焼き鳥を頼んだとき、私たちは串刺しにされた肉や野菜を「1本」と数えます。
そこに何個の肉があるのかはあまり意識しません。
あるいは、パールのネックレスを見れば、何十粒もある珠を「ネックレス1本」として捉えるでしょう。
私たちは、このように、ものが線や糸でつながっていると、それを「まとまり」として数えてしまう傾向があります。
視覚の世界にもこれと似た現象が存在し、「連結錯視(connectedness illusion)」と呼ばれています。
点を並べて細い線でペアに結ぶと、同じ数の点でも少なく見えてしまう。
この錯覚は5歳の子どもにも現れており、年齢が上がるにつれて強まると報告されています。
研究チームは5〜12歳の子ども43人と成人57人を対象に実験を行いました。
青い点の集まりを2種類提示し、一方では点を線で結び、もう一方では点を独立させました。

参加者には「線は無視して点の数だけ見てください」と指示しましたが、結果は意外なものでした。
子どもたちは結ばれた点を「少ない」と判断する傾向を示し、その差は平均で3.4%。大人では約7%に広がりました。
経験を積んで賢くなるほど、逆に錯覚に引き込まれるという皮肉な展開です。
さらに、数の違いを正確に見抜ける人ほど、この錯覚に強く影響されることもわかりました。
言い換えれば、「数に敏感である」ことと「錯覚に弱い」ことが同じ場所で共存しているのです。
これは脳が数を推定するとき、まず対象を「ひとまとまりの物」として認識しようとする仕組みを持っているためだと考えられます。
2つの点を線で結ぶと、脳はそれを1つの物体として処理してしまう。
だから数が減ったように見えるのです。
この発見は「数の知覚が生まれつき備わっているのか、それとも学習によるものか」という長年の問いにも光を当てます。
新生児でさえ大まかな数の違いを見分けられることが知られていますが、今回の研究は「数を数える脳の仕組み」がかなり根深く、幼児期から働いていることを裏づけました。
そしてその仕組みは、便利な道具であると同時に、特有のゆがみを生むこともあります。
結論として、数の錯覚は「未熟な認知の産物」ではなく、「むしろ脳が効率よく働いている証拠」とみることができます。
教育やAI研究においても、この人間特有の数の扱い方はヒントになるでしょう。
錯覚を笑い飛ばすのではなく、その背後にある脳の働きに耳を澄ませば、数の世界はさらに奥行きを増して見えてきます。
参考文献:
Clarke S, Qu C, Luzzi F, Brannon E. Children’s Number Judgments Are Influenced by Connectedness. Dev Sci. 2025;28(4):e70032. doi:10.1111/desc.70032

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
