暑さ対策として扇風機を使うのは、日本でも昔からおなじみの光景です。
なんなら「クーラーは嫌い。かえって調子が悪くなる。私は扇風機で十分」と言い切ってしまう高齢者の方もいて、家族を困らせてしまうというお話もよく耳にしています。
しかし、「暑すぎる時は扇風機の使用はかえって危険」といった注意喚起があるのをご存じでしょうか。
実際、米国疾病予防管理センター(CDC)は気温32℃以上では扇風機の使用を推奨していないのです。
その一方で、実際にはどのくらいの暑さであれば扇風機が安全で効果的なのか、最近の研究が新たな視点を教えてくれています。
今回紹介する研究は、高齢者が高温環境に置かれた際の体温や快適感に対する扇風機の影響を検証したものです。
対象となったのは冠動脈疾患を持つ人と持たない人、計58名の高齢者でした。実験では、湿度が高く気温38℃の環境と、乾燥して気温45℃の環境が用意されました。
その結果、高温多湿(38℃、湿度60%)の環境では、扇風機を使うことで高齢者の体温は0.1℃ほど下がり、発汗量は毎時57mL増加しました。
快適感も大きく向上しています。
一方、皮膚を濡らす方法は体温に大きな影響を与えませんでしたが、発汗量を減少させ、快適感もやや改善しました。
また、扇風機と皮膚を濡らす方法を組み合わせると快適感が最も改善しました。
対照的に、非常に高温で乾燥した(45℃、湿度15%)環境では、扇風機を使用すると体温が逆に0.3℃上昇し、発汗量も270mL/hと著しく増えました。
さらに不快感も増してしまいました。
皮膚を濡らす方法のみが、発汗量を抑え、体感温度を改善しています。
こうした結果から、高齢者が熱中症のリスクを避けるためには、湿度が高く適度な暑さ(38℃程度)であれば扇風機は有効ですが、非常に暑く乾燥した環境では逆効果となることが分かりました。
皮膚を濡らす方法は、どちらの環境でも発汗量を抑えて快適感を改善し、脱水のリスクを減らすのに効果的です。
日本の夏は蒸し暑い日が多いため、扇風機を上手に使いながら、必要に応じて皮膚を濡らすなどの工夫を取り入れて、安全で快適に暑さを乗り切ることができるでしょう。
クーラーをつけたがらない高齢者の方にも、扇風機をうまく使った暑さ対策を提案してみてはいかがでしょうか。
参考文献:
Chaseling GK, Vargas NT, Hospers L, et al. Thermal and Perceptual Responses of Older Adults With Fan Use in Heat Extremes: A Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial. JAMA Netw Open. 2025;8(7):e2523810. Published 2025 Jul 1. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.23810

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
