AIはトモダチ?国によってつきあい方が違う

AIはトモダチ?国によってつきあい方が違う

 

私たちの周りには、スマートフォンの音声アシスタントやお掃除ロボット、ネットショッピングのおすすめ機能など、知らず知らずのうちにAI(人工知能)が増えています。

これらのAIがもっと人間らしくなった時、私たちは本当にAIを「仲間」として受け入れ、協力できるのでしょうか。

 

最近行われた日本とアメリカを対象とした研究では、この問いに対する興味深い答えが示されました。

研究チームは約1200人(日本600人、アメリカ604人)を対象に、オンラインで「信頼ゲーム」と「囚人のジレンマ」という経済ゲームを実施しました。

これらのゲームは、参加者が「協力してほどほどの利益を得る」か、「相手を裏切り自分だけ大きな利益を得る」かを選ぶというもので、相手が人間の場合とAIの場合の両方を調べました。

 

結果を見ると、アメリカ人は人間相手では約75%が協力的でしたが、相手がAIになると協力率は34%に激減しました。

これはいわゆる「アルゴリズム搾取」という現象で、相手がAIで協力的だと分かっている場合、人間相手のときよりも利己的に振る舞い、AIを利用(裏切る)して自分の利益を増やそうとする行動を指します。

一方、日本人は、人間相手の協力率が66%、AI相手でも56%と、ほとんど変わりませんでした。

 

さらに、AIを裏切った際の罪悪感にも違いがありました。

アメリカ人はAI相手だと罪悪感をほとんど感じませんでしたが(平均0.7ポイント)、日本人はAI相手でも人間相手と同様に罪悪感を感じました(平均2.5ポイント)。

この違いの背景には、日本の伝統的な文化である、すべての物に魂が宿る(もちろんロボットにも!)と考えるアニミズム的な価値観や、昔から『鉄腕アトム』や『ドラえもん』のような、人間の友達としてのロボットが漫画やアニメで親しまれてきたことが影響しているのかもしれません。

 

この研究は、AI技術が社会に浸透する際、文化的背景が重要であることを示しています。

完全自動運転の車やAIロボットなどが日常生活に浸透する際に、AIを道具として扱うか仲間として受け入れるかによって、その普及や社会的な影響が大きく変わるでしょう。

AIが社会に溶け込むには、人間側の受け入れ態度が非常に重要な要素になるのです。

 

技術がいくら進歩しても、人々がそれをどのように受け入れるかは、文化や心情に大きく左右されます。

これから私たちは、ますます賢くなるAIたちとどのような関係を築いていくのでしょうか。

ただ便利な道具として使うのか、それとも仲間として共に歩んでいくのか。今回の研究結果は、AIとの未来を考える貴重なヒントになりそうです。

 

いよいよ現実がSFの世界に近づいてきた感がありますね。

 

参考文献:

Karpus, J., Shirai, R., Verba, J.T. et al. Human cooperation with artificial agents varies across countries. Sci Rep 15, 10000 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-92977-8