昆虫食は、ひとくくりにできるのか ― バッタ、コオロギ、オケラの体に残った土と草の記録

昆虫食は、ひとくくりにできるのか ― バッタ、コオロギ、オケラの体に残った土と草の記録

  昆虫食をすすめる話ではありません。 食卓にバッタやコオロギが出てきたら、箸が止まる人は少なくないはずです。 その反応は、恐れや弱さではなく、ごく自然な距離感です。 長いあいだ私たちは、虫を食べものではなく、避けるもの…
夜の森で、サンショウウオは何色だったのか ― ファイアサラマンダーの皮膚分泌物に見えた青緑の合図

夜の森で、サンショウウオは何色だったのか ― ファイアサラマンダーの皮膚分泌物に見えた青緑の合図

  ヨーロッパでよく調べられてきた両生類の一つに、ファイアサラマンダーがいます。 黒地に黄色い斑(まだら)模様を持ち、毒を持つ生きものです。 その派手な色彩は、「食べるな」と知らせる警告色の代表例として、長く教科書的に扱…
水が引いた池に、巨大生物の輪郭があった ― タイの赤い泥から見えた、恐竜世界の並び替え

水が引いた池に、巨大生物の輪郭があった ― タイの赤い泥から見えた、恐竜世界の並び替え

  乾季の池では、水位が下がると、ふだん隠れていた泥の面があらわれます。 魚の跡、割れた土、流木、小石。 そこに少しだけ違うものが混じっていても、最初はただの石に見えるかもしれません。 2016年、タイ東北部チャイヤプー…
超音波で、ウイルスは壊せるのか ― 強い衝撃ではなく、包膜に合う周波数を探した研究

超音波で、ウイルスは壊せるのか ― 強い衝撃ではなく、包膜に合う周波数を探した研究

  目に見えないウイルスに対処しようとするとき、私たちは薬や消毒、強い紫外線、熱を思い浮かべます。 物理的に「壊す」としたら、超音波洗浄機のような強い衝撃が必要でしょう。 低い周波数の超音波が水中に気泡を生み、その気泡が…
足し算ではなかった、脳 ― 哺乳類182種とAIモデルで見えた、二つの情報整理と進化の配分

足し算ではなかった、脳 ― 哺乳類182種とAIモデルで見えた、二つの情報整理と進化の配分

  脳の重さがほぼ同じなら、中のつくりも似ているはずだと考えたくなります。 ところが、夜に活動する小型のサル、フクロウザル(別名ヨザル)は脳の重さが約15グラム。 見た目はリスに似ていますが、尾が短く、ほとんど目立たない…
雨音の届く深さで、種は目を覚ます — イネ種子の発芽を早めた雨滴音と重力感知細胞

雨音の届く深さで、種は目を覚ます — イネ種子の発芽を早めた雨滴音と重力感知細胞

   海の音山の音みな春しぐれ 中川宋淵   雨が降ると、世界の音の構造が変わります。 普段は別々に聞こえていた音が、雨音という一つの層の中で重なり、海鳴りも山の響きも、春の時雨の一部として耳に届きます。 人間はその音を…
時間より速く、空間より狭く ― 石垣島のオオヒキガエルに観察された100年未満の形態分岐

時間より速く、空間より狭く ― 石垣島のオオヒキガエルに観察された100年未満の形態分岐

  進化は、長い時間と広い空間があって初めて大きく動く。 そう考えると、小さな島の路肩にいる一匹のカエルは、進化の主役には見えません。 ところが石垣島のオオヒキガエルは、その見方を崩します。 わずか十数匹から始まった集団…
一つの証拠が支えていた1億5000万年―シンクロトロン分析が崩した「最古のタコ」の年代支点

一つの証拠が支えていた1億5000万年―シンクロトロン分析が崩した「最古のタコ」の年代支点

  たった一度の遅刻で、その人のすべてをルーズだと決めてしまうことがあります。 たった一通のそっけないメールで、関係の終わりを予感してしまうこともあります。 私たちは、ひとつの断片に全体像を背負わせがちです。 欠片が小さ…
最初の一息は、一頭では始まらない―ドミニカ沖で記録されたマッコウクジラの協力出産とコーダ変化

最初の一息は、一頭では始まらない―ドミニカ沖で記録されたマッコウクジラの協力出産とコーダ変化

  水中で息を吐ききると、体はゆっくり底へ向かって引かれていきます。 プールの底で仰向けになり、遠ざかる水面を見上げたときの、あの頼りなさです。 水の中でも重力は消えません。 マッコウクジラの新生児も、生まれた瞬間からこ…
クローンは、どこまで続けられるのか―マウス20年・58世代で見えた、哺乳類の連続クローン作成の限界

クローンは、どこまで続けられるのか―マウス20年・58世代で見えた、哺乳類の連続クローン作成の限界

  クローンと聞くと、少し前までは「羊のドリー」が代表格でした。 名前だけで通じるほど有名になったのは、「同じ個体をもう一度つくれる」という事実が、それまでの生命観に大きな衝撃を与えたからです。 そこから私たちは、つい想…