緑が支える心のバランス―室内の小さな自然がつくるストレスの緩衝帯 2025/11/30Posted in心理学, 文献, 自然環境 映画『サンシャイン2057』には、宇宙船イカロス2号という閉ざされた人工空間が登場します。 その船内で唯一“生命の色”を放つのが、「オキシジェン・ガーデン」と呼ばれる緑の部屋でした。 金属と機械音に満ちた環境のなかで…
動き続けるバランス―夫婦の“収入と身体”がつくる交換の力学 2025/11/29Posted in心理学, 文献, 日常 映画『アメリカン・ビューティー』(1999)には、夫婦の経済的な力関係の均衡がきしみ始める瞬間が描かれています。 仕事に押しつぶされかけたレスターは、成功を積み上げる妻キャロリンの姿を前に、自らの価値が目に見えてしぼ…
予測の影が立ち上がるとき―既視感が生む“未来を知る気がする”錯覚 2025/11/28Posted in心理学, 文献 1999年公開の映画『マトリックス』では、主人公が同じ黒猫を二度見る場面が描かれています。 その一瞬のズレが世界の裏側を示す“兆し”のように感じられ、観客の胸にざらりとした既視感が残ります。 日常でも、同じように「こ…
いつ動くかが脳を守る―フラミンガム研究が描く「中年期・老年期の運動」と認知症リスク 2025/11/27Posted in健康, 文献, 神経科学 映画『ファーザー』(2020年)の序盤には、不穏な静けさがあります。 さっきまでそこにあった椅子がわずかに動いていたり、娘だと思っていた人物の顔が別人のように入れ替わったり、時間の継ぎ目がどこか噛み合わない。 観客は…
脳を動かす刺激のかけ方―短い全力と長い強度のあいだ 2025/11/26Posted inスポーツ, 健康, 文献, 神経科学 高強度インターバルトレーニング(HIIT)は「心臓に効く運動」として語られることが多いのですが、最近は「脳にもいい」という話題が増えています。 短時間で強い負荷をかける運動が気分や集中力を整えてくれるなら、文字通りの…
治療方針は“数”に揺れる―選択肢の増減が医師をどう動かすのか 2025/11/25Posted in医療全般, 文献 実際の診療では、同じ症例でも医師によって治療の選び方が揺れるものです。 腰痛の患者さんにオピオイドを続ける医師もいれば、別の薬へ切り替える医師もいます。 股関節痛の患者さんをすぐに手術に紹介する診療所もあれば、薬物治…
心房細動とコーヒー :「やめる」より「いつもの一杯」を続ける選択 2025/11/24Posted in健康, 医療全般, 文献 心房細動の患者さんから、「先生、コーヒーはもう一生やめた方がいいですよね?」と訊かれることがあります。 動悸が出た日の朝にコーヒーを飲んでいたという記憶が重なると、「これが悪かった」と感じても不思議ではありません。 …
慢性腎臓病(CKD)と痛み止め―ロキソプロフェンなどの“NSAIDs”をどう考えればいいのか 2025/11/23Posted in医療全般, 文献, 腎臓のこと 慢性腎臓病(CKD)の人の外来では、「腎臓に悪いと聞いたので、痛み止めは飲まないようにしています」と話す人が多くいます。 たしかにロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDs(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬…
カメレオンの眼はなぜ別々に動くのか――視神経に仕込まれた“たるみ”の進化 2025/11/22Posted in文献, 生物 昭和40年男の自分にとって、カメレオンといえば仮面ライダー第6話の「カメレオン男」でした。 体色を変え、壁をよじ登り、左右に飛び出した眼球がぎょろりと動く。 あの怪人像が、幼い感覚を今もどこかで支配している。 しかし…
その翼竜は海を濾していた―捕食者の吐き戻しが語る進化の系譜 2025/11/21Posted in文献, 生物 映画『ジュラシック・ワールド』で、翼竜の大群が観光客に襲いかかるシーンは衝撃的でした。 空から急降下し、鋭い嘴(くちばし)で人を捕らえるあの獰猛(どうもう)な姿は、多くの人にとって「翼竜」のイメージそのものかもしれま…
見た目は「肥満」でなくても。身長と比べた「お腹」が教える動脈硬化のリスク 2025/11/20Posted in健康, 医療全般, 文献 健康診断の時、お腹周りにメジャーが巻かれる瞬間は、少し緊張するものです。 思わず息を吸い込んでお腹を引っ込めたくなりますが、それは反則なので我慢します。 数値を聞いてホッとしたり、来年こそはと心に誓ったり。 その…
勝手にマジシャン紹介:「魔術の皇帝」―P.C.ソーカ 2025/11/19Posted inマジック, 勝手にマジシャン・シリーズ 私が好きな、いわゆる“ペット・マジック”と呼ばれるものは、他の愛好家たちと同じく、扱いやすいクロースアップマジックです。カード、コイン、ロープ。 手のひらの中に小さな宇宙が宿る感覚がたまらない。 けれども、やはり憧れ…
「折れない心」と不安のあいだ―「ポジティブ・シンキング」の逆説 2025/11/18Posted in心理学, 文献 若い学生さんたちや、あるいは患者さんを見ていても感じることですが、同じ困難に直面しても、すぐに立ち直る人と、深く落ち込んでしまう人がいます。 特に大学入学のような新しい環境では、人前での発表や新しい人間関係に強い不安…
空からの警鐘―衛星が捉えた地震の「息づかい」 2025/11/17Posted in文献, 科学, 自然環境 忘れもしない、あの記憶。 テレビの画面に目が離せず、ただ事態が収まるのを待つしかない無力感。 地震大国に住む私たちにとって、地震や津波は日常と隣り合わせの現象です。 もし、ほんの数日でも前に「何か」が分かれば。そんな…
ウニは脳がないのではなく、脳だけを持っている 2025/11/16Posted in文献, 生物, 科学 グレッグ・イーガンの長編『順列都市』では、人間の意識がデータとしてスキャンされ、コンピュータ上で「コピー」として生き続ける未来が描かれます。 そこでは、私たちの「自己」や「意識」は、頭蓋の中の脳という器官にすべてが収…
魚油サプリメント―オメガ3が透析患者の心血管リスクを減らす 2025/11/15Posted in医療全般, 文献, 透析関連 透析クリニックで日々患者さんたちと向き合っていると、多くの制約の中で真摯に治療に取り組む姿に、いつも頭が下がる思いです。 食事制限も多く、「あれもダメ、これもダメ」という指導の中で、何か一つでも「これを加えると良いか…
ランニング:走りすぎの境界―「10%の壁」が故障を招く 2025/11/14Posted inスポーツ, ランニング, 文献 最近はもっぱら朝ランを専門にしています。 湿り気を含んだ風が心地よく、走っていくうちに一日の輪郭が少しずつ見えてきます。 そして、調子のいい朝ほど、足が勝手に前へ出てしまうものです。 クリニック前の坂を上り、コンビニ…
バットマン効果―日常の「バグ」が優しさを呼び覚ます 2025/11/13Posted in心理学, 文献, 日常 私はマイカー通勤なので、ゆいレールはほとんど利用しないのですが、たまに乗るとその混み具合に驚かされます。 県民としては「利用者が増えているのは良いことだ」と安心する一方で、「空港まで立ちっぱなしは少しつらいな」と内心…
脳が歩数に応える―アルツハイマー病を遠ざける7,000歩の力 2025/11/12Posted in健康, 文献, 神経科学 外来では、ほとんど椅子に座って診療していますから、ランニングのない日は2000歩も歩いていない気がします。 案の定、スマホの歩数計の機能で調べてみると(どういう仕組みで測定しているのかわかりませんが)だいたい1500…
歩く耳―8の字歩行が明かす脳の予測的センシング 2025/11/11Posted in文献, 神経科学 ランニングをしていると、自分の足音はもちろんですが、後ろから近づいてくる他のランナーの足音もよく聞こえるものです。 ランニング中は安全のために耳を塞がない骨伝導イヤホンを愛用していますが、注意を払っているのを差し引い…
時の輪郭がぼやけるとき―歳を重ねると時間があっという間に過ぎていくわけ 2025/11/10Posted in心理学, 文献, 神経科学 歳を重ねると、時間の流れが驚くほど早く感じられるものです。 心理学ではこの現象を“ジャネーの法則”と呼んでいて、人生の時間は年齢に反比例して速く感じられるとされています。 11月もこの時期になると、気づけば年の瀬が迫…
カリウムとの静かな闘い―透析患者における新薬の挑戦 2025/11/09Posted in文献, 透析関連 通常、透析クリニックでは、月に2回、透析前の採血検査を行います。 時々、検査会社から「異常値速報」と称してFAXで通知がくると、私たちの間に緊張が走ります。 あまりにも検査結果の異常値が過ぎると、場合によっては早急な…
空の上の救急―7万件の機内医療事件が語るもの 2025/11/08Posted in医療全般, 文献 飛行機に乗るたび、心のどこかで身構えている自分がいます。 「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」という、あのアナウンス。 幸いまだその瞬間に立ち会ったことはありませんが、もし呼ばれたら、限られた医療機器で何…
父親との2週間―育休が変える家族の未来 2025/11/07Posted in心理学, 文献, 日常 私が県立中部病院の勤務医だったころ、アメリカ留学帰りの先輩の先生が「産休」はもちろん、「育児休暇」をとったというのを聞いて、素直に驚いたことがあります。 当時、管理職の外科の先生は「自分は子どもの学校行事は一度も観に…
抗加齢のトレーニングは肌も若返らせる―筋トレがもたらす「内側からの美容効果」 2025/11/06Posted inスポーツ, 健康, 文献 運動は筋肉や心臓だけでなく、肌にも良い効果がある―そんな話を聞くと、少し疑い深い気持ちが頭をもたげるのですが、世代的にはやはり興味津々の話題です。 肌の張りやくすみ具合は、食事や睡眠、紫外線の影響だけでなく、日々の活…