聴力検査アプリの実力

聴力検査アプリの実力

 

日常生活で聞こえづらさを感じても、専門的な聴力検査を受けるのは手間だと感じる人は多いでしょう。

最近では、自宅でも簡単にできるスマホの聴力検査アプリが普及していますが、実際のところ、これらのアプリはどれほど正確に難聴を見つけられるのでしょうか。

 

カナダ・カルガリー大学の研究チームが、広く推奨される「hearWHO」と「SHOEBOX」という2つの聴力検査アプリを調査しました。

彼らは130人(平均年齢58歳)を対象に、専門家が行う純音聴力検査(正確な聴力診断の基準)と比較しました。

その結果、少し驚くことが分かりました。

 

まず、繰り返し検査した際の安定性ですが、両アプリともあまり高くありませんでした。

特に「hearWHO」は安定性が低く、検査のたびに結果が変わりやすい傾向がありました。

一方、「SHOEBOX」は比較的良好でしたが、まだ理想的とは言えない数値(κ値0.64)でした。

 

興味深いのは、2回目の検査結果が1回目よりも精度が向上したことです。

これは使ううちに慣れが生じ、より正確に反応できるようになるためと考えられます。

実際に、「SHOEBOX」は2回目の検査で中等度以上の難聴(聴力閾値50dB以上)を26%の感度で検出し、特異度(正常な人を正常と判定する力)は100%を達成しました。

「hearWHO」では感度67%、特異度71%という結果でした。

 

軽度の難聴(20dB以上)では、両アプリともさらに高い精度で難聴を検出しました。

特に「SHOEBOX」は感度74%、特異度94%と優秀で、軽い難聴の発見には十分実用的と評価されました。

 

もしこれらのアプリが使えない場合、質問形式の「難聴スクリーニングアンケート(RHHI-S)」や、シンプルな自己評価アンケート「SISA」が代替手段になります。

ただし、これらの質問票もアプリ同様、一長一短で、用途によって選択肢が異なるでしょう。

 

結論として、広い範囲の人をスクリーニングしたい場合は両アプリとも有用ですが、精度を重視するなら「SHOEBOX」がやや有利です。

聴力検査への敷居を下げるこうしたアプリの普及が、難聴の早期発見とより健康的な生活につながることを願っています。

 

参考文献:

Lunney M, Wiebe N, Howarth T, et al. Performance of Hearing Test Software Applications to Detect Hearing Loss. JAMA Netw Open. 2025;8(3):e252166. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.2166