スマホでプロファイルされる私たち―デジタル精神医学の応用

スマホでプロファイルされる私たち―デジタル精神医学の応用

 

私たちは一日に何度スマホをチェックしているでしょう。

時間を確認したり、通知を見たり、何気なく画面を点けたり消したり。

恐らく、朝起きて最初に触ってしまうのはスマホでしょうし、寝床で最後まで触れているのもスマホでしょう。

裏を返せば、私たちの1日の行動は、ほとんどスマホとともにあるということになります。

 

アメリカで行われたある研究が、スマホのセンサーから得られる行動データをもとに、精神的な問題の兆候を発見できる可能性を示しました。

557名の参加者から、15日間にわたりGPSや加速度計、通話履歴、画面のオンオフ記録など27種類のデータを収集しました。

すると、心理的な問題の程度によって特定の行動パターンが現れることが明らかになったのです。

 

具体的には、精神的不調の総合指標(pファクター)が高い人ほど、移動距離が短く家にいる時間が長くなる傾向が見られました。

また、就寝時間が遅くなり、スマホの充電をあまりしないという特徴もありました。

さらに、個別の心理的領域ごとにも特徴的な行動がありました。

例えば、「離脱」傾向が高い人は身体活動が少なくなり、「敵意」が強い人は通話の回数や通話時間が短くなる傾向が見られました。

 

スマホが私たちの内面を映し出す鏡となるかもしれない―この発見は、デジタル精神医学の大きな一歩となります。

従来の診察や自己申告だけでは見落としてしまう日常の小さな兆しを、スマホが拾い上げてくれる可能性があります。

こうした技術を利用することで、精神的な不調の早期発見や、より適切な治療につながることが期待されています。

 

とはいえ、プライバシーやデータの扱いには慎重な配慮が不可欠となります。

今回収集したデータは通話やSNSの内容には触れていませんが、それでもこれほど詳細なプロファイルが可能だということが明らかになりました。

スマホは便利な道具ですが、それは同時に私たちの生活を細部まで記録するデバイスでもあります。

この便利さとリスクの間で上手にバランスを取りつつ、新たな技術が私たちの心の健康を支えてくれることを願います。

 

参考文献:

Ringwald WR, King G, Vize CE, Wright AGC. Passive Smartphone Sensors for Detecting Psychopathology. JAMA Netw Open. 2025;8(7):e2519047. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.19047

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。