オープンアクセスの医学専門誌のこと

オープンアクセスの医学専門誌のこと

 

JAMA Network Openという医学専門誌があります。

 

この雑誌の大きな魅力は「オープンアクセス」、つまり誰でも自由に無料で閲覧できることです。

私のブログが、論文紹介をメインに据えることができるようになったのも、こういった時代の流れがあってのことです。

 

2024年、このJAMA Network Openが大きな節目を迎えました。

この年、同誌は2万件近い論文の投稿を受け取ったのだそうです。

これは前年より33%増え、2022年から見ると実に53%も増加した数字です。

世界中の90カ国から集まった研究が掲載され、アメリカ国外からの投稿が70%を占めるという国際色豊かな誌面となっているのも、また魅力です。

 

同誌によると、2024年に掲載された2002件の研究の中でも特に注目されたのは、マルチビタミン使用と死亡リスクの関連(Loftfieldら)、体型指標と全死亡リスクの関連(Zhangら)、オリーブオイルの摂取と認知症関連の死亡リスクの関連(Tessierら)といったトピックとのことです。

これらのトピックは私も参考にさせていただきました。

 

また、近年特に注目が集まる人工知能(AI)に関する研究も活発で、2024年だけでも77本の論文が掲載されています。

患者とのコミュニケーション支援や診療記録作成の効率化、治療支援など多岐にわたる用途が検討されましたが、実際の臨床現場での活用には、精度や信頼性をめぐる課題も浮かび上がっています。

それでもなお、この分野の研究が重要であることに変わりはありません。

 

加えて、同誌では環境問題と健康への影響に焦点を当てた研究にも力を入れており、気候変動に関連した災害(森林火災や洪水)や大気・水質汚染が人体に与える健康被害についても議論されています。

さらに、社会的要因(特に人種や差別)が健康に与える影響についての研究も積極的に取り上げ、多様性や公平性を重視する姿勢を示しています。

 

これらの多様で重要なトピックが次々と議論される背景には、世界中の研究者や約2800人もの査読者、編集チームの充実があります。

特に査読期間の迅速さは特筆もので、査読を経て最初の判断が下されるまでの期間は中央値で44日、査読なしの判断はわずか2日です。

こうした迅速かつ丁寧な対応が、研究者にとってこの雑誌への信頼と魅力を高めています。

 

参考文献:

Fihn SD, Jacobs EA, Kim HS, Perencevich EN. JAMA Network Open—The Year in Review, 2024. JAMA Netw Open. 2025;8(3):e257199. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.7199