映画に登場するスーパーマンは、黄色い太陽の光を浴びて超人的な力を得ます。
植物が光合成をするように、彼は太陽エネルギーを自身の細胞に蓄え、驚異的な能力を発揮するのです。
一方、現実の世界でも、冬が長く日照時間が短い北欧では、健康維持のための日光浴が欠かせません。
特にビタミンD不足を解消する効果が知られていますが、実は太陽光の恩恵はそれだけではありませんでした。
私たちの目には見えない長い波長の赤外線が、体の奥深くまで浸透し、全身に良い影響を与えていることが明らかになっています。
これは、自然光の少ない室内で過ごす現代人にも重要な意味を持つものです。
ロンドン大学の研究チームは晴れた日の真昼間、上半身裸の男性の背中に太陽光を当て、胸側まで光が透過するかどうかを測定しました。
その結果、830〜860 nmの近赤外線が人体を通り抜けることが確認されました。
この赤外線は衣服を通しても届くため、私たちは日常的にその影響を受けている可能性があります。
衣服も難なく通り抜けるこの光。私たちの体に一体どんな影響を与えているのでしょう。
研究チームは、同じ波長帯(ピーク850 nm)の赤外線を人工的に作り出し、被験者の背中に15分間照射する実験を行いました。
すると24時間後、視覚機能が明らかに向上していました。
特に青系統の色を見分ける能力は16%も改善し、光が目に入らないよう頭部をアルミホイルで覆った場合でも、7%の改善が認められました。
これは背中に浴びた光が全身を通じて目の機能を高める、「遠隔効果(アブスコパル効果)」が起きていることを意味しています。
この効果の主役は、細胞内でエネルギーを生産するミトコンドリアです。
ミトコンドリアは長い波長の光によって活性化され、まるで小さな太陽光発電所のように細胞のエネルギー源であるATPを効率よく生産します。
一方で短波長の青色光(400〜450 nm)は逆にミトコンドリアの働きを妨げるため、近年普及しているLED照明の影響が懸念されています。
特に睡眠障害や疲労感の増加など、日常生活に具体的な悪影響を及ぼしている可能性も指摘されています。
衣服を重ね着しても赤外線は容易に透過します。
実験では、Tシャツやシャツ、セーターを重ねた6層の衣服でも赤外線の透過性が確認されました。
つまり、日常生活で無意識にこの赤外線を取り込んでいる私たちは、視覚機能だけでなく、血糖値や中枢神経系の健康も密かに支えられている可能性があります。
今後の照明設計や健康管理では、この見えない太陽光の力を再評価することが求められるでしょう。
「ひなたぼっこ」という昔ながらの習慣が、科学的にも裏付けられた健康法だったというわけです。
スーパーマンほど派手ではありませんが、私たちもやはり「太陽の恩恵」を受ける身だったのですね。
参考文献:
Jeffery, G., Fosbury, R., Barrett, E. et al. Longer wavelengths in sunlight pass through the human body and have a systemic impact which improves vision. Sci Rep 15, 24435 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-09785-3

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。
