健康診断や検診で使われる便潜血検査は、大腸がんの早期発見に役立つことで知られています。
実際、日本の健診で「大腸がん検査」といわれるのは、便潜血二日法と呼ばれる方式です。
ところが、イギリス・ノッティンガムで行われた研究は、この検査が示す意味がもっと広いことを浮き彫りにしました。
大腸がんを疑う症状がある人が便潜血検査を受け、その後1年間の死亡率を追跡したのです。
対象となったのは約5万人。
便中ヘモグロビンが10μg/g以上という「陽性」にあたる結果だったのは約2割の1万35人でした。
そのうち8.3%が1年以内に死亡し、陰性群の2.8%を大きく上回っていました。
驚くのは、この差が大腸がんだけで説明できなかったことです。
大腸がん以外の原因でも死亡リスクが有意に高かったのです。
解析の結果、陽性群は陰性群と比べて全死亡リスクがおよそ2倍、非大腸がん死亡リスクでも1.7倍でした。
さらに目を引いたのは、年齢や性別による違いです。
50歳女性で陽性だった場合、全死亡リスクは同年代の陰性女性の3.8倍。
男性も同様にリスクは上がっていましたが、女性ほどではありませんでした。
年齢が上がると相対的なリスクは低下する傾向にありましたが、それでも差は残っていました。
研究者たちは、この背景に「他の病気の影響」もあると見ています。
心血管疾患や自己免疫疾患など、全身の炎症や微細な出血を伴う状態が関与している可能性があるのです。
つまり便潜血検査は、大腸がんだけでなく、体の別のサインを映し出す“鏡”の役割を果たしているのかもしれません。
もちろん、この研究には限界があります。
たとえば既往症や内視鏡検査の結果までは含まれていません。
しかし、便潜血検査の値が高い人は「がんがあるかどうか」だけでなく「健康全体のリスクが高い」人だと考え、注意を払う必要があることを示しています。
私自身もクリニックで便潜血検査を扱う立場として、この結果は心に響きました。
患者さんに「大腸がんはなかったから安心」ではなく、「他のリスクも一緒に確認しておきましょう」と伝えることが大切だと感じます。
参考文献:
Malcolm FL, Crooks CJ, West J, Humes DJ, Langan SM. All-cause and non-colorectal cancer 1-year mortality among people having a faecal immunochemical test in primary care for investigation of symptoms of suspected colorectal cancer: an English cohort study. Lancet Prim Care. 2025;1:100007.

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
