査読を越えたAI論文―人はどこに本物を見るのか

査読を越えたAI論文―人はどこに本物を見るのか

  人気のテレビ番組のように、銘柄を隠して飲み比べると、高級ワインを言い当てられないことがあります。 署名を伏せた絵や詩でも、私たちの審美眼は名前に引っぱられがちです。 だから科学の世界には、論文から著者名を外し、同じ分…
歴史の時間軸を揺さぶる脛骨— 7400万年前の地層が問い直す巨大ティラノサウルスの出自

歴史の時間軸を揺さぶる脛骨— 7400万年前の地層が問い直す巨大ティラノサウルスの出自

  ティラノサウルス・レックスは、体重およそ10トン、白亜紀の最末期に北米大陸の生態系を支配した捕食者です。 北米で知られる同時代以前の近縁種の多くが2〜3トン級にとどまるなかで、この動物だけが桁違いの体格に到達しました…
棲めない砂漠に残されたオウムの羽―パチャカマク遺跡が明かした、生きた鳥の山越え移送

棲めない砂漠に残されたオウムの羽―パチャカマク遺跡が明かした、生きた鳥の山越え移送

  ペルーの太平洋岸は、地球上でも極端に乾いた土地のひとつです。 年間降水量はほぼゼロに近く、見渡すかぎり砂と岩の風景が続きます。 熱帯雨林に棲む大型のオウムが、生きて暮らせる環境ではありません。 その砂漠の聖地パチャカ…
くり返さない秩序は、結晶と呼べるのか― 博物館の箱から始まった、宇宙46億年のミステリー

くり返さない秩序は、結晶と呼べるのか― 博物館の箱から始まった、宇宙46億年のミステリー

  ある日、イタリアの博物館の地下で、一つの箱が開けられました。 その箱には、古い岩石のかけらがいくつか入っていました。特別な展示品でもなく、ただの鉱物標本として保管されていたものです。   ところが、その小さな粒を顕微…
宇宙は乱れていく。それでも、なぜ複雑になるのか―機能的情報という考え方から見る宇宙の進化

宇宙は乱れていく。それでも、なぜ複雑になるのか―機能的情報という考え方から見る宇宙の進化

  朝、台所でお湯をわかします。 やがて気泡が立ち、蒸気がのぼる。 放っておけば、熱は部屋に広がり、やがて冷めていきます。 これがエントロピー増大、すなわち第二法則の世界です。 秩序はほどけ、差はならされ、全体は均されて…
傷は、どこで最初に気づかれるのか―マクロファージ核が読み取る“形”の変化と即時血管応答

傷は、どこで最初に気づかれるのか―マクロファージ核が読み取る“形”の変化と即時血管応答

  「そこ、耳の後ろ、少し血が出てるよ」   そう言われて、はじめて触れてみる。 自分ではまったく気づいていなかったのに、指先にわずかな湿り気が残る。 痛みは、そのあとから追いついてくる。 異変は、自覚よりも先に、どこか…
見終えたはずの標本が、もう一度口を開くとき―ゲーテの琥珀に閉じ込められていたのは、アリではなく私たちの注意だった

見終えたはずの標本が、もう一度口を開くとき―ゲーテの琥珀に閉じ込められていたのは、アリではなく私たちの注意だった

  ドイツ中部の町ワイマールにある旧邸宅。 その廊下の一角に、長いあいだ動かされることのなかった木製のキャビネットがあります。 引き出しには、石や鉱物、植物片が詰め込まれ、数えれば一万八千点を超える自然物が収められていま…
何日先の天気を予測できるようになったのか―ECMWFの中期予報50年史と、衛星観測・アンサンブル・AI予報システム

何日先の天気を予測できるようになったのか―ECMWFの中期予報50年史と、衛星観測・アンサンブル・AI予報システム

  台風の季節になると、かつては気象庁が発表する情報が、ほぼ唯一の手がかりでした。 ところが最近では、スマートフォンのアプリを開けば、1週間単位で先を見通す台風の予想進路図を確認することができます。 複数の数値予報モデル…