時の輪郭がぼやけるとき―歳を重ねると時間があっという間に過ぎていくわけ 2025/11/10Posted in心理学, 文献, 神経科学 歳を重ねると、時間の流れが驚くほど早く感じられるものです。 心理学ではこの現象を“ジャネーの法則”と呼んでいて、人生の時間は年齢に反比例して速く感じられるとされています。 11月もこの時期になると、気づけば年の瀬が迫…
ウイルスの再活性化が脳に刻む影―帯状疱疹と認知症の意外な関係 2025/10/24Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 先日、帯状疱疹でひどい痛みに悩む患者さんを診察しました。 電気が走るような、焼けるような痛みが昼夜を問わず続くと言います。 この病気は、多くの人が子供の頃にかかる水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が、神経…
尿検査が示す未来のサイン―アルブミン尿と認知症の意外なつながり 2025/10/19Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学, 腎臓のこと 日々の診療で「タンパク尿が出ていますね」と患者さんにお伝えする場面は少なくありません。 タンパク尿が心臓病や脳卒中のリスクを高めることはよく知られていて、そういう時は食事や血圧の管理についてお話することになります。 …
赤ちゃんの脳は4ヘルツで動く―視覚の発達が奏でるリズム 2025/10/13Posted in文献, 神経科学 ずっと遠い昔のころ。 娘が生後8か月を迎えたころ、カラフルなモビールをじっと見つめながら、リズムを刻むように手足を動かしていたことを思い出します。 娘はあの揺れに“音楽的な秩序”を感じているに違いない、まさか天才か?…
家事を続けることが“脳トレ”となる?―認知機能を保つヒント 2025/10/12Posted in文献, 日常, 神経科学 映画『ペコロスの母に会いに行く』(2013年)を初めて観たとき、胸が締めつけられる思いがしました。 主人公の母親が、少しずつ料理の手順を忘れ、掃除や片付けがうまくできなくなっていく。 その姿を見守る息子の眼差しには、…
瞑想は高齢者の眠りをどう変えるのか 2025/09/21Posted inマインドフルネス, 健康, 文献, 神経科学 夜中に目が覚めてしまい、そこからなかなか寝付けない。 頭の中で今日あった後悔やこれからの心配がぐるぐると回り始め、眠りに戻れなくなることがあります。 そんな時、「無」になれたらどんなに楽だろう。 この「心を無にする」…
音楽が脳を指揮する ― リズムと脳波、2つの周波数の共鳴 2025/09/13Posted in文献, 神経科学, 音楽 私は、いつもギター教室の先生に「リズムが大事!」と注意されます。 この歳になって痛感するのは、ギターの腕前よりもリズム感のなさです。 そんなリズム音痴の私でも(正確であるかは置いといて)ドラムがリズムを刻み続けると、…
朝のコーヒーは、なぜ特別なのか? ―カフェインと気分の仕組み 2025/09/02Posted in心理学, 文献, 日常, 神経科学 朝のコーヒーを飲まないと一日が始まらない―そう感じる人は少なくありません。 私自身もその一人で、「コーヒー中毒」と言われても、あえて否定はしません。 紅茶やエナジードリンクであっても事情は同じです。 カフェインが脳に…
アルツハイマー病リスクを減らす―ウォーキングと食生活の影響 2025/08/19Posted in健康, 文献, 神経科学 「最近、物忘れが増えた気がする…年のせいかな?」 そんな話をした翌日、スーパーで同じ商品を3回カゴに入れていたら、本人は笑うどころじゃありません。 その瞬間、頭の中でサスペンスBGMが流れ出し、「これって大丈夫?」と…
脳のエネルギー源はブドウ糖だけじゃなかった―みえなかった脂肪滴 2025/08/09Posted in文献, 神経科学 「私たちの脳はブドウ糖だけをエネルギー源とする。」 これは教科書にある常識です。 しかし、ニューヨークにあるワイル・コーネル医科大学の研究室で投げかけられた素朴な疑問が、この長年の定説に波紋を広げました。 「体の他の…
口唇ヘルペスがアルツハイマー病のリスクを高める?―意外なウイルスの素顔 2025/08/08Posted in医療全般, 文献, 神経科学 唇の端にできる、小さな水ぶくれ。 多くの人が、単に「ヘルペス」と呼びますが、正式には「口唇ヘルペス」、原因は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の仕業です。 厄介ですが、たいていは数日で治まるため、それほど深刻に考…
脳は眠りながらも音を聞いている―睡眠中の情報処理 2025/08/06Posted in文献, 日常, 神経科学 昭和の時代、学習雑誌の裏表紙あたりで、私たちの心をくすぐる広告をよく見かけたものです。 その名も「睡眠学習まくら」。 枕にスピーカーが内蔵されていて、眠っている間に学習テープを流せば、その内容が頭に入るという、夢のよ…
熱中症と認知症リスク—暑さが脳に及ぼす長期的影響 2025/08/03Posted in健康, 医療全般, 文献, 神経科学 2002年公開の映画『ジェリー』で、ガス・ヴァン・サント監督は、ただひたすら砂漠をさまよう二人の若者の姿を描いています。 どちらも名前は「ジェリー」。特別なストーリーはなく、乾いた大地を延々と歩き続ける二人の姿と、と…
脳の始まり、脳の終り—タウタンパク質の二つの顔 2025/07/28Posted in文献, 神経科学 人間の脳には不思議がたくさん詰まっています。 アルツハイマー病認知症という言葉を聞けば、多くの人が「タウタンパク質」を連想するかもしれませんね。 実際、タウタンパク質はこの病気の病態に深く関わっています。 今回取り上…
スマホでプロファイルされる私たち―デジタル精神医学の応用 2025/07/26Posted in心理学, 文献, 神経科学 私たちは一日に何度スマホをチェックしているでしょう。 時間を確認したり、通知を見たり、何気なく画面を点けたり消したり。 恐らく、朝起きて最初に触ってしまうのはスマホでしょうし、寝床で最後まで触れているのもスマホでしょ…
とろけるオムライスと、冴えわたる脳の話―卵が認知症予防に貢献 2025/07/23Posted in健康, 文献, 日常, 神経科学 伊丹十三監督の映画『タンポポ』はご存知の方も多いでしょう。 この映画はラーメンをテーマにした作品ですが、強烈な印象を残しているのが作中に登場する「オムライス」です。忍び込んだ厨房で、ホームレスの男(演じているのは、あ…
だから、年をとってから楽器をやる 2025/07/11Posted in健康, 文献, 神経科学, 音楽 歳を重ねてから何か新しいことに手を出すというのは、なかなか骨が折れるものです。 特に音楽なんかは若いうちに始めなければ遅い、なんて言われますが、本当にそうでしょうか。 2016年公開の映画『オケ老人!』では、若い…
アミロイド仮説の32年―アルツハイマー病研究のゆくえ 2025/07/05Posted in文献, 神経科学 1992年、アルツハイマー病の研究に「アミロイドカスケード仮説」という考えが登場しました。 なんとも分かりやすくて、一見すると納得できそうな仮説でした。 曰く、「アミロイドβとかいう小さなペプチドが脳内で悪さをして、…
ストレスは私たちの体内時計も乱してしまう 2025/06/27Posted in健康, 文献, 日常, 神経科学 私たちの体内時計(概日リズム)は日々、光を基準にして正確なリズムを刻んでいます。 つまり、朝に浴びた太陽の光が、私たちの1日の基準点をリセットしてくれるのです。 時計といってもチクタク音を立てるわけではなく、脳の視交…
ただの不眠対策ではない?アルツハイマー病を予防? 2025/06/21Posted in医療全般, 文献, 神経科学 「前の先生は睡眠薬をすぐに出してくれたのに。」 私は外来でこう言われることがあります。 多くの医師は不眠の訴えに対して睡眠薬を比較的すぐに処方するかもしれませんが、私はできる限りそれを避けています。 特に高齢者の場合…
魔法はなくても希望はある―天然抽出物が認知機能を改善する? 2025/06/18Posted in健康, 文献, 神経科学 頭をすっきりさせたい。記憶力をどうにか向上させたい。 そんなふうに願うことは、ごく自然な感情です。 ドラッグストアの棚やインターネットのページを眺めてみると、認知機能の助けになるという健康食品、特に天然由来のサプリメ…
エジソン流まどろみ術―浅い眠りにひそむ創造のスイートスポット 2025/06/16Posted in文献, 日常, 神経科学 目を閉じてぼんやりとまどろむ。 まぶたの裏に浮かぶのは曖昧な映像や奇妙なアイデア。 実は、このぼんやりした状態がクリエイティブな発想の宝庫だという、ちょっと魅力的な研究があります。 発明家トーマス・エジソンは、う…
昔と今、認知症のなりやすさに変化? 2025/06/13Posted in医療全般, 文献, 神経科学 歳をとるということは、ヴィンテージワインが静かに熟成していくようなものかもしれません。 ただ、ときにはそのコルクが予想よりも早く緩んでしまうように、人生にも予想外のことが起きてしまうことがあります。 そんなとき、「認…
ショート動画の迷宮―その入り口は、意外と心の奥深くにあるのかもしれない 2025/06/09Posted in心理学, 文献, 神経科学 気がつくと、いつの間にか時間が溶けてしまっている。 スマートフォンの画面に映るショート動画を無心に眺めながら、ふとそんな感覚に襲われます。 手軽さと刺激が妙に心地よく、指先は画面を滑るように次の動画を探し続けます。 …
コーヒーを飲むのは、目覚めの儀式?科学が探る本当の理由 2025/06/03Posted in文献, 日常, 神経科学 コーヒーを飲む人は世界中にあふれています。 毎朝のコーヒーがないと頭が目覚めない、という人も少なくないでしょう。そういう私もコーヒー依存を自称しています。 では、実際にコーヒーに含まれるカフェインが私たちを目覚めさせ…