ラーメンのスープを飲み干す前に知っておきたい―健康リスクとハザード比

ラーメンのスープを飲み干す前に知っておきたい―健康リスクとハザード比

 

「まずスープを一口、それから麺に敬意を払うように啜り、合間にチャーシューを沈める。」

伊丹十三監督の映画『たんぽぽ』で、ラーメンの達人が説いたあの流儀は、もはやひとつの儀式に昇華されたものでした。

あの映画は、一杯のラーメンに日本人が注ぎ込む、尋常ならざる情熱を見事に描き切ったものです。

ラーメンは日本人のソウルフードと言ってもよいでしょう。

ただ、その熱い思いと裏腹に、健康面でのリスクという負の側面については、皆が薄々気づいているのも事実です。

 

山形大学のコホート研究は、ラーメンの習慣が健康に及ぼす影響を調べました。

40歳以上の6,725人を対象に、ラーメンを食べる頻度と死亡リスクの関係を追跡。

分類は「月1回未満」「月1~3回」「週1~2回」「週3回以上」で、最も多かったのは「月1~3回」の46.7%、次いで「週1~2回」の27.0%。

つまり、ラーメンは日本人の生活に深く入り込んでいたのです。

 

追跡期間中に145人が亡くなり、そのうち100人はがん、29人は心血管疾患でした。

全体的には「週3回以上」で死亡リスクがやや高い傾向があったものの有意差は認められませんでした。

これだけ聞くと、ラーメン愛好家たちは胸をなで下ろすかもしれません。

ただしサブグループ分析では、男性、70歳未満、スープを半分以上飲む人、さらに飲酒習慣のある人でリスクが明確に高まっていました。

70歳未満で週3回以上食べる人では、死亡リスクが2.20倍に上昇。さらにお酒を飲む習慣があり、週3回以上食べる人では2.71倍にまで跳ね上がりました。

 

背景をみると、ラーメンを頻繁に食べる人ほどBMIが高く、喫煙や飲酒の割合も多く、糖尿病や高血圧の合併も増えていました。

つまりラーメン好きの生活習慣自体がリスクを重ねている構図です。

さらにスープを飲み干すことで塩分摂取量が増え、脳卒中や胃がんのリスクを押し上げてしまう可能性があります。

日本人の平均塩分摂取量は男性10.7 g、女性9.1 gと、目標値(男性7.5 g未満、女性6.5 g未満)を大きく上回っています。

そこにラーメンの一杯が加われば、塩分過剰は避けられません。

 

結論として、この研究は「ラーメンそのものが命を縮める」と断じているわけではありません。

むしろ男性や若年層、スープを飲み干す習慣、飲酒などが組み合わさることでリスクが浮き彫りになったのです。

ラーメンは心と胃袋を満たす一杯ですが、健康との折り合いをつけるなら「スープはほどほどに」が合言葉になりそうです。

社会的には、減塩ラーメンが広がるような工夫が進み、健康寿命を延ばす道が見えてくることを期待したいです。

 

参考文献:

Suzuki M, Suzuki N, Sho R, Souri M, Konta T. Frequent Ramen consumption and increased mortality risk in specific subgroups: A Yamagata cohort study. J Nutr Health Aging. Published online August 1, 2025. doi:10.1016/j.jnha.2025.100643

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。