春と昼に潜むリスク―パーキンソン病と転倒の時間割

春と昼に潜むリスク―パーキンソン病と転倒の時間割

 

パーキンソン病を抱える方々にとって、転倒は生活の質を大きく左右する深刻な問題です。

これまで「どこで」「なぜ」起こるかという点は多くの研究で明らかにされてきましたが、「いつ」起こるのか、つまり時間や季節に関する側面は十分に理解されていませんでした。

今回スウェーデンの研究チームは、国の健康記録を活用し、平均年齢83.7歳の高齢者441人を約2年半にわたり追跡するという粘り強い方法で、この疑問に挑みました。

 

研究では、抗パーキンソン薬を服用している30人を「パーキンソン病群」とし、服用していない401人を比較対象としました。

その結果、転倒には明確な「時間割」が存在することが浮かび上がりました。

 

まず時間帯に注目すると、パーキンソン病群は夜間よりも日中、特に人々が最も活発に動く午前9時から午後6時の間に転倒する割合が高いことが分かりました。

夜の方が薬の効果が切れやすいにもかかわらず日中に多いのは、活動が増える時間帯であることや、薬によって引き起こされる不随意な体の動き(ジスキネジア)が影響している可能性があります。

また女性は男性に比べ、夜間の転倒が少ない傾向も見られました。

 

次に季節の影響をみると、パーキンソン病群では春に転倒が集中していました。

パーキンソン病でない群では年間を通じてほぼ均等に転倒が発生していたため、この差は際立っています。

春は冬の間に抑えられていた活動が一気に増える時期であり、さらに気候の変化によって体調が揺らぎやすい季節です。

こうした要因が重なり、転倒リスクを押し上げているのかもしれません。

 

興味深いのは、転倒回数そのものは両群で大きな差がなかった点です。

つまり「どれだけ転ぶか」ではなく「いつ転ぶか」が重要な違いとして現れたのです。

この知見は、介護や医療の現場での転倒予防策を練るうえで大切な指針になります。

たとえば「春の晴れた午後は特に注意する」といった具体的な配慮も可能になるでしょう。

 

この研究は、転倒を単なる不注意と捉えるのではなく、体内リズムや季節の移ろいと結びつけて理解することの大切さを示しています。

私自身、この結果を知ってからは「時間」という視点を日常生活の注意に組み込むようになりました。

ご家族や支援者にとっても、安全な暮らしを実現するための新しいヒントになるはずです。

 

参考文献:

Peterson DS, Johansson L, Westerlind B, Lopes de Oliveira T, Finkel D. Characterizing the time of day and year of falls in people with probable Parkinson’s disease. Sci Rep. 2025;15(1):32508. Published 2025 Sep 12. doi:10.1038/s41598-025-17752-1

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。