趣味でランニングを続けているので、体力にはそこそこ自信がありました。
しかし先日、両手にスーパーの買い物袋を下げて、急に降り出した大粒の雨にあわてて駐車場を駆け抜けたとき、車のドアを開ける頃にはすっかり息が上がってしまっていました。
あれ?と思うほどの動悸と息切れ。
こうした日常の中の突発的な「ひと頑張り」と、計画的に行うランニングとは、身体にとって違う意味を持つのかもしれません。
そんな疑問に答えてくれるかもしれない研究があります。
これまで健康づくりといえば、ジョギングやジムでのトレーニングのように、まとまった時間を必要とするものが主流でした。
多くの身体活動ガイドラインも、10分以上の継続的な活動が推奨されてきました。
しかし実際には、成人の約4人に1人しか定期的に運動していません。
そこで研究チームが注目したのが、日常生活の中で自然に生まれる短時間の全力運動です。
彼らはこの動きを「激しい断続的生活活動(VILPA)」と名付けました。
例えば、バスに乗り遅れまいと小走りしたり、重い荷物を抱えて階段を駆け上がったりといった瞬間的な動きです。
対象となったのは、運動習慣がない3,293人の米国成人。2011〜2014年に手首型加速度計で日常の活動を記録し、その後平均6.7年間追跡しました。
結果として、VILPAを1日5回ほど行っていた人は、まったく行っていない人に比べて死亡リスクが44%低下。
さらに合計時間にすると、わずか1.1分でも39%の低下が見られました。
1日8回(合計約2分)を超えると効果は緩やかになることも確認され、過度にやり込む必要はないことが分かります。
この研究によれば、VILPAの多くは中央値で10秒ほどだったと報告されています。
掃除や庭仕事、子どもとの遊びといった日常の中の一瞬の動きが、長期的な健康に結びつくのです。
ただし、この研究は観察研究であり、直接的な因果関係を断定できるわけではありません。
また、体力や健康状態によっては結果が弱まることもあり、安全に取り入れる工夫は欠かせません。
あの日、買い物袋を抱えて駐車場を駆け抜けたときの息切れは、単なる疲労ではなく未来の健康のための投資だったのかもしれません。
ランニングの習慣に加えて、エレベーターを待つ代わりに階段を使う。
そんな小さな工夫を積み重ねることで、日常に“健康の濃縮エキス”を足していける。
この研究は、運動が苦手な人にとっても新しい選択肢を示してくれています。
参考文献:
Koemel NA, Ahmadi MN, Biswas RK, et al. Vigorous intermittent lifestyle physical activity (VILPA) and mortality risk among US adults: a wearables-based national cohort study. medRxiv. Preprint. Posted online August 7, 2025. doi:10.1101/2025.08.05.25333017

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
