人とのつながりが体内時計を巻き戻す?―社会性が老化を遅らせる

人とのつながりが体内時計を巻き戻す?―社会性が老化を遅らせる

 

テレビで見る明石家さんまさんや所ジョージさんの姿を思い浮かべると、年齢を重ねてもなお若々しく第一線で活躍し続けていることに驚かされます。

お二人の明るい人柄や幅広い人間関係は、単なる芸風ではなく、健康や活力の源なのではないかと感じさせられます。

今回紹介する研究は「社会的なつながり」が健康にどう影響するかを、分子レベルで確かめようとしたものです。

アメリカで行われた大規模調査(MIDUS研究)の2,117人を対象に、家族関係、宗教的関与、地域社会への参加、感情的サポートといった複数の要素を合わせて「累積的社会的優位(CSA)」という指標を作り出しました。

特に「地域との一体感」や「他者との前向きな関係」が強い影響を持つことがわかっており、CSAは単なる交友関係の広さではなく、生活全体に染み込むような社会的資源を示しています。

 

結果は印象的でした。

CSAが高い人ほど、老化のスピードを測る「GrimAge」や「DunedinPACE」といったエピジェネティック時計の進み方が遅く(GrimAge β = −0.10、DunedinPACE β = −0.12)、さらに炎症の指標であるインターロイキン6(IL-6)も低い(β = −0.11)ことが示されました。

一方で、尿中のコルチゾールやカテコールアミンといった短期的なストレスホルモンには有意な関連は見られませんでした。

 

つまり、人とのつながりは、すぐに表れるホルモンの変動よりも、長期的に体に刻まれる「老化のテンポ」や「炎症の静かな火種」に影響している可能性があるのです。

これは、人生のリズムに例えると、派手なドラムの一打ではなく、背後で静かに鳴り続けるベース音のようなもの。

気づきにくいけれど、確実に体全体の調和に影響しています。

 

もちろん、この研究は横断的な調査に基づいており、因果関係を断定することはできません。

また、CSAの中でも特に地域への統合感や他者との前向きな関係が強い影響を持っていた一方で、親子間の情緒的サポートはそれほど寄与していないなど、測定の偏りも考えられます。

 

それでも、「人と人との関わりが老化を遅らせる」というメッセージは力強いものです。

明石家さんまさんや所ジョージさんのように人との交流を楽しみ続ける姿は、体の奥深くに健康のリズムを刻んでいる証なのかもしれません。

私自身も、診療や地域活動の中でどんな形で関わりを続けるか、その選択が未来の体内時計に影響すると思うと、読者の皆さんと一緒に「社会とのつながりを健康習慣として育てる」ことを考えてみたくなります。

背筋が少し伸びる、そんな余韻を残す研究でした。

 

参考文献:

Ong AD, Mann FD, Kubzansky LD. Cumulative social advantage is associated with slower epigenetic aging and lower systemic inflammation. Brain Behav Immun Health. 2025;48:101096. Published 2025 Sep 3. doi:10.1016/j.bbih.2025.101096

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。