飲酒と動脈硬化の関連―血管を傷つける2つのルート

飲酒と動脈硬化の関連―血管を傷つける2つのルート

 

このブログではこれまでもアルコールと健康リスクについて取り上げてきました。

たとえば「赤ワインは体に良いのか」という記事では抗酸化作用の一端を紹介しましたし、別の記事では「少量のアルコールは本当に心臓を守るのか」と問い直しました。

どちらも結局は「飲み方次第で意味合いが変わる」という結論でした。

そうした流れを受けて、今回紹介するロシア・アルハンゲリスクの「Know Your Heart」研究は、飲酒と血管(動脈硬化)の関係を実測データで照らし出しています。

 

対象は35〜69歳の一般住民2357人と、アルコール依存症で入院治療を受けていた272人です。

調査では飲酒習慣を「非飲酒」「問題のない飲酒」「危険な飲酒」「有害な飲酒」「依存症患者」の5つに分類しました。

そして、頸動脈エコー検査で血管の壁の厚さ(CIMT)、プラークの数(0〜6点)、血管の狭窄(50%以上)を測定しました。

 

結果を見ていくと、酒との関わり方が血管にどんな跡を残すのかが浮かび上がります。

依存症で入院していた人々は、問題のない飲酒群に比べてCIMTが平均0.05mm厚く、プラークスコアは+0.57点、狭窄のリスクは2倍に達していました。

これは高血圧や糖尿病といった代謝異常の有無にかかわらず、アルコールそのものが血管に直接ダメージを与えている可能性を示しています。

 

危険な飲酒群ではCIMTが+0.03mm厚く、プラークスコアもわずかに高めでしたが、この差は高血圧を考慮すると消えてしまいました。

つまり、この群の血管障害は主にアルコールが血圧を押し上げる作用を通じて現れていると考えられます。

有害な飲酒群では有意な差は出ませんでしたが、人数が少なく統計的に判断が難しい事情があります。

 

さらに目を引くのは、非飲酒群でも血管の厚さが+0.02mm、プラークスコアが+0.30点と高かったことです。

この背景には「健康問題で酒をやめた人」が含まれている可能性があり、単純に「飲まない方が良い」とは言い切れない事情が見えてきます。

禁酒が必ずしも“健康の証”ではないという逆説が、ここに顔を出しています。

 

まとめると、重度の飲酒は血管を直接傷め、危険なレベルの飲酒は高血圧を介して動脈硬化を進める。

一方で、全く飲まない人のデータ解釈には慎重さが必要です。

研究によれば「血管の厚さ0.1mmの増加は心筋梗塞リスクを10〜15%押し上げる」とされており、小さな数字でも大きな意味を持つのです。

 

結局のところ、この研究は「飲み方と体の関係」を映し出しました。

血管は正直で、飲み過ぎのツケは必ず残る。

そして“適度”という言葉がいかに曖昧で扱いにくいかを突きつけています。

 

参考文献:

Mitkin, N.A., Ryabikov, A.N., Mirolyubova, O.A. et al. Association between alcohol consumption and carotid atherosclerosis in Russia. Sci Rep 15, 31646 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-16290-0

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。