放つのが、「オキシジェン・ガーデン」と呼ばれる緑の部屋でした。 金属と機械音に満ちた環境のなかで…
動き続けるバランス―夫婦の“収入と身体”がつくる交換の力学 2025/11/29Posted in心理学, 文献, 日常 映画『アメリカン・ビューティー』(1999)には、夫婦の経済的な力関係の均衡がきしみ始める瞬間が描かれています。 仕事に押しつぶされかけたレスターは、成功を積み上げる妻キャロリンの姿を前に、自らの価値が目に見えてしぼ…
予測の影が立ち上がるとき―既視感が生む“未来を知る気がする”錯覚 2025/11/28Posted in心理学, 文献 1999年公開の映画『マトリックス』では、主人公が同じ黒猫を二度見る場面が描かれています。 その一瞬のズレが世界の裏側を示す“兆し”のように感じられ、観客の胸にざらりとした既視感が残ります。 日常でも、同じように「こ…
「折れない心」と不安のあいだ―「ポジティブ・シンキング」の逆説 2025/11/18Posted in心理学, 文献 若い学生さんたちや、あるいは患者さんを見ていても感じることですが、同じ困難に直面しても、すぐに立ち直る人と、深く落ち込んでしまう人がいます。 特に大学入学のような新しい環境では、人前での発表や新しい人間関係に強い不安…
バットマン効果―日常の「バグ」が優しさを呼び覚ます 2025/11/13Posted in心理学, 文献, 日常 私はマイカー通勤なので、ゆいレールはほとんど利用しないのですが、たまに乗るとその混み具合に驚かされます。 県民としては「利用者が増えているのは良いことだ」と安心する一方で、「空港まで立ちっぱなしは少しつらいな」と内心…
時の輪郭がぼやけるとき―歳を重ねると時間があっという間に過ぎていくわけ 2025/11/10Posted in心理学, 文献, 神経科学 歳を重ねると、時間の流れが驚くほど早く感じられるものです。 心理学ではこの現象を“ジャネーの法則”と呼んでいて、人生の時間は年齢に反比例して速く感じられるとされています。 11月もこの時期になると、気づけば年の瀬が迫…
父親との2週間―育休が変える家族の未来 2025/11/07Posted in心理学, 文献, 日常 私が県立中部病院の勤務医だったころ、アメリカ留学帰りの先輩の先生が「産休」はもちろん、「育児休暇」をとったというのを聞いて、素直に驚いたことがあります。 当時、管理職の外科の先生は「自分は子どもの学校行事は一度も観に…
音楽が刻む「思い出の座標」—青春とその余韻の科学 2025/11/03Posted in心理学, 文献, 音楽 雨上がりの夜、ラジオから流れたイントロに、ふと胸の奥がざわつくことがあります。 曲名を思い出せなくても、そのときの空気、友人の笑い声、胸の高鳴りがよみがえる。 どうして音楽は、これほどまでに記憶の底を震わせるのでしょ…