運動は筋肉や心臓だけでなく、肌にも良い効果がある―そんな話を聞くと、少し疑い深い気持ちが頭をもたげるのですが、世代的にはやはり興味津々の話題です。
肌の張りやくすみ具合は、食事や睡眠、紫外線の影響だけでなく、日々の活動量や姿勢の違いにも現れます。
体型が生活習慣の鏡であるように、運動で「肌の質」が変わるというのであれば、それも納得します。
では、運動の種類によってその「肌の若さ」に違いは出るのでしょうか。
2023年、立命館大学とポーラ化成工業の共同研究チームが行った試験が、この疑問に答えを出しました。
対象は、普段あまり運動をしていない日本人女性61名。
16週間にわたり、半数は有酸素運動(エアロバイク)、半数はレジスタンストレーニング(筋トレ)を週2回行いました。
その結果、どちらのグループも肌の弾力性と上層真皮(しんぴ:皮膚の弾力を支える層)の構造が改善し、筋トレ群ではさらに真皮の厚みが増していたのです。
研究チームはその仕組みを探るため、被験者の血漿をヒト皮膚線維芽細胞に加える実験を行いました。
すると、運動後の血漿ではコラーゲンやヒアルロン酸、プロテオグリカン(皮膚の弾力を支える物質)を作る遺伝子の発現が高まりました。
とくに筋トレ後には、ビグリカン(BGN)という分子が増加していました。
これは真皮を厚く保つ働きを持つ重要な成分です。
さらに血中の成分解析で、筋トレによって減少する炎症性因子―CCL28、N,N-ジメチルグリシン、CXCL4―が特定されました。
これらはBGNの発現を抑える作用を持つため、減ることで結果的に真皮が厚くなるというわけです。
つまり、筋肉から分泌される「マイオカイン」や血中の炎症因子の変化が、肌の細胞へ若返りの指令を送っているのです。
この研究は、運動が「全身の抗炎症療法」として働くことを示す一例でもあります。
脂肪や血管だけでなく、肌もまた体内の炎症バランスに敏感に反応する臓器なのです。
ただし、対象は中年女性に限定されており、男女差や年齢層による影響は今後の課題です。
また、日焼けや栄養など生活要因を完全に統制することは難しいため、結果の一般化には注意が必要です。
それでも、筋トレが美容医療にも匹敵する「内側からのスキンケア」になり得るという発想は魅力的です。
運動が肌の時間を少し巻き戻す手助けをしてくれるかもしれない、そんな可能性を感じさせてくれます。
参考文献:
Nishikori S, Yasuda J, Murata K, et al. Resistance training rejuvenates aging skin by reducing circulating inflammatory factors and enhancing dermal extracellular matrices. Sci Rep. 2023;13(1):10214. Published 2023 Jun 23. doi:10.1038/s41598-023-37207-9

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
