健康診断で「C判定(要経過観察)」と記された項目があると、どうとらえていいのか、もやもやする人は多いかと思います。
逆に、「経過を見るってことは、様子見でいいってことね」と楽天的にとらえる方もいるかも知れません。
「D判定(要治療・要精査)」じゃなければいいやという人もいるでしょう。
医療者が使う「経過観察」という言葉は、「現時点では積極的な治療はしないが、状態が変化する可能性があるので、定期的に注意深く見守る必要がある」という意味です。
この言葉は、一般の人と少しずれがある言葉の一つだと思います。
では、「血糖値が少し高め」と言われたとき、どう判断すべきでしょうか。
その状態は前糖尿病と呼ばれ、放っておくと糖尿病に進むリスクが高い一方で、生活習慣次第では正常な状態に戻ることもあります。
今回紹介する大規模研究は、その「分かれ道」がどのくらいの確率で起きて、どんな条件が影響しているのかを探ろうとするものです。
19の国際的な前向きコホート研究から集められた約7万6000人のデータを解析した結果、前糖尿病の人が10年以内に糖尿病へ進む確率は12.5%、一方で正常値に戻る確率は36.1%でした。
つまり、進むよりも戻るほうが多いのです。
ただし、空腹時血糖が高めの人では逆に糖尿病に進む確率が16.1%に上昇し、戻る確率は13.4%に低下しました。
特に男性や55歳以上の人、そしてラテン系の人々は糖尿病に進むリスクが高いことも確認されています。
さらに、どんな因子が「戻る力」を弱め、逆に「進むリスク」を高めるのかも調べられました。
肥満や内臓脂肪の蓄積、善玉コレステロール(HDL)の低下は、正常値に戻る可能性を大きく下げていました。
喫煙や運動不足も悪影響を与えます。
逆に言えば、体重管理や禁煙、適度な運動など、日々の選択が将来の分かれ道を変えてしまうということです。
この研究のもう一つの重要な示唆は、年齢が上がるほど進行のリスクは増すという点です。
加齢に伴うインスリン分泌能の低下や感受性の悪化が背景にあるため、若いうちからの予防がとても重要になります。
男性では特に注意が必要で、女性に比べて糖尿病に進む可能性が高いことが示されました。
私自身も「血糖値が少し高い」と告げられた患者さんと向き合うとき、この数字の裏にある未来のシナリオを想像します。
必ずしも一本道ではなく、努力によって正常へ戻る道も確かに存在する。
その事実を伝えると、患者さんのやる気が違ってくるのを感じます。
糖尿病は一度進行してしまうと後戻りが難しい病気ですが、前糖尿病の段階はまだ「分かれ道」に立っている状態です。
体重を減らす、歩く時間を増やす、タバコをやめる―その一歩一歩が未来を変える力を持っています。
この記事を読んでいるあなたや大切な人にとっても、その分かれ道で「戻る」方向を選べるように、今からできることを積み重ねてほしいと思います。
参考文献:
Davoodian N, Lotfaliany M, Huxley RR, et al. Prediabetes transitions to normoglycaemia or type 2 diabetes and associated risk factors in the Obesity, Diabetes and Cardiovascular Disease Collaboration: an individual-level pooled analysis of 19 prospective cohort studies. Lancet Glob Health. 2025;13(9):e1533-e1542. doi:10.1016/S2214-109X(25)00237-2

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
