クリーンなエネルギーの象徴として、太陽光発電は世界各地で設置面積を広げています。
屋根の上から広大な砂漠まで、整然と並んだパネル群は、その風景を異世界めいた空気に包み込みます。
しかし、「ひとつ手を打てば、別の所でしわ寄せが来る」のがこの世の常。
太陽光発電にも、そんな裏の顔があります。
「フォトボルタイック・ヒートアイランド効果(PVHI)」と呼ばれ、都市部で見られるヒートアイランド現象の“太陽光発電版”ともいえるものです。
これは大規模発電所周辺の気温が自然環境より高くなる現象です。
アリゾナ州の砂漠地帯で、アリゾナ大学の研究チームが1年間にわたり調査を行いました。
観測地点は自然の砂漠、都市の駐車場、そして1MW規模の太陽光発電所の3カ所。
結果は明確でした。
発電所の年間平均気温は砂漠より約2.4℃高く、とくに夜間は3~4℃高温で、都市の駐車場を上回ることも多かったのです。
夏や春には夜間で+3.5℃に達し、この差は都市ヒートアイランドの倍近くになりました。
都市駐車場との差は夏夜間で約2.3℃あり、PVHIの強さが際立ちます。
原因はひとつではありません。
建設時に植物が失われ、蒸散による自然の冷却が失われます。
さらに、パネルは反射率が低く、日中に熱をたっぷりと吸収し、その一部は地面に蓄熱されていきます。
夜になるとパネルがふたをするように熱を閉じ込め、放熱はゆっくりとしか進みません。
とはいえ、これで太陽光発電の価値が揺らぐわけではありません。
地球規模の温暖化対策の切り札であることは変わりません。
ただ、設計や立地では、この“局所的な暑さ”をどうやって和らげるかを考える必要があります。
パネルの間に草木を植えて蒸散を復活させる、地表の反射率を調整する――工夫の余地は十分にあります。
再生可能エネルギーが広がる時代、太陽と地表の熱、その両方と折り合いをつける知恵が求められています。
その選択次第で、未来の風景も、そこに流れる空気の匂いも、季節の色合いまでもが変わっていくでしょう。
参考文献:
Barron-Gafford, G., Minor, R., Allen, N. et al. The Photovoltaic Heat Island Effect: Larger solar power plants increase local temperatures. Sci Rep 6, 35070 (2016). https://doi.org/10.1038/srep35070

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
