アルツハイマー病リスクを減らす―ウォーキングと食生活の影響

アルツハイマー病リスクを減らす―ウォーキングと食生活の影響

 

「最近、物忘れが増えた気がする…年のせいかな?」

そんな話をした翌日、スーパーで同じ商品を3回カゴに入れていたら、本人は笑うどころじゃありません。

その瞬間、頭の中でサスペンスBGMが流れ出し、「これって大丈夫?」と呆然となる…でも、慌てなくてもよさそうです。

最新の研究によれば、歩くことと食事を少し工夫するだけで、その心配をある程度カバーできる可能性があるのです。

 

必要なのは、特別なトレーニングマシンや入手困難なスーパーフードではなく、いつものウォーキングと、ちょっと気をつけた食事

これなら、今日からでも始められます。

 

今回の研究は、アルツハイマー病の発症リスクを高める遺伝子型「APOE ε4」を持つ高齢者を対象に行われました。

この遺伝子は脳内の老廃物処理やコレステロール代謝に関わり、保有者は発症リスクが高まります。

平均年齢74歳の2,981人を10年間追跡したところ、ε4保有者は非保有者に比べて認知機能の低下が速い傾向がありましたが、定期的なウォーキングがその低下を和らげていました。

 

具体的には、歩行量が10%増えるごとに、女性では複雑な思考力が4.7%、男性では2.6%改善。

全体的な認知機能では、女性が8.5%、男性が12%向上していました。

脳血流の改善や神経成長因子の増加、炎症や酸化ストレスの低減など、複数の生物学的メカニズムが関わっていると考えられます。

 

さらに、フィンランド、フランス、日本で行われた大規模臨床試験をまとめた解析では、運動・健康的な食事・認知トレーニングなどの複合的な生活習慣改善が、ε4保有者に特に大きな効果をもたらすことも確認されました。

24か月後の認知機能スコアは、非保有者よりもε4保有者で大きく改善し、その効果量は0.282と統計的に有意でした。

 

まとめると、今回の研究結果は次の通りです。

 

* APOE ε4保有者は認知機能低下が速いが、定期的なウォーキングでその進行を緩やかにできる

* 歩行量10%増加で、女性は最大8.5%、男性は最大12%の認知機能改善

* 複合的な生活習慣改善は、特にε4保有者に効果的

* 効果はアジア人と欧州人、軽度認知障害の有無を問わず確認

 

高価なサプリや最新機器よりも、まずは近所を少し長めに歩くことから。

遺伝的リスクは変えられませんが、「歩く」、「バランスよく食べる」というシンプルな習慣が、未来の脳を守る最強の味方になるかもしれません。

 

参考文献:

Alzheimer’s Association. US POINTER Study Results. Alzheimer’s Association International Conference (AAIC) 2025; July 2025; Philadelphia, PA.

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。