ピーナツを分ける前に、まず抱きしめる ― 類人猿が争いをほどく方法 2026/08/10Posted in心理学, 文献, 生物, 科学 雄のチンパンジーが、別の雄を後ろから抱きしめます。 そこへ3頭目、4頭目と一頭ずつ加わり、やがてできたのは抱擁の列です。 研究者たちは、この連なりを “reassurance train”――「安心の列車」と呼びまし…
同じ年数を、性格には数えていない 2026/08/08Posted in心理学, 文献, 日常 「三つ子の魂百まで」といいます。 60歳を過ぎて何十年ぶりかに同級生と会うと、最初は誰なのかわかりません。 ところが、共通の思い出をたどりながら話しているうちに、目の前の顔へ昔の面影が少しずつ重なってきます。 そして…
坂は一本ではない 2026/07/11Posted in心理学, 文献, 日常 人の名前がとっさに出てこない。 暗算に前より少し手間取る。 若いころほど頭が回らなくなった、と感じる場面は、40を過ぎたあたりから増えてきます。 こうした手応えから、多くの人が一つの見取り図を持っています。 頭の働き…
強さを目算する目 ― 男性の体の魅力に残る古い物差し 2026/07/09Posted in心理学, 文献 街を歩いていて、あるいは画面をながめていて、誰かの体にふと目が留まることがあります。 しばらく鍛えているのだろうな、とか、引き締まっているな、とか。 多くの場合、私たちはそれを個人的な好みだと考えています。 人の体の…
笑いは人間だけのものではなかった ― 類人猿の「ハハハ」に残る古い拍子 2026/07/03Posted in心理学, 文献, 生物 人間は「笑う動物」だと言われます。 でも、どうやら独占契約ではなかったようです。 動物園やテレビで、チンパンジーが口を開けて息をはずませている姿を見ると、私たちはつい「笑っている」と言いたくなります。 ある世代なら、…
不安は、心配の量だけではない ― 同じ映画に生まれる別々の切れ目 2026/06/27Posted in心理学, 文献 レストランに入るところを思い浮かべてみます。 店に入る。 席に案内される。 メニューを開く。 注文する。 料理を待つ。 食べる。 会計をする。 ひと続きの時間を、頭の中でいくつもの場面に分けています。 その区切りがあ…
人混みには、左回りのくせがある ― 群れの前にあった足取り 2026/06/22Posted in心理学, 文献, 日常 初詣の境内は、人で身動きが取れません。 前へ進みたい。 けれど、足取りは自分の思いどおりになりません。 肩が隣に当たり、前の背中との隙間に、別の人がすっと入ってきます。 ライブ会場へ向かう駅前でも、同じです。 誰かに…
覚えているのに、言わないこと ― AIの記憶に必要な間合い 2026/06/14Posted inAI, 心理学, 文献 そこまで親しいわけではない相手に、近くでお昼を食べられる店はないかと、軽くたずねたとします。 「療養あけですし、入院もありましたから、やさしいものがいいですね」 返ってきたのは、店の名前ではありませんでした。 以前、…
疲れているのに、なぜ長く走ってしまうのか ― スマートウォッチに残った、努力と回復のずれ 2026/06/09Posted inランニング, 健康, 心理学, 文献 疲れている日ほど、早く休めばいい。 頭ではそうわかっています。 けれど現実には、そうならないことがあります。 遅れた仕事を片づける。 足りなかった勉強時間を埋める。 昨日できなかった分を、今日の自分に上乗せする。 そ…
服装は、どこまで本人のものなのか ― 身体と視線をめぐる研究 2026/06/07Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献 私のブログには「ヘンな論文(私見)」という分類があります。 真顔で妙なことを調べた論文を探して読む、趣味としか言いようのない道楽です。 お手本は、人を笑わせ、それから考えさせるというイグノーベル賞の精神。 今回の一本…
音楽は、読書の邪魔なのか ― 大学生226人の耳元にあった、集中の選び方 2026/05/28Posted in心理学, 文献, 読書, 音楽 図書館の自習室には、張り詰めた無音が広がっています。 ページをめくる音さえ、少し遠慮してしまう場所です。 読むなら音を消す。 集中するとは、余計なものを遠ざけること。 私たちはどこかで、そう考えてきました。 外へ…
贈り物は、人を格付けするのか ― お返しの連鎖から見えた、富と名誉の段差 2026/05/27Posted in心理学, 文献, 日常 お中元やお歳暮、結婚や葬儀の席で交わされる贈り物は、たいてい温かさや好意の証として受け取られます。 お金のやり取りとは違い、そこに損得勘定はない。 贈与は人と人を対等に結ぶもので、序列や格差とは縁が薄い。 多くの人が…
432Hzは、本当に心を落ち着かせるのか――鐘の音から、周波数と期待のあいだをたどる 2026/05/25Posted in心理学, 文献, 音楽 座禅の始まりに鳴る「チーン」という鐘の音は、ただの合図ではありません。 止静鐘と呼ばれるその音がひとつ響くと、空気がすっと切り替わります。 鐘の音色に導かれるように、気持ちの向きが内側へ戻っていく。 音には、耳に届く…
覚えた息と、思い出す息が重なるとき ― 暗記と想起のそばにあった、呼吸の小さな時刻 2026/05/24Posted in心理学, 文献, 日常 夜遅く、机に向かった受験生が、さっき覚えたはずの単語を思い出せずにいます。 ページの場所は覚えている。 赤いペンで線を引いたことも覚えている。 けれど、肝心の言葉だけが出てこない。 焦るほど呼吸は浅くなり、両手で頭を…
楽器を習ってきた人と、そうでない人 ― 退屈な課題で見えた、注意の途切れにくさ 2026/05/20Posted in心理学, 文献, 神経科学, 音楽 月に3回ほど通うギター教室で、私はよく講師の先生に苦笑いされます。 大好きなビートルズの初期の曲を弾きたくて、自分で課題曲に選びました。 聴いていると若々しく、リズムも小気味よく、こちらの足まで動きそうになります。 …
その同意は、本気だったのか ― 陰謀論調査に紛れ込む、冗談と信念のすき間 2026/05/17Posted in心理学, 文献, 日常 「国民の何%が、陰謀論を信じている」 そんな見出しを見ると、私たちはつい、「ああ、そういう人たちがいるのだ」とひとまとめに見てしまいます。 少し距離を置き、ときには色眼鏡で眺めてしまう。 調査票に付いた1つの丸印が、…
卵は、控えたほうが安心なのか ― 39,498人を15年追って見えた、食卓とアルツハイマー病の関係 2026/05/15Posted in健康, 心理学, 文献, 神経科学 外来で栄養の話になると、「卵はどのくらい食べてもいいのでしょうか」と聞かれることがあります。 すぐに答えられそうで、案外そうでもありません。 卵は長いあいだ、食卓の人気者であり、少し疑われてきた食材でもあります。 コ…
誰かと食べた回数に、幸福感の差が表れる ― 142カ国15万人と米国20年の調査で見た、共食と幸福感 2026/04/29Posted in心理学, 文献, 日常 昼食を一人で済ませる日があります。 スマホを見ながら弁当のふたを開け、食べたことは覚えていても、どんな時間だったかはあまり覚えていない。 別の日には、誰かと同じ机につき、同じ弁当を前にして、短い会話を交わす。 食事は…
落ち込むから飲むのか、飲むから落ち込むのか ― 一般成人816人を12か月追った、心の状態と飲酒量の時間順序 2026/04/28Posted in健康, 心理学, 文献 何度目かのアラームの音で、「彼」はようやく目を開けました。 頭が重い。胃がむかむかしている。 みぞおちあたりに、昨日の酒がまだ残っている感じがします。 カーテンの隙間から入る朝の光が、目に刺さるほどまぶしい。 昨夜は…
学会発表でウケ狙いはアリか―会場で冗談と笑いを本気で数えた人たちがいた 2026/04/24Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献 学会の午後2時すぎ。 ランチョンセミナーでしっかり食べたあとの、最初のセッション。 人類が最も眠くなる時間帯です。 スライドは6枚目、グラフは縦軸も横軸も正しく、色分けも完璧で、そして誰も聞いていません。 聴衆の目は…
友だちとドラムをたたくと、オキシトシンは上がった―でも、気分が上向いたのは初対面の輪だった 2026/04/20Posted in心理学, 文献 歓迎会の班分け、初対面の研修、子ども会のワークショップ。 知らない同士でも、同じことを一緒にやれば距離は縮まる。 そう信じて、私たちは輪をつくり、手を打ち、声をそろえます。 ああいう場が何度も組まれるのは、それが人を…
ひらめきたいなら、少し手を動かすほうがいい ―退屈な動画と少し面白い動画で見えた、発想の条件 2026/04/19Posted in心理学, 文献, 日常 シャワーを浴びているとき、散歩をしているとき、庭の草をむしっているとき。 机の前では出てこなかった答えが、不意に形を取り始めることがあります。 こうした経験から、多くの人は一つの考えを信じてきました。 単調で退屈な時…
つられ笑いは、誰にでも通じるのか―自閉スペクトラム症成人でみた、笑い声の効く場面・効かない場面 2026/04/14Posted in心理学, 文献 誰かが笑っている。 内容はよく聞こえない。 それなのに、つられて口元がゆるむ。 あとから「何がおかしかったの」と聞かれると、うまく答えられない。 あのとき反応していたのは、話の中身ではなく、先に聞こえた笑い声だったの…
涙の行き先は、涙だけでは決まらない―成人106人の涙を4週間追った日常追跡研究 2026/04/06Posted in心理学, 文献 「泣けばすっきりする」 私たちはそう信じてきました。 泣ける映画をわざわざ選ぶ夜があるのも、涙に「心のデトックス」の役目を期待しているからでしょう。 泣いてしまえば、胸のつかえは少し取れる。 そう思ってしまう。 けれ…
涙が届く場所―「女性の涙」は、男性の攻撃性にブレーキをかけていた 2026/03/29Posted inヘンな論文(私見), 心理学, 文献, 生物 サンジや冴羽獠のように、女性の涙の前で男性の勢いが急にほどける場面は、アニメや映画で何度も繰り返されてきました。 私たちはそれを、やさしさや騎士道精神の表れとして理解してきました。 あるいは、攻撃を控えるための演技だ…