ネット上や雑誌で「指の長さの比率」が、時々話題になることがあります。
意外に多くの人がこうした細かな違いに関心を持っているようで、新しい研究結果が紹介されると大きな注目を集めたりします。
進化の仲間であるチンパンジーやゴリラにも実は同じ特徴が見られているのですが、人間にとってはそれがどんな役割を果たしてきたのか、まだはっきりとはわかっていないのが実状です。
最近、この「指の長さの比率」が運動時の心肺機能と関係しているという研究が報告されました。
人差し指(2D)と薬指(4D)の長さの比率を「2D:4D比」と呼びます。
この比率は胎児期に浴びたテストステロンの量を反映するとされ、生涯を通じて大きくは変わりません。
一般的に男性は女性より薬指が長く、この比率が低い(=薬指が相対的に長い)傾向にあります。
このブログでも2024年1月に、2D:4Dと特定の精神障害や性格特性との相関について紹介しました。
詳しくはこちら → 「人差し指と薬指の長さの不思議」
今回は視点を変え、心肺機能との関連を扱った最新の系統的レビューとメタ解析を紹介します。
解析の対象となったのは22件の研究、計5293人(年齢10〜40歳、男性54%)です。
その結果、2D:4D比が低い(=薬指が長い)人ほど心肺機能の一部が優れていることが示されました。
特に注目すべきは換気性作業閾値(VT:運動中に呼吸が急に苦しくなる境目)です。
比率が低い人はVTが有意に高く(相関係数r = -0.61)、強い運動に耐えられる傾向が明らかになりました。
これは強い負の相関で、信頼度の高い結果です。
また、持久走やシャトルランといった成績でも、弱いながら有意な関連がみられました(r = -0.18)。
つまり比率が低い人は体力テストでやや好成績を残す傾向があります。
ただしこの関係は年齢によって異なり、大人で強く、小児では弱めにとどまりました。
一方、最大酸素摂取量(VO2max)や運動効率(ME)とは明確な関連は確認できませんでした。
心肺機能全体の「最大値」ではなく、「持久力」や「苦しさに耐える力」といった側面に結びついていると考えられます。
背景には、胎児期のテストステロンが筋肉量や代謝の仕組みに影響し、大人になってからの運動耐性に関わる可能性があります。
さらに、競争心や不快感への耐性といった心理的な要素も作用しているかもしれません。
たとえばマラソン大会で「もう限界だ」と思う場面で、踏ん張れるかどうかに指の比率が関わっている、と考えると興味深いものです。
結論として、指の長さの比率は最大酸素摂取量のような絶対的能力を決めるものではありませんが、「どこまで踏ん張れるか」という持久力の要素に関係しているといえます。
2024年のブログ記事と今回の研究をあわせて読むと、科学が少しずつ輪郭を描き出していく様子が伝わってきます。
指を眺めながら、自分の走りや体力を想像してみると、体と心の奥深いつながりを感じられるかも知れませんね。
参考文献:
Gower B, Russell M, Tomkinson JM, Peterson SJ, Klug MG, Tomkinson GR. The Relationship Between Digit Ratio (2D:4D) and Aspects of Cardiorespiratory Fitness: A Systematic Review and Meta-Analysis. Am J Hum Biol. 2025;37(4):e70040. doi:10.1002/ajhb.70040

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
