風邪をひくと、たいていは数日で治ります。
しかし世の中には、COVID-19で散々思い知らされたように、素性の知れないウイルスというものが存在します。
高病原性鳥インフルエンザ、H5N1型もそのひとつです。名前の通り、もともとは鳥の世界のウイルスでした。
それが近年、あちこちで種を越えて広まりつつあります。
2024年2月には米国の乳牛から、同年11月にはオレゴン州の豚からも見つかりました。
さらには、ネコや人間への感染例も報告されています。
ウイルスが異なる種の体内で交ざり合うと、遺伝子の組み換えが起こることがあり、これを「遺伝子再集合」と呼びます。
2009年に世界で流行した新型インフルエンザ(H1N1)も、豚の体内で鳥、豚、ヒトのウイルスが再集合して生まれたものでした。
では、こうした事態にどう備えればいいのか。
研究者グループは3つの具体的な対策を提案しています。
1. ウイルスの動向監視
野生動物や家畜、人間はもちろん、農場周辺の排水や空気、昆虫まで調べて変異や感染経路を察知します。
これは「ワンヘルス」という、人間・動物・環境を一体として捉える視点に基づく取り組みです。
2. 室内空気の質改善
私たちは一日の約90%を屋内で過ごします。
閉め切った空間では感染性エアロゾルが漂いやすく、換気や高性能フィルター、紫外線殺菌でリスクを減らせます。
安全な水が水道から供給されるように、安全な空気を建物に備える発想です。
3. 健全な情報流通の確保
ワクチン忌避は誤解だけでなく、意図的な偽情報によっても強まります。
AIや社会科学の知見を活用し、正確な情報を地域に根差して届ける戦略が必要です。
鳥インフルエンザ対策は、ウイルス退治だけでなく、野生動物との関係、家畜の飼育環境、建物の設計、情報流通の在り方まで見直す知恵比べです。
最前線の農家への支援も欠かせず、目に見えない存在が社会のあり方を今ここで問い直しています。
参考文献:
Yeh KB, Bahnfleth WP, Bradforda E, et al. Three things we can do now to reduce the risk of avian influenza spillovers. Proc Natl Acad Sci U S A. 2025;122(31):e2503565122. doi:10.1073/pnas.2503565122

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
