できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路

できる日は、なぜ突然やってくるのか―小脳で見つかった、学習の直前に抑制をゆるめる回路

  ギターを練習していて、何日も引っかかっていたフレーズが、ふいに弾ける瞬間があります。 指が勝手に動き出す。 昨日まで転んでいた自転車を、ある朝すっと乗りこなしている。 けれど、その「できた」は脆い。 どうやって弾いた…
時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究

時間は、秒ではなく切れ目で残る―音の切り替わりで32.5秒が伸びた、ドーパミン系とまばたきの研究

  二つの画像を見せられ、「この間にどれくらい時間が経っていたか」を問われます。 客観的な時間は、どちらの組み合わせも正確に32.5秒です。 それなのに、ある条件のときだけ、人はその間をより長く見積もります。 記憶の中の…
脳は、いつ変わるのだろう―12万人のデータが教えてくれた、更年期とホルモン治療の話

脳は、いつ変わるのだろう―12万人のデータが教えてくれた、更年期とホルモン治療の話

  外来で更年期を迎えた女性の話を聞いていると、「最近、自分が自分でない気がする」と言われることがあります。 理由がはっきりしない不安。 急に落ち込む気持ち。 夜中に目が覚めてしまい、そのまま眠れないこともあります。 検…
1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク

1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク

  正直な話、世の中、コーヒー擁護の論文が多すぎる気がしています。   心臓にいい、糖尿病にいい、肝臓にいい、うつにいい、死亡率を下げる―そして今度は「認知症」が対象です。   いつものことですが、半分ジョークでこう言い…
認知症は脳だけの病気ではなかった―日本データが示した「難聴」という最大リスクと14の修正可能因子

認知症は脳だけの病気ではなかった―日本データが示した「難聴」という最大リスクと14の修正可能因子

  日本では今、認知症はごく一部の人の問題ではなくなりました。 高齢者のあいだでは主要な健康課題のひとつであり、医療や介護だけでなく、社会保障や地域のあり方そのものに影響を与えています。 長寿は歓迎すべきことですが、その…
声にならない音が、身体を先に落ち着かせる―ハミングと自律神経に起きていた反応

声にならない音が、身体を先に落ち着かせる―ハミングと自律神経に起きていた反応

  気がつくと、妻はよく鼻歌を口ずさんでいます。 歌と呼ぶほど整った旋律ではなく、正体のわからないメロディに、「んー」という発声が重なっているだけのものです。 「機嫌がいいんだね」と声をかけると、妻はきょとんとした顔で「…
眠らなければ終わる夜に、なぜ目だけが冴えるのか―新奇環境で覚醒が続く理由と「初日効果」が残した回路

眠らなければ終わる夜に、なぜ目だけが冴えるのか―新奇環境で覚醒が続く理由と「初日効果」が残した回路

  出張の前泊で、慣れないホテルに泊まった夜、電気を消してからが本番になる。 明日は朝から大事な仕事がある。 失敗は許されない。 体は疲れている。 条件は揃っている。 なのに眠れない。 布団の感触も、空調の音も、いつもよ…
助ける側でいられる時間―援助行動と認知機能、20年追跡研究が見た人生後半の速度

助ける側でいられる時間―援助行動と認知機能、20年追跡研究が見た人生後半の速度

  役所の机に向かい、誰にも気づかれない仕事を淡々とこなす日々。 黒澤明監督の映画『生きる』は、そんな時間の中で、人がいつのまにか社会から“透明”になっていく感覚を描いていました。 主人公を動かしたのは、病そのものではな…
脳の健康には、チェダーチーズの方が良いのか―25年追跡研究が問い直す「脂肪は敵」

脳の健康には、チェダーチーズの方が良いのか―25年追跡研究が問い直す「脂肪は敵」

  栄養指導というと、私たち医療者は長いあいだ、決まった言葉を繰り返してきました。 「塩分は控えめに」「脂肪はできるだけ避けましょう」。 とくに心臓や血管を守るという目的のもとでは、動物性の脂肪、とりわけ飽和脂肪酸を遠ざ…
いつ動くかが脳を守る―フラミンガム研究が描く「中年期・老年期の運動」と認知症リスク

いつ動くかが脳を守る―フラミンガム研究が描く「中年期・老年期の運動」と認知症リスク

  映画『ファーザー』(2020年)の序盤には、不穏な静けさがあります。 さっきまでそこにあった椅子がわずかに動いていたり、娘だと思っていた人物の顔が別人のように入れ替わったり、時間の継ぎ目がどこか噛み合わない。 観客は…