糖尿病治療薬で心臓を守る!―飲み薬セマグルチドの可能性―

糖尿病治療薬で心臓を守る!―飲み薬セマグルチドの可能性―

 

糖尿病という病気は誰にとっても身近な話題です。

世界中で8億2800万人もの人が糖尿病を抱えており、その90%以上が2型糖尿病というタイプです。

この病気が重要なのは、単に血糖値が高くなるだけではなく、心臓病や脳卒中などの病気のリスクを高めるからです。

 

そこで、今注目されているのがGLP-1受容体作動薬と呼ばれるタイプの糖尿病治療薬です。

その一つであるセマグルチドの「飲み薬タイプ」の効果が、最新の研究によって明らかになりました。

 

これまでにもセマグルチドの効果を示した研究(FLOW試験やSELECT試験など)はありましたが、これらはすべて注射薬タイプでした。

今回の研究では初めて飲み薬タイプのセマグルチドの心血管への影響が詳細に調査されました。

 

今回の研究では、50歳以上で2型糖尿病があり、心血管疾患や慢性腎臓病の既往がある9650人を対象に、セマグルチドを服用するグループと偽薬(プラセボ)を服用するグループに分け、約4年間の追跡調査が行われました。

 

研究の結果は明瞭で、セマグルチドを服用したグループでは、心血管疾患による死亡、非致死性の心筋梗塞、脳卒中などの重大な心血管イベントが、プラセボグループに比べて14%少なくなりました(発症率:セマグルチド3.1%、プラセボ3.7%、ハザード比0.86)。

特に、心筋梗塞のリスクは26%も低下しました。

この結果は統計的にも有意であり、セマグルチドが心臓病の予防に役立つことを示しています。

 

興味深いのは、この薬が「飲み薬」であることです。

注射薬が苦手な患者さんにとっても朗報と言えますね。

ただ、気になる副作用として消化器症状(主に吐き気)が多く報告されましたが、重大な副作用の頻度には違いがなく、安全性にも大きな問題はありませんでした。

 

さらに、セマグルチドは糖尿病治療薬としての効果も優れていて、血糖値(HbA1c)が平均で0.56ポイント、体重が平均で約3kgも低下しました。

この薬の魅力は単に血糖管理に留まらず、体重管理にも貢献できることです。

 

この研究を通じて、糖尿病治療が単なる血糖コントロールにとどまらず、心臓を守り、さらには患者さんの生活の質を改善する可能性があることがわかったのでした。

 

参考文献:

Zweck E, Westenfeld R, Szendroedi J. Oral Semaglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2019;381(21):2075-2076. doi:10.1056/NEJMc1913157