四季をめぐるネズミの「おしゃべり」―声でつながる社会の仕組み

四季をめぐるネズミの「おしゃべり」―声でつながる社会の仕組み

 

私がイメージするネズミのコミュニティと言えば、なんといっても名作アニメ『ガンバの冒険』です。

ガンバとその仲間たちは困難を乗り越えながら、力を合わせて冒険を繰り広げていきます。

そこには、実験室のケージを回る小さなネズミとはひと味違う、活き活きとした姿が描かれています。

 

実は、スイスの田園地帯にある納屋で10年以上も観察された野生のネズミたちの暮らしを調べてみると、現実のネズミの社会もまた興味深いことがわかりました。

 

ネズミたちは、人間には聞こえない超音波と、私たちの耳にも聞こえる「チューチュー」という二種類の声を使ってコミュニケーションをとっています。

研究チームは、それらの鳴き声を録音し、どんな状況で使われているのかを詳しく分析しました。

すると、これらの声が一年を通じて一定ではなく、季節によってその頻度や使われ方が変化することが明らかになったのです。

 

春から夏にかけて、ネズミたちの鳴き声は特に活発になります。

この時期は子ネズミが生まれる季節。子育てのためか、鳴き声の頻度は他の季節に比べて圧倒的に多くなります。

また、巣箱に新しくネズミが出入りする際にも頻繁に声が上がります。

特に春は、オスのネズミが巣に出入りする時に特徴的な鳴き声を発することが多く、社会的な交流や競争を伝えている可能性があります。

 

一方、秋から冬にかけては状況が少し変わります。

この時期は群れが比較的大きく安定し、新しいメンバーの入れ替わりが少なくなります。

そのためか、ネズミたちの「おしゃべり」は控えめになります。

秋冬の鳴き声が比較的静かであることから、季節の変化とネズミの社会的な行動との密接な関係が見てとれます。

 

さらに興味深いのは、ネズミたちが出す二種類の鳴き声―人間に聞こえるチューチュー声と超音波の鳴き声―が、しばしば同時に使われるという点です。

このことから、ネズミはさまざまな情報を伝えるために、どうも異なるタイプの声を組み合わせているようです。

 

また、よく声を交わすネズミ同士は、その後も一緒に過ごす時間が長くなるという傾向が確認されました。

ネズミたちもコミュニケーションを通して社会的なつながりを強めているのでしょう。

 

小さなネズミの季節ごとのおしゃべりからは、私たちが見過ごしてしまいそうな、動物たちの豊かな社会生活が垣間見えてきます。

そこには、『ガンバの冒険』のようなワクワクするような冒険譚が繰り広げられているのかも知れませんね。

 

参考文献:

Jourjine N, Goedecker C, König B, Lindholm AK. Vocal communication is seasonal in social groups of wild, free-living house mice. Proc Biol Sci. 2025;292(2049):20250995. doi:10.1098/rspb.2025.0995

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。