「自分のものだけ、許される」―嫌悪は“におい”ではなく、“境界”を嗅いでいる 2026/03/03Posted in心理学, 文献, 日常 他人のおならの匂いは耐えがたいのに、自分のそれはなぜかそこまで気にならない。 この非対称は笑い話のようでいて、妙に引っかかります。 刺激は同じはずなのに、反応が違う。 私たちは本当に匂いに反応しているのでしょうか。 …
食べる回数は、体を変えるのか―3食か、こまめに分けるか。研究が見た「空腹」とのつきあい方 2026/03/02Posted in健康, 文献, 日常 昼前になると、少しそわそわします。 お腹が鳴る。集中力が落ちる。イライラする。 私たちはその感覚を「よくないもの」だと思いがちです。 だから、なるべく空腹にならないように食べます。 3食きちんと。あるいは2時間おきに…
先延ばしにも、意味があるのかもしれない―成人237人が示した「すぐに答えを出さない力」 2026/03/01Posted in心理学, 文献 やらなければいけないことがあるのに、なぜか手をつけない。 机に向かっているのに、別のことを考えている。 あとでやろう、と言いながら時間が過ぎていく。 そんな時間を、私たちは「無駄にしてしまった時間」と呼びます。 …
足りない重さの正体―ダークマターは“止まらなかった宇宙”だったのか 2026/02/28Posted in文献, 科学 夜空の星を見ていると、宇宙は光で満ちているように感じます。 けれど、星や銀河の動きを計算すると、見えているものだけでは重さが足りません。 その足りない重さとは、いったい何なのでしょうか。 見えない星でしょうか…
砂の海に立つ、極彩色の狩人―内陸の川辺で進化した新種スピノサウルス 2026/02/27Posted in文献, 歴史, 生物, 科学 砂漠の真ん中で日が沈みかけていました。 発電は太陽光だけ。 作業時間はあとわずかです。 研究者たちは一台のノートパソコンを囲んでいました。 画面には、砂の表面から拾い集めた歯と顎の破片をCTスキャン(三次元的に内部構…
脳は、いつ変わるのだろう―12万人のデータが教えてくれた、更年期とホルモン治療の話 2026/02/26Posted in健康, 文献, 神経科学 外来で更年期を迎えた女性の話を聞いていると、「最近、自分が自分でない気がする」と言われることがあります。 理由がはっきりしない不安。 急に落ち込む気持ち。 夜中に目が覚めてしまい、そのまま眠れないこともあります。 検…
量子力学は、自分の謎をほどきはじめた―100年の測定問題に光 2026/02/25Posted in文献, 科学 机の上のりんごは、そこにあります。 赤くて、丸くて、触れば確かな手ざわりがある。 誰が見ても、同じ場所にあるとわかる。 世界は一つで、はっきりしている。 私たちは疑いなく、そう思っています。 ところが、物をとても…
身体は「一つの得意技」だけでは足りない―運動の多様性と死亡リスク 2026/02/24Posted inスポーツ, 健康, 医療全般, 文献 大人になると、運動にも肩書きが生まれます。 私は走る人。 僕はジムに行く人。 同じ時間に同じことを繰り返せば、それは習慣となり、生活は整います。 迷いが減り、管理している感覚も得られます。 けれど、整っていることと、…
1日2~3杯のコーヒーが記憶を未来に届けてくれる―13万人・43年追跡が測った認知症リスク 2026/02/23Posted in健康, 医療全般, 文献, 日常, 神経科学 正直な話、世の中、コーヒー擁護の論文が多すぎる気がしています。 心臓にいい、糖尿病にいい、肝臓にいい、うつにいい、死亡率を下げる―そして今度は「認知症」が対象です。 いつものことですが、半分ジョークでこう言い…
認知症は脳だけの病気ではなかった―日本データが示した「難聴」という最大リスクと14の修正可能因子 2026/02/22Posted in医療全般, 文献, 神経科学 日本では今、認知症はごく一部の人の問題ではなくなりました。 高齢者のあいだでは主要な健康課題のひとつであり、医療や介護だけでなく、社会保障や地域のあり方そのものに影響を与えています。 長寿は歓迎すべきことですが、その…
夜のスマホは、脳を覚醒させているのか―心拍データが映した、子どもたちの夜 2026/02/21Posted in健康, 文献, 神経科学 夜、布団に入り、顔のすぐ横にスマートフォンの光が浮かぶ。 部屋は暗く、体は横たわっているのに、親指だけが静かに画面を動かしている。 こうした光景を前に、「寝る前のスマホはよくない」と言われることは少なくありません。 …
傷は、どこで最初に気づかれるのか―マクロファージ核が読み取る“形”の変化と即時血管応答 2026/02/20Posted in医療全般, 文献, 生物, 科学 「そこ、耳の後ろ、少し血が出てるよ」 そう言われて、はじめて触れてみる。 自分ではまったく気づいていなかったのに、指先にわずかな湿り気が残る。 痛みは、そのあとから追いついてくる。 異変は、自覚よりも先に、どこか…
脳トレ、やり方次第で未来は変わる?―20年追跡で見えた認知症診断の違い 2026/02/19Posted in健康, 文献, 神経科学 かつて「脳トレ」という言葉が、テレビや書店を埋めていた時期がありました。 計算問題を解き、漢字を思い出し、短時間で正解数を競う。 家庭の引き出しのどこかに、あの頃のゲーム機やソフトが残っているかもしれません。 やがて…
余裕がないと、人はやさしくなる?―環境の「豊かさ」が変える、私たちの判断 2026/02/18Posted in心理学, 文献 私たちは、心の余裕と懐の余裕は比例すると、どこかで信じています。 お金や時間にゆとりがあれば、人は穏やかで寛大になる。 逆に、追い詰められれば、他人どころではなくなる。 理屈でなく、それが人間なのだと思っています。 …
孫の世話は、高齢者の脳の健康につながる―祖父母の育児参加と認知機能を調べた心理学研究 2026/02/17Posted in健康, 心理学, 文献 「孫はかわいいけれど、1日ずっと一緒に過ごすのは疲れる」と、母はよく言っていました。 体力的な理由だけではなく、気持ちのほうが先に疲れるのだそうです。 質問に答え、様子をうかがい、先回りして動く。 その積み重ねが、あ…
失敗の処方箋―情動調節と目標への再コミットメントを巡る分析 2026/02/16Posted in心理学, 文献 若いころ、成功哲学や自己啓発書を手当たり次第に読んでいた時期がありました。 誰の言葉だったかは思い出せませんが、「諦める一歩先に必ず宝がある」という一文は、今も胸に残っています。 その言葉と重なるように思い浮かぶ…
体が先に反応した日―サッカー決勝戦と、からだに現れた高ぶりの記録 2026/02/15Posted inスポーツ, 心理学, 文献 スタジアムの歓声、張り詰めた空気、そして勝敗が決した瞬間の爆発的な感情。 スポーツ観戦が私たちの心を揺さぶるのは自明のことです。 そのとき私たちの「体」の内部では一体何が起きているのでしょうか。 ドイツの研究チームが…
声にならない音が、身体を先に落ち着かせる―ハミングと自律神経に起きていた反応 2026/02/14Posted in心理学, 文献, 神経科学 気がつくと、妻はよく鼻歌を口ずさんでいます。 歌と呼ぶほど整った旋律ではなく、正体のわからないメロディに、「んー」という発声が重なっているだけのものです。 「機嫌がいいんだね」と声をかけると、妻はきょとんとした顔で「…
眠らなければ終わる夜に、なぜ目だけが冴えるのか―新奇環境で覚醒が続く理由と「初日効果」が残した回路 2026/02/13Posted in文献, 日常, 神経科学 出張の前泊で、慣れないホテルに泊まった夜、電気を消してからが本番になる。 明日は朝から大事な仕事がある。 失敗は許されない。 体は疲れている。 条件は揃っている。 なのに眠れない。 布団の感触も、空調の音も、いつもよ…
吐き出すという判断―猫のペリットと、初期ペルム紀の捕食者が共有していた身体の知恵 2026/02/12Posted in文献, 歴史, 生物 私たちが「吐しゃ物」と聞いてまず思い浮かべるのは、猫が毛や骨をまとめて吐き出すペリットかもしれません。 あれは体調不良でもなんでもなく、消化できないものを一度体内で集め、途中で外に出す、ごく普通の生理反応として知られ…
あくびは失礼か、それとも必要か―マナーの裏で、身体が先に実行していること 2026/02/11Posted in文献, 日常, 神経科学 会議中、ふいに口が開きそうになり、慌ててあくびを噛み殺す。 喉の奥がきゅっと引きつり、首の中で何かが途中停止したような感触が残る。 多くの社会人にとって、この一連の動作は「大人として正しい振る舞い」です。 あくびは集…
見終えたはずの標本が、もう一度口を開くとき―ゲーテの琥珀に閉じ込められていたのは、アリではなく私たちの注意だった 2026/02/10Posted in文献, 生物, 科学 ドイツ中部の町ワイマールにある旧邸宅。 その廊下の一角に、長いあいだ動かされることのなかった木製のキャビネットがあります。 引き出しには、石や鉱物、植物片が詰め込まれ、数えれば一万八千点を超える自然物が収められていま…
体は、食べた瞬間には変わらない―オーツ麦が残した“時間差の反応”を、腸内で読み解く 2026/02/09Posted in健康, 文献, 日常 健康食品には流行があります。 ファッションと同じで、ある時期に評価が高まり、しばらくすると別のものに置き換わっていく。 その流れの中で、私たち自身も、意識するほどではなく、流行に乗ったり降りたりを繰り返しています。 …
読む気は、いつどこで失われるのか―登場人物の性別をめぐる誤解 2026/02/08Posted in文献, 物語, 読書 ミステリーもSFも、興味があれば手に取っている。 話題にあがれば読んでいますし、読むか読まないかを迷った記憶は、ほとんどありません。 そんな私には、登場人物の性別が読書の障壁になるという発想も、あまりありませんでした…
円と四角は、なぜ一つの絵に収まったのか―《ウィトルウィウス的人体図》を読み直す 2026/02/07Posted in数学, 文献, 日常, 歴史 十五世紀の終わり、レオナルド・ダ・ヴィンチは一枚の素描を描きました。 円と正方形の中に、手足を大きく広げた人の体が重ねて描かれているその図は、今もなお世界で最も有名な人体図の一つです。 多くの人がその美しさに目を奪わ…