その同意は、本気だったのか ― 陰謀論調査に紛れ込む、冗談と信念のすき間 2026/05/17Posted in心理学, 文献, 日常 「国民の何%が、陰謀論を信じている」 そんな見出しを見ると、私たちはつい、「ああ、そういう人たちがいるのだ」とひとまとめに見てしまいます。 少し距離を置き、ときには色眼鏡で眺めてしまう。 調査票に付いた1つの丸印が、…
卵は、控えたほうが安心なのか ― 39,498人を15年追って見えた、食卓とアルツハイマー病の関係 2026/05/15Posted in健康, 心理学, 文献, 神経科学 外来で栄養の話になると、「卵はどのくらい食べてもいいのでしょうか」と聞かれることがあります。 すぐに答えられそうで、案外そうでもありません。 卵は長いあいだ、食卓の人気者であり、少し疑われてきた食材でもあります。 コ…
誰かと食べた回数に、幸福感の差が表れる ― 142カ国15万人と米国20年の調査で見た、共食と幸福感 2026/04/29Posted in心理学, 文献, 日常 昼食を一人で済ませる日があります。 スマホを見ながら弁当のふたを開け、食べたことは覚えていても、どんな時間だったかはあまり覚えていない。 別の日には、誰かと同じ机につき、同じ弁当を前にして、短い会話を交わす。 食事は…
落ち込むから飲むのか、飲むから落ち込むのか ― 一般成人816人を12か月追った、心の状態と飲酒量の時間順序 2026/04/28Posted in健康, 心理学, 文献 何度目かのアラームの音で、「彼」はようやく目を開けました。 頭が重い。胃がむかむかしている。 みぞおちあたりに、昨日の酒がまだ残っている感じがします。 カーテンの隙間から入る朝の光が、目に刺さるほどまぶしい。 昨夜は…
学会発表でウケ狙いはアリか―会場で冗談と笑いを本気で数えた人たちがいた 2026/04/24Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献 学会の午後2時すぎ。 ランチョンセミナーでしっかり食べたあとの、最初のセッション。 人類が最も眠くなる時間帯です。 スライドは6枚目、グラフは縦軸も横軸も正しく、色分けも完璧で、そして誰も聞いていません。 聴衆の目は…
友だちとドラムをたたくと、オキシトシンは上がった―でも、気分が上向いたのは初対面の輪だった 2026/04/20Posted in心理学, 文献 歓迎会の班分け、初対面の研修、子ども会のワークショップ。 知らない同士でも、同じことを一緒にやれば距離は縮まる。 そう信じて、私たちは輪をつくり、手を打ち、声をそろえます。 ああいう場が何度も組まれるのは、それが人を…
ひらめきたいなら、少し手を動かすほうがいい ―退屈な動画と少し面白い動画で見えた、発想の条件 2026/04/19Posted in心理学, 文献, 日常 シャワーを浴びているとき、散歩をしているとき、庭の草をむしっているとき。 机の前では出てこなかった答えが、不意に形を取り始めることがあります。 こうした経験から、多くの人は一つの考えを信じてきました。 単調で退屈な時…
つられ笑いは、誰にでも通じるのか―自閉スペクトラム症成人でみた、笑い声の効く場面・効かない場面 2026/04/14Posted in心理学, 文献 誰かが笑っている。 内容はよく聞こえない。 それなのに、つられて口元がゆるむ。 あとから「何がおかしかったの」と聞かれると、うまく答えられない。 あのとき反応していたのは、話の中身ではなく、先に聞こえた笑い声だったの…
涙の行き先は、涙だけでは決まらない―成人106人の涙を4週間追った日常追跡研究 2026/04/06Posted in心理学, 文献 「泣けばすっきりする」 私たちはそう信じてきました。 泣ける映画をわざわざ選ぶ夜があるのも、涙に「心のデトックス」の役目を期待しているからでしょう。 泣いてしまえば、胸のつかえは少し取れる。 そう思ってしまう。 けれ…
涙が届く場所―「女性の涙」は、男性の攻撃性にブレーキをかけていた 2026/03/29Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献, 生物 サンジや冴羽獠のように、女性の涙の前で男性の勢いが急にほどける場面は、アニメや映画で何度も繰り返されてきました。 私たちはそれを、やさしさや騎士道精神の表れとして理解してきました。 あるいは、攻撃を控えるための演技だ…
くすぐられる前に、もう笑っている―3〜5歳144家族にみる、父親と母親の笑わせ方 2026/03/24Posted in心理学, 文献 子どもは、くすぐられる前から笑うことがあります。 指が近づいただけで、もう顔がゆるみます。 追いかけられる前ぶれだけで、声を立てて笑うこともあります。 面白い出来事が起きたから笑う、という説明だけでは足りません。 こ…
差し出された不安— 診察室で、なぜ話がすれ違うのか 2026/03/23Posted in医療全般, 心理学, 文献 体のことが気になると、人はまず調べます。 検索窓に症状を入れ、AIの答えを読み、動画で誰かの体験談を見る。 家族や友人から聞いた話も頭に残ります。 そうして集めた言葉を診察室に持っていくのは、知識を見せびらかしたいか…
時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究 2026/03/22Posted in心理学, 文献, 神経科学 二つの画像を見せられ、「この間にどれくらい時間が経っていたか」を問われます。 客観的な時間は、どちらの組み合わせも正確に32.5秒です。 それなのに、ある条件のときだけ、人はその間をより長く見積もります。 記憶の中の…
変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究 2026/03/19Posted in心理学, 文献, 日常 「人は変わらない。」 昔からよく聞く言葉です。 私自身もそう考えることがあります。 事態を動かしたいなら、相手を変えようとするより、自分が変わるほうが早い。 少し冷えた戦略にも見えますが、この考え方には別の面もありま…
同じ曲を聴いても、同じ場所には届かない―音楽を楽しむ力に、遺伝も関わっていた 2026/03/18Posted in心理学, 文献, 音楽 好きな曲を人に勧めたのに、思ったほど響かなかったことがあります。 こちらにとっては、ある時期の空気ごと抱えているような曲でも、相手には「いい曲だね」で終わることがあります。 逆に、どうしてこの曲でそこまで心が動くのだ…
なぜ皮肉がわかると、人は安心するのか―ブラックユーモアと不安の関係を調べた心理実験 2026/03/11Posted in心理学, 文献, 日常 宴席でブラックジョークを口にした瞬間、場の空気が変わったことがあります。 笑った人と、表情を固めた人が、同じテーブルにいました。 笑えなかった側は「センスがない」と思われたかもしれません。 笑った側は「空気が読めない…
孤独になると、なぜ人は過去を思い出すのか ―ノスタルジア研究が見つめた「切れない構造」 2026/03/08Posted in心理学, 文献, 日常 三月になりました。 街を歩いていると、ふいに花束を抱えた人の姿が目に入りました。 晴れやかな表情。写真を撮る家族。 卒業式の帰りなのでしょう。 その光景を見ていると、自分のあの頃を思い出します。 教室の空気。友だちの…
秘密は隠すより、思い出すほうが重い―心がさまようとき、気分はあとから下がりやすい 2026/03/07Posted in心理学, 文献 誰にでも、口に出せないことのひとつやふたつはあるものです。 人はそれを話さずにいると、「守っている」と感じます。 口に出さなければ、秘密は保たれている、と。 けれど、本当にそうでしょうか。 秘密がいちばん重く感じ…
「自分のものだけ、許される」―嫌悪は“におい”ではなく、“境界”を嗅いでいる 2026/03/03Posted in心理学, 文献, 日常 他人のおならの匂いは耐えがたいのに、自分のそれはなぜかそこまで気にならない。 この非対称は笑い話のようでいて、妙に引っかかります。 刺激は同じはずなのに、反応が違う。 私たちは本当に匂いに反応しているのでしょうか。 …
先延ばしにも、意味があるのかもしれない―成人237人が示した「すぐに答えを出さない力」 2026/03/01Posted in心理学, 文献 やらなければいけないことがあるのに、なぜか手をつけない。 机に向かっているのに、別のことを考えている。 あとでやろう、と言いながら時間が過ぎていく。 そんな時間を、私たちは「無駄にしてしまった時間」と呼びます。 …
余裕がないと、人はやさしくなる?―環境の「豊かさ」が変える、私たちの判断 2026/02/18Posted in心理学, 文献 私たちは、心の余裕と懐の余裕は比例すると、どこかで信じています。 お金や時間にゆとりがあれば、人は穏やかで寛大になる。 逆に、追い詰められれば、他人どころではなくなる。 理屈でなく、それが人間なのだと思っています。 …
孫の世話は、高齢者の脳の健康につながる―祖父母の育児参加と認知機能を調べた心理学研究 2026/02/17Posted in健康, 心理学, 文献 「孫はかわいいけれど、1日ずっと一緒に過ごすのは疲れる」と、母はよく言っていました。 体力的な理由だけではなく、気持ちのほうが先に疲れるのだそうです。 質問に答え、様子をうかがい、先回りして動く。 その積み重ねが、あ…
失敗の処方箋―情動調節と目標への再コミットメントを巡る分析 2026/02/16Posted in心理学, 文献 若いころ、成功哲学や自己啓発書を手当たり次第に読んでいた時期がありました。 誰の言葉だったかは思い出せませんが、「諦める一歩先に必ず宝がある」という一文は、今も胸に残っています。 その言葉と重なるように思い浮かぶ…
体が先に反応した日―サッカー決勝戦と、からだに現れた高ぶりの記録 2026/02/15Posted inスポーツ, 心理学, 文献 スタジアムの歓声、張り詰めた空気、そして勝敗が決した瞬間の爆発的な感情。 スポーツ観戦が私たちの心を揺さぶるのは自明のことです。 そのとき私たちの「体」の内部では一体何が起きているのでしょうか。 ドイツの研究チームが…
声にならない音が、身体を先に落ち着かせる―ハミングと自律神経に起きていた反応 2026/02/14Posted in心理学, 文献, 神経科学 気がつくと、妻はよく鼻歌を口ずさんでいます。 歌と呼ぶほど整った旋律ではなく、正体のわからないメロディに、「んー」という発声が重なっているだけのものです。 「機嫌がいいんだね」と声をかけると、妻はきょとんとした顔で「…