エナジードリンクを手に取ると、成分表示には「タウリン」の文字はほぼ必ず目に入ります。
タウリンは、体力増強・健康増進などパフォーマンスを高める立役者として知られています。
2023年にはマウスやサルの寿命を延ばす可能性が報告され、一躍「長寿の星」として脚光を浴びました。
さらに、人間の血中タウリン濃度も年齢とともに減少するという観察結果が、このサプリメントブームを加速させたようです。
ところが、科学の世界は必ずしも期待通りに進むわけではありません。
米国国立老化研究所のマリア・エミリア・フェルナンデス博士らの研究では、ヒトのタウリン濃度を長期間にわたり観察したところ、加齢に伴う一貫した低下はなく、多くの人ではむしろ安定、あるいは増加していることが分かりました。
実際、タウリンの濃度は年齢よりも食事(肉、魚、シーフード、乳製品など)や体質によって大きく影響されることが明らかになっています。
アンチエイジングの切り札として考えるには、まだ根拠が弱いのです。
さらにニューヨーク州ロチェスター大学医療センターの研究では、白血病細胞の周囲に高濃度のタウリンが存在し、細胞がこれを取り込んで増殖のエネルギー源としている可能性が報告されました。
ただし、これは特殊な条件下での観察であり、実際に摂取したタウリンががん細胞の増殖を助けるかは未だ不明です。
現状では、タウリンが万人に安全だとする基準値はなく、1日の安全な摂取量は体重1kgあたり100mg(70kgの成人で約7g)とされています。
エナジードリンクには1リットルあたり4gの規制も設けられていますが、その妥当性も再検討が必要との声が上がっています。
専門家は現在、タウリンの摂取を広く推奨も否定もせず、慎重な態度をとっています。
特に白血病のリスクが高い人は、サプリメント摂取を避ける方が望ましいとされています。
タウリンがもたらす効果や副作用の全体像はまだ十分に解明されていません。
一つの成分だけで健康や寿命が劇的に変わるほど、私たちの体は単純ではありません。
焦らず、地道に健康を積み上げていくことが大切だということでしょう。
参考文献:
Sharma, S., Rodems, B.J., Baker, C.D. et al. Taurine from tumour niche drives glycolysis to promote leukaemogenesis. Nature (2025). https://doi.org/10.1038/s41586-025-09018-7

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
