夜、そろそろ寝るべき時間だと頭では理解している。
体もたしかに疲労を感じている。
それにもかかわらず、スマートフォンを手に取ってしまったり、特に目的もなく動画サイトを眺め続けたり。
こうした行動は「ベッドタイム・プロクラスティネーション」、日本語で言えば「就寝の先延ばし」と呼ばれるものです。
これは、外部からの強制ではなく、自分の意思で就寝を遅らせてしまう状態を指します。
この就寝の先延ばしと、個人の心理状態との関連を探る研究が、中国の大学生を対象に行われました。
研究者たちが注目したのは「自己効力感」という概念です。
これは、ある状況において「自分はうまくやれる」と信じることのできる感覚を指します。
調査は、中国の吉林省、遼寧省、山東省の大学に通う468人の学生を対象に、オンラインで実施されました。
その結果、自己効力感が低い学生ほど、就寝を先延ばしにする傾向が強いことがわかりました。
では、自己効力感の低さと夜更かしの間には、どのような心理的なメカニズムが働いているのでしょう。
研究チームは、2つの要因が関係していると考えました。
ひとつは「FoMO(フォーモー)」、つまり「取り残されることへの恐怖」です。
これは、他人が自分抜きで有益な経験をしているのではないかという不安感を指し、ソーシャルメディアの閲覧などで引き起こされることが多いとされています。
もうひとつはソーシャルメディアを頻繁に利用することです。
分析の結果、自己効力感が低い人は、このFoMOを強く感じ、ソーシャルメディアをより頻繁に利用する傾向がありました。
そして、この2つの要素が、結果的に就寝時間を遅らせる行動につながっていたのです。
つまり、自分への自信のなさが、SNSへの依存や「乗り遅れたくない」という焦りを生み、夜の貴重な休息時間を削っている、という構図が見えてきます。
もちろん、この2つの要因だけで、就寝の先延ばしのすべてが説明できるわけではありません。
また、この研究は特定の集団における相関関係を示したものであり、どちらが原因でどちらが結果かを断定することはできません。
とはいえ、夜更けにスマホの画面を眺めている私たちの姿は、「もうやめておこう」と思いつつ、つい手を伸ばしてしまうチョコレートの箱に似ています。
一粒がまた一粒を呼び、気づけば空っぽになった箱と後悔だけが残るように、翌朝の疲労感もまた避けられません。
自分を「意志が弱い」と責める代わりに、つい手が伸びるその心の隙間―寂しさや自信の揺らぎに目を向ければ、ほんの少しだけ、心地よい眠りに近づける気がします。
参考文献:
Bao, H., & Li, S. (2025). Self-Efficacy, Fear of Missing out, Social Media Use, and Bedtime Procrastination in Chinese College Students. Psychological Reports, 0(0). https://doi.org/10.1177/00332941251329864

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
