SFは人類をひとつにする!

SFは人類をひとつにする!

 

広大な宇宙、未知の文明、そしてそこで繰り広げられる壮大な物語。

映画や小説などのSF作品に触れると、まるで自分がこの世界の壮大な一部になったような、言い知れぬ感動を覚えることがあります。

一見すると個人的な感覚のように思えますが、この感覚には科学的な根拠があるようです。

 

中国で行われた研究によって、SF作品を通じて感じる「畏敬の念(awe)」という感情が、私たちに地球規模の連帯感を抱かせる可能性が示されました。

 

研究チームは最初に、映画のジャンルと感情の関係性を明らかにするため、1,060人の成人を対象にアンケートを実施しました。

SF、ロマンス、コメディ、アクション、ドキュメンタリーを含む12種類のジャンルの映画を視聴した際に抱いた感情について尋ねたところ、SF作品が「畏敬の念」を最も強く呼び起こすことが明らかになりました。

他のジャンルでは同様の傾向は見られず、SF特有の感情体験であることが裏付けられました。

 

次に研究者は、約1,000人を対象に、SFと現実的な物語を比較する実験を行いました。

参加者は、隕石衝突(SF)と森林火災(現実)というテーマの異なる物語を読みました。

その結果、SF作品を読んだ人は現実的な物語を読んだ人よりも「畏敬の念」を強く感じ、人類全体へのつながりも強く認識しました。

統計分析によっても、「畏敬の念」が人類全体との一体感を高める上で重要な役割を果たしていることが確認されました。

 

最後の調査では、543人の大学生を2か月間追跡しました。

その結果、SFへの継続的な関わりが日常生活における「畏敬の念」を高め、ひいては人類全体との一体感をさらに強めることが示されました。

つまり、SFを日常的に楽しむほど、私たちは世界とのつながりをより強く意識するようになるのです。

 

この研究を通して明らかになったのは、SFが単なる娯楽を超えて、私たちの視野を広げ、地球規模の問題を「自分ごと」として捉え、行動する力を与えてくれるということです。

世界がこれほどまでに深く繋がり合っている現代において、SFの持つ力は想像以上に重要であるかも知れません。

 

参考文献:

Wu, F., & Zhang, Z. (2024). Entertainment for Cosmopolitism: Science Fiction Fosters Identification With All Humanity via Awe. Communication Research, 0(0). https://doi.org/10.1177/00936502241295300