人間の身体は内面を映し出す鏡だと語られることがあります。
手相や人相占いがその代表ですが、最近では「指の長さでわかる〇〇」といった広告を目にすることも少なくありません。
多くは気軽な読み物の一部として流れていきますが、そこに示される「人差し指と薬指の比率」に関しては、実際に科学的な裏付けがあるようです。
人差し指(2D)と薬指(4D)の長さの比率、すなわち2D:4D比率は、単なる占いではなく、生まれる前の胎児期に浴びたホルモン環境を反映する生物学的な指標と考えられています。
この比率が低い、つまり薬指が相対的に長い場合は、胎児期にテストステロンが多く、エストロゲンが少ない環境で発達したことを示すとされています。
そしてその背景は、大人になってからの競争心や攻撃性、さらには「ダークトライアド」と呼ばれるマキャベリズム・自己愛・サイコパシーといった性格特性と関わりがあると報告されてきました。
今回紹介する研究は、アンフェタミン使用障害(AUD)、反社会性パーソナリティ障害(ASPD)、そして両方を併せ持つ人々を対象に、この2D:4D比を調べたものです。
対象となったのは44人の患者と36人の健常者。
参加者は右手をスキャンし、指の長さを計測。
そのうえで、ダークトライアドや不確実性への耐性、敏感な自己愛傾向についての質問票にも答えました。
結果として、次のような傾向が明らかになりました。
・精神的な課題を抱えるグループは、健康なグループに比べて、統計的に有意に2D:4D比が低い(薬指が相対的に長い)ことが分かりました。
・特に、AUDとASPDの両方を持つグループは、他のどのグループよりも2D:4D比が最も低い値を示しました。
・そして、2D:4D比が低いほど、ダークトライアドの特性が強く現れる傾向が見られました。
研究者はこの結果を「速いライフヒストリー戦略」という進化心理学の枠組みで解釈しています。
すなわち、資源を早く獲得しようとする傾向が、リスクの高い行動や反社会的な行動につながるという考え方です。
ただし、こうした特性をもつ人がすべて問題行動に至るわけではありません。
指の比率はあくまで一つの生物学的な背景を示す指標にすぎず、人生の軌跡を決めつけるものではありません。
私自身、この研究を読みながら「人の行動の根っこには、思っている以上に胎児期からの影響があるのかもしれない」と感じました。
臨床現場で出会う患者さんの背景には、後天的な環境要因だけでなく、生まれる前からの生物学的要素が潜んでいる可能性を思うと、少し立ち止まって考えさせられます。
社会が抱える依存や反社会性の問題に対し、この知見がどのように役立てられるか。
今後の研究に注目したいところです。
*薬指の長さに関連するほかのブログ記事があります。URLを貼っておきますね。
もうひと頑張りの体力は、薬指の長さで決まっている?(2025年9月8日)
元論文はこちら:
Hashemian SS, Golshani S, Firoozabadi K, Firoozabadi A, Fichter C, Dürsteler KM, Brühl AB, Khazaie H, Brand S. 2D:4D-ratios among individuals with amphetamine use disorder, antisocial personality disorder and with both amphetamine use disorder and antisocial personality disorder. J Psychiatr Res. 2023 Dec 11;170:81-89. doi: 10.1016/j.jpsychires.2023.12.004. Epub ahead of print. PMID: 38113678.
