涙が届く場所―「女性の涙」は、男性の攻撃性にブレーキをかけていた 2026/03/29Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献, 生物 サンジや冴羽獠のように、女性の涙の前で男性の勢いが急にほどける場面は、アニメや映画で何度も繰り返されてきました。 私たちはそれを、やさしさや騎士道精神の表れとして理解してきました。 あるいは、攻撃を控えるための演技だ…
くすぐられる前に、もう笑っている―3〜5歳144家族にみる、父親と母親の笑わせ方 2026/03/24Posted in心理学, 文献 子どもは、くすぐられる前から笑うことがあります。 指が近づいただけで、もう顔がゆるみます。 追いかけられる前ぶれだけで、声を立てて笑うこともあります。 面白い出来事が起きたから笑う、という説明だけでは足りません。 こ…
差し出された不安— 診察室で、なぜ話がすれ違うのか 2026/03/23Posted in医療全般, 心理学, 文献 体のことが気になると、人はまず調べます。 検索窓に症状を入れ、AIの答えを読み、動画で誰かの体験談を見る。 家族や友人から聞いた話も頭に残ります。 そうして集めた言葉を診察室に持っていくのは、知識を見せびらかしたいか…
時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究 2026/03/22Posted in心理学, 文献, 神経科学 二つの画像を見せられ、「この間にどれくらい時間が経っていたか」を問われます。 客観的な時間は、どちらの組み合わせも正確に32.5秒です。 それなのに、ある条件のときだけ、人はその間をより長く見積もります。 記憶の中の…
変われる世界は、いつも救いになるとは限らない―社会不安の高い人で確かめた「印象は変わるか」という4つの研究 2026/03/19Posted in心理学, 文献, 日常 「人は変わらない。」 昔からよく聞く言葉です。 私自身もそう考えることがあります。 事態を動かしたいなら、相手を変えようとするより、自分が変わるほうが早い。 少し冷えた戦略にも見えますが、この考え方には別の面もありま…
同じ曲を聴いても、同じ場所には届かない―音楽を楽しむ力に、遺伝も関わっていた 2026/03/18Posted in心理学, 文献, 音楽 好きな曲を人に勧めたのに、思ったほど響かなかったことがあります。 こちらにとっては、ある時期の空気ごと抱えているような曲でも、相手には「いい曲だね」で終わることがあります。 逆に、どうしてこの曲でそこまで心が動くのだ…
なぜ皮肉がわかると、人は安心するのか―ブラックユーモアと不安の関係を調べた心理実験 2026/03/11Posted in心理学, 文献, 日常 宴席でブラックジョークを口にした瞬間、場の空気が変わったことがあります。 笑った人と、表情を固めた人が、同じテーブルにいました。 笑えなかった側は「センスがない」と思われたかもしれません。 笑った側は「空気が読めない…
孤独になると、なぜ人は過去を思い出すのか ―ノスタルジア研究が見つめた「切れない構造」 2026/03/08Posted in心理学, 文献, 日常 三月になりました。 街を歩いていると、ふいに花束を抱えた人の姿が目に入りました。 晴れやかな表情。写真を撮る家族。 卒業式の帰りなのでしょう。 その光景を見ていると、自分のあの頃を思い出します。 教室の空気。友だちの…
秘密は隠すより、思い出すほうが重い―心がさまようとき、気分はあとから下がりやすい 2026/03/07Posted in心理学, 文献 誰にでも、口に出せないことのひとつやふたつはあるものです。 人はそれを話さずにいると、「守っている」と感じます。 口に出さなければ、秘密は保たれている、と。 けれど、本当にそうでしょうか。 秘密がいちばん重く感じ…
「自分のものだけ、許される」―嫌悪は“におい”ではなく、“境界”を嗅いでいる 2026/03/03Posted in心理学, 文献, 日常 他人のおならの匂いは耐えがたいのに、自分のそれはなぜかそこまで気にならない。 この非対称は笑い話のようでいて、妙に引っかかります。 刺激は同じはずなのに、反応が違う。 私たちは本当に匂いに反応しているのでしょうか。 …
先延ばしにも、意味があるのかもしれない―成人237人が示した「すぐに答えを出さない力」 2026/03/01Posted in心理学, 文献 やらなければいけないことがあるのに、なぜか手をつけない。 机に向かっているのに、別のことを考えている。 あとでやろう、と言いながら時間が過ぎていく。 そんな時間を、私たちは「無駄にしてしまった時間」と呼びます。 …
余裕がないと、人はやさしくなる?―環境の「豊かさ」が変える、私たちの判断 2026/02/18Posted in心理学, 文献 私たちは、心の余裕と懐の余裕は比例すると、どこかで信じています。 お金や時間にゆとりがあれば、人は穏やかで寛大になる。 逆に、追い詰められれば、他人どころではなくなる。 理屈でなく、それが人間なのだと思っています。 …
孫の世話は、高齢者の脳の健康につながる―祖父母の育児参加と認知機能を調べた心理学研究 2026/02/17Posted in健康, 心理学, 文献 「孫はかわいいけれど、1日ずっと一緒に過ごすのは疲れる」と、母はよく言っていました。 体力的な理由だけではなく、気持ちのほうが先に疲れるのだそうです。 質問に答え、様子をうかがい、先回りして動く。 その積み重ねが、あ…
失敗の処方箋―情動調節と目標への再コミットメントを巡る分析 2026/02/16Posted in心理学, 文献 若いころ、成功哲学や自己啓発書を手当たり次第に読んでいた時期がありました。 誰の言葉だったかは思い出せませんが、「諦める一歩先に必ず宝がある」という一文は、今も胸に残っています。 その言葉と重なるように思い浮かぶ…
体が先に反応した日―サッカー決勝戦と、からだに現れた高ぶりの記録 2026/02/15Posted inスポーツ, 心理学, 文献 スタジアムの歓声、張り詰めた空気、そして勝敗が決した瞬間の爆発的な感情。 スポーツ観戦が私たちの心を揺さぶるのは自明のことです。 そのとき私たちの「体」の内部では一体何が起きているのでしょうか。 ドイツの研究チームが…
声にならない音が、身体を先に落ち着かせる―ハミングと自律神経に起きていた反応 2026/02/14Posted in心理学, 文献, 神経科学 気がつくと、妻はよく鼻歌を口ずさんでいます。 歌と呼ぶほど整った旋律ではなく、正体のわからないメロディに、「んー」という発声が重なっているだけのものです。 「機嫌がいいんだね」と声をかけると、妻はきょとんとした顔で「…
患者になりたがる私たち— SNS利用を「依存」と呼ぶことは、本当に救いなのか 2026/02/01Posted in心理学, 文献, 日常 夜、ベッドに腰を下ろした瞬間、特に理由もなくスマホを手に取ってしまう。 画面を閉じたあと、胸の奥に薄い重さが残る。 「またやってしまった」 この一言を、私たちはずいぶん手際よく強い言葉に置き換えてきました。 自分はS…
「やる気が出ない」「重たい腰」の正体 — 価値はわかっていても動き出せない 2026/01/30Posted in心理学, 文献, 神経科学 やるべきことは分かっている。 終われば報酬があり、意味も理解している。 それでも、どうしても始められない。 「やる気が出ない」「腰が重い」。 私たちはこの感覚を、意志の弱さや気分の問題として処理しがちです。 しかし研…
集中したいときはゲーム音楽がよい?―BGMが意識を動かす仕組み 2026/01/25Posted in心理学, 文献, 音楽 音楽を聴いているとき、私たちは本当に「音」だけを聴いているのでしょうか。 通勤の車内で流れていた曲が、いつの間にか昔の帰り道を呼び戻していたり、作業用にかけたはずのBGMが、気づけば仕事とは無関係な空想に火をつけてい…
死はいつも、こちら側に残される―日本版デス・リテラシー指標で見えてきた、動けない空白 2026/01/20Posted in心理学, 文献, 日常 フランスの思想家モーリス・ブランショは、「死はいつも他人の死である」という言葉を残しました。 私たちは、自分の死を自分で「見る」ことはできません。 死は、いつも誰かの出来事として、生きている私たちの前に現れます。 病…
「優しい嘘」に溺れる私たち―AI画像が映し出す、感情と現実のずれ 2026/01/16Posted inAI, 心理学, 文献 指先一つで世界中の出来事に触れられる時代、私たちは画面の中に「見たいと願う物語」を探し続けています。 Facebookのフィードを流れてくる、仲睦まじい老夫婦の銀婚式や、手作りの作品を誇らしげに掲げる子供の姿。 それ…
呼吸がうまくいかないとき、体の中で起きていること―1週間の実験が見せた、緊張と分子の距離 2026/01/11Posted inマインドフルネス, 心理学, 文献 緊張する場面に出くわしたとき、「落ち着こう」と思って深呼吸を試みることがあります。 ところが、意図とは裏腹に息が速くなり、うまく吸えない。 そんな経験は珍しくありません。 何度か呼吸を繰り返し、ふっと深く吸える瞬間が…
会話が途切れた一瞬で、指は画面へ伸びる―不安な心は、なぜ目の前の人よりスマホを選ぶのか 2025/12/29Posted in心理学, 文献, 日常 会話が途切れた、その一瞬です。 気まずさが生まれる前に、指は自然とスマートフォンへ伸びます。 隣に誰かが座っていても、この動きは止まりません。 気づけば、沈黙を埋める相手は人ではなく、画面になっています。 この反射の…
女性はどうやって嘘を見抜くのか―恋愛で騙されないための行動戦略 2025/12/25Posted in心理学, 文献 コメディ映画『ラブ・アゲイン』のクライマックスでは、ある家族の庭先で、積み上げられてきた関係が一気に崩壊します。 娘が「運命の人」だと信じて連れてきた恋人は、実は父親に恋愛の手ほどきをしていた人物でした。 家族という…
自己診断の落とし穴―疾患の啓発の副作用 2025/12/20Posted in健康, 医療全般, 心理学, 文献 2020年のドキュメンタリー映画『Social Dilemma(日本語タイトル:監視資本主義 デジタル社会がもたらす光と影)』では、日常の何気ないクリックが、知らないうちに「自分はこういう人間だ」という確信へ形を変え…