「小さな異常」を見逃さない―CKD早期発見に必要な“もう一度の検査”

「小さな異常」を見逃さない―CKD早期発見に必要な“もう一度の検査”

 

外来で患者さんの検査結果を見ていると、eGFR(腎機能を示す数値)が少し低い、あるいは尿中アルブミンがやや高いという結果を目にすることがあります。

その場では大きな異常に見えなくても、こうした小さなサインが慢性腎臓病(CKD)の始まりであることも少なくありません。

けれど、その「小さな異常」が、日常診療の中で見過ごされがちな現実があります。

 

オーストラリアの研究チームは、全国の一般診療所(GPクリニック)に通う271万人の成人を対象に、2012年から2020年までの9年間の診療データを解析しました。

対象者はいずれも、検査で腎機能(eGFR)や尿アルブミン・クレアチニン比(UACR)が測定された人たちです。

研究では、eGFRが60未満、またはUACRが男女それぞれ2.5/3.5mg/mmol以上だった場合を「異常」とし、その後6か月以内に再検査が行われたかを調べました。

これは、腎臓病ガイドラインが推奨する「3か月以内の再検」を少し緩めた設定です。

 

解析の結果、22万人が異常なeGFR、11万人が異常なUACRを初めて示していました。

そのうち、eGFRが異常だった人の55%しか再検査を受けておらず、UACRが異常だった人ではさらに少なく30%にとどまりました。

また、糖尿病や心疾患などの持病がある人では再検査率が高い一方で、健康そうに見える人ほどフォローが途絶えがちでした。

検査値が悪いほど再検率は高まる傾向もあり、医師が「重そうな人から優先」している実態が浮かび上がりました。

年齢や地域によっても差があり、70歳以上では再検査率が下がり、都市部より地方のほうがやや高い傾向を示しました。

 

腎臓病の早期発見は、家の基礎のひびを見つけるようなものです。

小さなひびのうちに補修すれば家は長持ちしますが、見逃せば崩れは静かに進みます。

この研究が示すのは、その初期の「ひび」を確認する再検査が十分に行われていないという現実です。

とりわけUACR、つまり尿中アルブミンの検査が軽視されがちな点は見逃せません。

医師の側にも「腎機能は血液検査(eGFR)で足りる」という認識が根強く、尿検査の重要性が浸透していないことが背景にあります。

 

この研究は一次医療データを用いたもので、専門医への紹介後の再検査や他院での検査までは反映されていません。

そのため、実際の再検査率はもう少し高い可能性があります。

 

「数値が少しだけ悪いから、また今度にしましょう」―そんな一言の裏に、病気の進行が隠れていることがあります。

小さな異常を見逃さず、もう一度確かめる。

それは患者の未来を守る、地味でありながら、確かな医療の一歩なのかもしれません。

 

参考文献:

Li AK, Kotwal S, Wallace H, et al. Patterns of follow-up testing of abnormal eGFR and UACR for the detection of chronic kidney disease in Australian primary care: analysis of a national general practice dataset. BMJ Open 2025;15:e096730. doi: 10.1136/bmjopen-2024-096730

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。