尿酸といえば、健診で必ず注意される「悪者」の代表格です。
痛風の原因として恐れられ、プリン体と聞けばすぐに身構えてしまう人もいます。
数値がわずかに上がっただけで、食事や飲酒を振り返ってため息をついた経験は、多くの人が共有しているはずです。
ところが、この“悪者”にはもう一つの顔があります。
体の中で発生する活性酸素を抑え、細胞を守る働きを持っているのです。
外から見れば問題児なのに、内側では盾を構えている。
この矛盾した存在感が、年齢とともに弱りやすい体の機能にどう関わるのかを探ったのが今回の研究です。
筋力は、生活の質と密接につながる土台のような存在です。
握力が弱くなる、いすから立つ動作が遅くなるといった変化は、転倒や体調悪化の前触れになることがあります。
筋肉は酸化ストレスに影響されやすいため、それを抑える働きを持つ尿酸とどのように関連するのかは以前から注目されてきました。
ただ、尿酸は多すぎれば炎症を生み、痛風や代謝異常へ向かうため、その働きは単純には説明できません。
今回の研究では、中国の中高年を対象に、尿酸と筋力のつながりが検討されました。
握力といす立ち上がり動作を筋力の指標とし、生活習慣や血液検査の項目を慎重に調整したうえで、尿酸との関係を分析しています。
さらに数年の時間の流れを追い、尿酸の変化が筋力に先んじて影響するのか、逆なのかを見極めようとしています。
尿酸が低めの人たちは、握力が弱く、立ち上がる動作もゆっくりになる傾向がありました。
対照的に、正常範囲の中でやや高めの尿酸を持つ人たちは、握力がわずかに強く、立ち上がりも軽くこなせていました。
尿酸が1 mg/dL高いと、握力が少し強く、立ち上がり動作は短い時間で済むという傾向が重なっています。
ただし、この関係は高尿酸血症の領域に入るとほぼ失われていました。
筋力の底上げにつながるのは、あくまで健康的な範囲に収まる尿酸だけです。
数年を追った解析では、尿酸がやや高めの状態にある人ほど、その後の筋力が緩やかに維持されていました。
一方で、筋力が高い人ほど尿酸が上がるという方向の関係は見られませんでした。
尿酸から筋力へ向かう“片方向のつながり”だけが支えられていたことになります。
尿酸の抗酸化作用は、筋肉を支える細胞を守る働きとして理解しやすい一面です。
ただし、尿酸が増えすぎれば炎症に傾き、筋肉にとって負担となる傾向もあります。
今回の研究は、尿酸に“ちょうどよい領域”があるという感覚を裏付ける内容になっています。
もちろん、観察研究であるため、食事や運動、薬剤の影響を完全に取り切れているわけではなく、中国の中高年に限られたデータが他の地域にもそのまま当てはまるとは言えません。
それでも、尿酸という一つの検査値が、痛風や生活習慣病だけでなく、加齢とともに保ちたい体の力強さにも関わる可能性は、健康のとらえ方に新たな視点をもたらしてくれます。
極端に下げるか上げるかではなく、体が自然に落ち着こうとする高さを見極める姿勢が、日々の生活で大切だということですね。
参考文献:
Huang, Y., Liu, C., Pu, H. et al. Temporal relationship between serum uric acid and muscle strength: a cross-sectional and longitudinal study of middle-aged and older adults. Sci Rep (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-29832-3

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
