子どものころ、ファミコンの電源を切るように言われると、いつも名残惜しくて「あと5分だけ」と懇願した記憶があります。
大人になった今でも、仕事の合間にSwitchを起動してティアキンでライネルを倒し切ると、不思議と気持ちがすっきりします。
けれど、ふと疑問に思うのです。
ゲームで過ごす時間は、心の健康に本当に影響しているのでしょうか。
オックスフォード大学の研究チームは、703人のニンテンドーSwitchプレイヤーに協力してもらい、任天堂から提供された実際のプレイ記録―総計14万時間以上にも及ぶ膨大なデータ―と、人生満足度や幸福感、抑うつ症状といった心理的健康を測定するアンケート結果を突き合わせて分析しました。
これまで多くの研究が「特定の1つのゲーム」に限られていたのに対し、この調査は150本ものタイトルを横断的に扱った点で際立っています。
意外にも、プレイ時間が長い人ほど幸福という単純な図式は成り立ちませんでした。
過去2週間や1年といったスパンで見ても、遊ぶ時間の長さと幸福度には明確な関連が見つからなかったのです。
むしろ注目されたのは、プレイヤーが「ゲームが自分の生活にどれだけ良い影響を与えているか」をどう感じているかでした。
研究ではこれを「ゲームライフ・フィット(生活との調和度)」と呼び、ゲームが仕事や人間関係、感情の安定などを支えてくれていると感じる人ほど、心の健康状態が良好でした。
この発見は、「食事の量」よりも「味わい方」が大事なのと似ています。
どんなに短い時間でも、自分の気分をリセットしたり、創造的な刺激を得たりできるなら、それは心にとって十分な栄養になるのでしょう。
もちろん、この研究はアメリカの成人を対象にしたもので、若年層や他の文化圏でも同じ傾向が見られるかはまだ分かりません。
また、データは任天堂の自社タイトルに限定されており、他のプラットフォームのユーザーでは違う結果が得られる可能性もあります。
仕事帰りの夜、Switchの電源を入れるとき、「今日もがんばった自分へのごほうび」として1ステージだけ遊ぶ。
そんな小さな時間が、日々の心を整えるリズムになるのかもしれません。
ゲームの本当の価値は、時間の長さではなく、生活の中でそれがどんな意味を持つかにあるようです。
参考文献:
Ballou N, Vuorre M, Hakman T, Magnusson K, Przybylski AK. Perceived value of video games, but not hours played, predicts mental well-being in casual adult Nintendo players. R Soc Open Sci. 2025;12(3):241174. Published 2025 Mar 12. doi:10.1098/rsos.241174

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
