歯からたどる体温 ― ティラノサウルスの36.3℃ 2026/10/01Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 ゾウの体温は約36℃で、人の平熱に近い温かさです。 ダチョウはもう少し高く、38〜40℃ほどあります。 博物館で見上げるティラノサウルスの骨格にも、かつては血が通っていました。 その巨大な体は、どれほどの温かさを保っ…
四つの足跡から ― ティラノサウルスの歩行をたどる 2026/09/26Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 雨上がりの道で、ぬかるみにうっかり足を踏み入れると、靴がぬるりと沈みます。 引き抜いたあとを見ると、靴底の模様はくっきり残っているのに、跡の縁は崩れ、くぼみが靴より広がっていることがあります。 2025年、米国ノ…
「待て」の間に ― 犬の脳波をたどる 2026/09/24Posted in文献, 生物, 神経科学 犬の目の前に、おやつが置かれました。 飼い主が「待て」と声をかけると、犬は口をつけずに待ちます。 犬が行動を抑える力は、これまで主に行動の観察から調べられてきました。 ただ、同じように待てた犬でも、それを支える脳…
仲間を助ける一匹 ― アリの救助と、脳の遺伝子発現 2026/09/11Posted in文献, 生物, 科学 アリの世界をのぞき見るとき、私たちは個体よりも集団としての動きに目を奪われがちです。 分業しながら協力して暮らすアリには、動けなくなった仲間を助ける種類もいます。 砂漠アリの一種、カタグリフィス・ニグラもその一つです…
笑い声にも土地柄 ― チンパンジーの声と育ち 2026/09/10Posted in文献, 生物 電話の向こうの語尾や抑揚に、相手が暮らしてきた土地を感じることがあります。 同じ言葉を使っていても、育った土地によって音の上がり下がりや間の取り方に違いが出るものです。 でも、笑い声となると、土地の違いをあまり感じま…
サンゴの枝のあいだ ― 魚が払う家賃 2026/09/08Posted in文献, 生物, 科学, 自然環境 子どものころ、慶良間諸島でグラスボートに乗った記憶が、今も残っています。 船底のガラス越しに見えた海底は、青緑色の光に沈んでいました。 枝分かれしたサンゴの隙間を、小さな魚の群れが出たり入ったりしていました。 魚がサ…
長寿動物のゲノムで、隣よりわずかに変わりにくかった場所 2026/08/21Posted in医療全般, 文献, 生物, 科学 長い文章を何度も書き写せば、どこかに誤字が入ります。 けれど、意味を左右する語まで、ほかの箇所と同じように変わっていくとは限りません。 生物のゲノムにも、世代を重ねる間に変化が残りやすい場所と、残りにくい場所がありま…
スズメガの翅は、においを選り分けている 2026/08/12Posted in文献, 生物, 科学 においを確かめるときには、鼻を近づけます。 鼻だけが嗅ぐための器官だからです。 昆虫で鼻にあたるのは触角で、蛾は太い触角を前に向けて花を探します。 花に来たスズメガも触角を向けていますが、止まらずに翅を打ち続けてもい…
ピーナツを分ける前に、まず抱きしめる ― 類人猿が争いをほどく方法 2026/08/10Posted in心理学, 文献, 生物, 科学 雄のチンパンジーが、別の雄を後ろから抱きしめます。 そこへ3頭目、4頭目と一頭ずつ加わり、やがてできたのは抱擁の列です。 研究者たちは、この連なりを “reassurance train”――「安心の列車」と呼びまし…
牛のげっぷは毛の根元から始まる 2026/08/07Posted in文献, 生物, 科学 牧草地で草をはむ牛の姿は、のどかな風景として思い浮かびます。 その牛のげっぷが地球の気温に関わっているという話も、どこかで耳にしたことがあるかもしれません。 牛の胃は4つの区画に分かれ、いちばん大きな第一胃(ルーメン…
丸い石と背骨の穴 ― 一頭の魚竜に残った出来事の断片 2026/08/05Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 夏休みになると、各地で「恐竜展」が開かれます。 会場には恐竜だけでなく、同じ時代の海を泳いだ魚竜の化石が並ぶこともあります。 その骨格を見れば、海を泳いでいた姿や体の大きさを思い描けます。 見つかった地層から、いつご…
鳥は飛ぶのが楽しいか? 2026/08/04Posted in文献, 生物, 科学 午後、オランダの鳥類公園で、モモイロインコの禽舎の扉が開きます。 17羽は、外へ出ても、中に残ってもかまいません。 外では約20分、飛ぶことも、芝生にまかれた種子をついばむことも、木で休むこともできます。 中に残って…
声のした方ではなく、声の向いた方へ 2026/07/27Posted in文献, 生物 台所から「そこにあるよ」と声が聞こえたとします。 姿は見えなくても、声の主がどのあたりにいるのかは、だいたいわかります。 では、物のありかまで声だけで示せるのでしょうか。 普通なら、指さしや視線が必要に思えます。 け…
南の海底のミステリーサークル ― その発見から解明への道のり 2026/07/19Posted in文献, 生物, 科学 奄美大島南部の砂に覆われた海底に、直径約2 mの円形模様があります。 中心から放射状に峰と溝が並び、峰には貝殻やサンゴ片まで置かれています。 上から見れば、作り手は完成した円を思い描き、設計図に沿って砂を刻んだように…
運動の置き土産は腸にもあった ― 動かさない筋肉を守った2つの代謝物 2026/07/18Posted in健康, 医療全般, 文献, 生物 朝のランニングを終えると、ふくらはぎは張り、息はまだ少し速く、シャツには汗が残ります。 運動の効果が生まれる場所として思い浮かぶのは、動いた筋肉や心臓、肺です。 反対に、ギプスで固定された脚の筋肉が減るのは、その脚を…
カモメにも初心者マークがあった ― 茶色い羽が伝える「まだ敵ではありません」 2026/07/13Posted in文献, 生物 若いカモメの羽は、まだらの茶色をしています。 白と灰色でくっきり整った大人の隣に立つと、その茶色はいかにも仕上がりきっていない、途中の色に見えます。 私たちはつい、この茶色を、早く抜け出すべき中途半端な時期のしるしと…
小さな鳥がシカを追い払った ― 巣を守るヤマシギの意外な防衛行動 2026/07/12Posted in文献, 生物, 科学 アメリカヤマシギという鳥がいます。 ずんぐりした体に、体に合わないほど長いくちばしをつけて、地面を踏むように上下しながら歩きます。 鳴き声は鼻にかかった短い声で、勇ましいところはあまり見当たりません。 この鳥の生き方…
「つわり」を測る試み ― マーモセットとマウスに見えた足踏みの記録 2026/07/06Posted in医療全般, 文献, 生物 つわりは、外から見えにくい不調です。 吐き気、食欲の低下、においへの敏感さ、体重の変化。本人には切実でも、周囲にはその強さがわかりにくい。 そのため、ときに「個人差」や「気の持ちよう」という言葉の棚に置かれてきました…
サメのつきあい相関図 ― オオメジロザメも、つきあう相手を選んでいた 2026/07/05Posted in文献, 生物, 科学 オオメジロザメは、危険なサメとして名前が挙がることの多い魚です。 鋭い歯を持つ大型の捕食者で、海だけでなく汽水や淡水にも入り、ときに人との事故も起こします。 群れで身を寄せ合う魚というより、単独で獲物を追う魚。 私た…
笑いは人間だけのものではなかった ― 類人猿の「ハハハ」に残る古い拍子 2026/07/03Posted in心理学, 文献, 生物 人間は「笑う動物」だと言われます。 でも、どうやら独占契約ではなかったようです。 動物園やテレビで、チンパンジーが口を開けて息をはずませている姿を見ると、私たちはつい「笑っている」と言いたくなります。 ある世代なら、…