IgA腎症は、腎臓の糸球体にIgAという抗体が沈着して起こる、比較的よく見られる腎疾患です。
確定診断には腎生検が必要ですが、この検査は入院や体への負担が避けられません。
採血だけで診断や予後の見通しが立てられれば、患者にも医療現場にも大きな利点があります。
インドの研究チームは、血液中の免疫グロブリンA(IgA)と補体C3の比率、すなわちIgA/C3比に着目しました。
258人のIgA腎症患者と90人の非IgA腎症患者を比べると、IgA腎症の患者ではこの比が平均的に2.4、対照群では1.8と明らかに高くなっていました(p<0.001)。
ここでいう「カットオフ値2.0」とは、この値を境に病気の可能性を判断する基準のことです。
この基準で診断すると、病気の人を正しく見つけられる確率(感度)が70.5%、病気でない人を正しく除外できる確率(特異度)が62.2%という結果でした。
さらにIgA/C3比をもとに2つのグループに分けて比べてみると、比率が高いグループ(>2.0)は、低いグループ(≤2.0)に比べて平均年齢が高く(中央値34歳と29歳)、高血圧を持つ人の割合が多く(70.6%と50.5%)、腎機能の数値であるeGFRは低く(47.7と77.7 mL/min/1.73m²)、腎臓の一部が硬くなる病変(分節性糸球体硬化症)の割合も高め(80.4%と62.1%)でした。
ただし、その後約3年間の経過観察では、腎機能が悪化した割合はほぼ同じ(26.3%と27.0%)で、統計的に見てもIgA/C3比が将来の腎機能低下を予測する明確な指標にはなりませんでした。
まとめると、IgA/C3比はIgA腎症の患者で高くなる傾向はありますが、インドの患者ではこの数字だけで正確に診断したり将来の病状を予測したりする力は十分ではありません。
診断される時点で病気がかなり進んでいる例が多く、そのため比率の高さが「慢性の変化」を示している可能性があります。
血液検査だけでわかる補助的な目安としては使えますが、腎生検の代わりになるほどの精度はなく、とくに病気の初期段階や時間による変化を詳しく追う研究がこれからの課題となります。
参考文献:
Swamy, A., Antony, A., Datta, S.K. et al. Serum IgA/C3 ratio as a diagnostic and prognostic biomarker for IgA nephropathy. Sci Rep 15, 29007 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-10578-x

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