開いていると思っていた箱

開いていると思っていた箱

  2019年、人類は初めてブラックホールの姿を写真にしました。 オレンジ色の環が、暗い中心を囲んでいる。 あの1枚は、地球ほどの大きさに広げた望遠鏡が、世界中で集めた電波を組み合わせて作られています。 ただし、集まった…
足元ではなく、斜め下流に

足元ではなく、斜め下流に

  浅い川に足を入れると、足の後ろで水が小さく巻きます。 流れがぶつかってできた乱れは、足のすぐ後ろにあって、少し下流へ行けば消えていく。 乱れがおよぶのは、それを生んだものの足元あたり。 海底に残る跡も、そのそばにある…
昆虫食は、ひとくくりにできるのか ― バッタ、コオロギ、オケラの体に残った土と草の記録

昆虫食は、ひとくくりにできるのか ― バッタ、コオロギ、オケラの体に残った土と草の記録

  昆虫食をすすめる話ではありません。 食卓にバッタやコオロギが出てきたら、箸が止まる人は少なくないはずです。 その反応は、恐れや弱さではなく、ごく自然な距離感です。 長いあいだ私たちは、虫を食べものではなく、避けるもの…
夜の森で、サンショウウオは何色だったのか ― ファイアサラマンダーの皮膚分泌物に見えた青緑の合図

夜の森で、サンショウウオは何色だったのか ― ファイアサラマンダーの皮膚分泌物に見えた青緑の合図

  ヨーロッパでよく調べられてきた両生類の一つに、ファイアサラマンダーがいます。 黒地に黄色い斑(まだら)模様を持ち、毒を持つ生きものです。 その派手な色彩は、「食べるな」と知らせる警告色の代表例として、長く教科書的に扱…
水は暮らしへ、塩は資源へ ― 太陽熱淡水化と、海水からの鉱物採掘を同時に試した研究

水は暮らしへ、塩は資源へ ― 太陽熱淡水化と、海水からの鉱物採掘を同時に試した研究

  海に囲まれた沖縄に住む私たちにとって、海水淡水化プラントはただの施設ではありません。 干ばつや台風のたびに、水がどれほど暮らしの足場を支えているかを思い知らされます。 透析クリニックに身を置く者としては、水は暮らしを…
水が引いた池に、巨大生物の輪郭があった ― タイの赤い泥から見えた、恐竜世界の並び替え

水が引いた池に、巨大生物の輪郭があった ― タイの赤い泥から見えた、恐竜世界の並び替え

  乾季の池では、水位が下がると、ふだん隠れていた泥の面があらわれます。 魚の跡、割れた土、流木、小石。 そこに少しだけ違うものが混じっていても、最初はただの石に見えるかもしれません。 2016年、タイ東北部チャイヤプー…
同じ挽き目なのに、なぜ流れが変わるのか ― エスプレッソの粉の中にある、通れる穴と通れない穴

同じ挽き目なのに、なぜ流れが変わるのか ― エスプレッソの粉の中にある、通れる穴と通れない穴

  コーヒーの味にこだわるほど、豆の産地や焙煎の深さが気になります。 エスプレッソでは、細かく挽いて、タンピングと呼ばれる作業で押し固めた粉に、高い圧力でお湯を通します。 お湯が粉の層を抜ける速さが変われば、成分が溶け出…
雨音の届く深さで、種は目を覚ます — イネ種子の発芽を早めた雨滴音と重力感知細胞

雨音の届く深さで、種は目を覚ます — イネ種子の発芽を早めた雨滴音と重力感知細胞

   海の音山の音みな春しぐれ 中川宋淵   雨が降ると、世界の音の構造が変わります。 普段は別々に聞こえていた音が、雨音という一つの層の中で重なり、海鳴りも山の響きも、春の時雨の一部として耳に届きます。 人間はその音を…