自分の健康状態を知るために、血液を採られるのはどうにも気が進まないものです。
それなりの医療機関に行かなければならないですし、注射針は痛いし、年に1度の健康診断ぐらいでいいやという感じですね。
そこで科学者たちは、もっと気軽に体内の情報を得る方法を探してきました。
汗です。
汗には尿酸やアルコールといった、体の中の代謝活動を反映する様々な物質が含まれています。
これを分析できれば、健康管理に役立つというわけです。
しかし、事はそう単純ではありません。
安定して分析できるほどの汗を、いつでも好きな時にかくのは難しい。
運動でもしない限り、汗は気まぐれにしか出てこないのです。
この課題を解決するため、ある研究チームがユニークなウェアラブルセンサー「BMS³」を開発しました。
このセンサーの肝は、自然界からスカウトしてきた二つのエースにあります。
ひとつは、水を巧みに弾くことで知られるハスの葉。
もうひとつは、捕らえた虫を滑り落とすウツボカズラです。
まず、運動せずに汗をかくために、カルバコールという薬剤を微弱な電流で皮膚に浸透させます。
すると、その部分だけが穏やかに発汗を始め、しかもその効果は1回の処置で2日間以上も持続するのです。
次に出番となるのが、ハスの葉の構造を応用した特殊な膜です。
この膜は、皮膚側は汗を吸い込み、外側は水分を通さないという二つの顔(ヤヌス)を持ち、汗を一方向にだけ効率よく流します。
そして、ウツボカズラの表面構造を模した微細な流路が、そのわずかな汗をセンサー部分まですいすいと運んでいきます。
こうして、安定した汗の供給ラインが確立されるのです。
研究チームは、このセンサーを健康な人の腕に貼り、3日間の生活を追跡しました。
すると、ブリトーとアルコールを摂取した日、赤身肉を食べた日、魚とソーダを飲んだ日で、汗に含まれる尿酸やアルコールの濃度が食事内容に応じて変動する様子がはっきりと記録されました。
さらに、痛風の患者に協力してもらい、治療薬であるアロプリノールを服用する前と後で数値を比較したところ、尿酸値が低下する様子もリアルタイムで捉えることに成功しました。
このセンサーは、私たちの体が日々の食事や薬にどう反応しているかを、肌に貼るだけで教えてくれる可能性を秘めています。
大掛かりな検査も、痛い思いもせずに。自分の体の声に、そっと耳を澄ます。
そんな未来の健康管理が、もうすぐそこまで来ているようです。
参考文献:
Shin S, Liu R, Yang Y, Lasalde-Ramírez JA, Kim G, Won C, Min J, Wang C, Fan K, Han H, Uwakwe C, Heng W, Hsiai TK, Li Z, FitzGerald JD, Gao W. A bioinspired microfluidic wearable sensor for multiday sweat sampling, transport, and metabolic analysis. Sci Adv. 2025 Aug 15;11(33):eadw9024. doi: 10.1126/sciadv.adw9024. Epub 2025 Aug 13. PMID: 40802776.

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
