ビートルズ:恋をするなら―12弦の音色とハリスンの自信

ビートルズ:恋をするなら―12弦の音色とハリスンの自信

 

私のギター教室の最近の課題曲は、ビートルズの「If I Needed Someone」(邦題:恋をするなら)です。

講師の先生が所有する12弦ギターのリッケンバッカー360/12を弾かせてもらえる贅沢もあって、その独特のきらびやかな響きに毎回感動しています。

私の腕前には目をつむるとして、その音色に包まれると、ビートルズファンとして気分は1966年の武道館公演にまで遡ります。

 

1965年、ビートルズは「モップトップ」時代のアイドル的イメージから抜け出し、成熟した音楽表現を模索していました。

ジョンとポールの陰に隠れがちだったジョージも、この曲で確かな存在感を示します。

アルバム『ラバー・ソウル』には彼の曲が2曲収録されていて、そのひとつがこの曲です。

リードボーカルを務めたジョージに、ジョンとポールが高音で三声ハーモニーを重ね、曲の魅力を一層引き立てました。

 

リフはアメリカのバンド、ザ・バーズの「The Bells of Rhymney」に影響を受けていますが、逆にバーズも映画『A Hard Day’s Night』でのジョージの演奏に触発されていました。

大西洋を挟んだ“音の往復書簡”のような交流でした。

 

ギター的に見ても、この曲は魅力的です。

カポを7フレットに置き、DフォームでAメジャーを鳴らす構造。

シンプルに見えて12弦特有の倍音が重なることで、音は深い奥行きを持ちます。

コード移行の軽快さから浮遊感が生まれ、練習を重ねるほどにハリスンがこの曲を自信作とした理由が実感できます。

 

歌詞は「もし僕に誰かが必要なら、君を思うだろう」と曖昧で、婚約者パティ・ボイドに向けたものとされながらも、愛の直球ではなく、忙しさや迷いがにじむ距離感が漂います。

スターとしての役割と個人の感情、そのはざまで揺れるジョージの姿が映し出されています。

 

録音は1965年10月16日、リズムトラックを一発で仕上げるほどの勢いがありました。

シンプルなリフにドローン(持続音)的響きが重なり、後の「Love You To」や「Within You Without You」に続くインド音楽的要素の萌芽も感じられます。

 

さらにこの曲は、ビートルズのライブで演奏された唯一のハリスン作オリジナル曲です。

1966年の日本武道館公演でも披露され、テレビ映像として残りました。

後年、エリック・クラプトンと再演されたことも、この曲への特別な思いを物語っています。

 

当初、ザ・ホリーズのカバーをめぐって論争もありましたが、今では「ハリスン初の傑作」として評価されています。

ローリング・ストーン誌もビートルズ楽曲ベスト100で51位に選びました。

 

「If I Needed Someone」は、“クワイエット・ビートル”と呼ばれたジョージが、自らの声を届ける作曲家へと成長した証しです。

私にとっても、練習するたびに楽しく、彼らの歩みに(勝手に)触れられる気がしています。

 

 

YouTubeから公式の動画を置いておきます。

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。