とろけるオムライスと、冴えわたる脳の話―卵が認知症予防に貢献

とろけるオムライスと、冴えわたる脳の話―卵が認知症予防に貢献

 

伊丹十三監督の映画『タンポポ』はご存知の方も多いでしょう。

この映画はラーメンをテーマにした作品ですが、強烈な印象を残しているのが作中に登場する「オムライス」です。忍び込んだ厨房で、ホームレスの男(演じているのは、あのノッポさん)が少年のために作る、あの見事なオムライス。

フライパンの上で鮮やかに整えられたオムレツをチキンライスにのせ、ナイフで切り開くと、中から半熟の卵がとろりと流れ出すのです。

料理の技術的な探求と、それがもたらす官能的な喜びが見事に表現されています。

 

そんな魅力的で美味しい卵ですが、最近の研究によると、私たちの脳にも良い影響を与えるかもしれないことが明らかになりました。

 

アメリカで行われた研究によると、平均年齢81歳の1024名を約7年間にわたって観察した結果、週に1個以上卵を食べる高齢者は、アルツハイマー型認知症のリスクが約47%も低下したことがわかりました。

さらに、週に2個以上卵を摂取したグループも、同様にリスクが半分近く減少したそうです。

これはなかなか注目すべき成果と言えるでしょう。

 

卵には脳の健康を支える栄養素が豊富に含まれています。

特に注目されるのが「コリン」という栄養素。

これが神経伝達物質であるアセチルコリンの原料となり、記憶や認知機能を守る役割を担っています。

今回の研究でも、卵による認知症リスクの低下の約39%が、このコリンの働きによるものだと確認されました。

 

研究では、亡くなった578人の脳の解剖調査も行われましたが、そこでも卵を定期的に摂取していた人たちは、認知症特有の脳の病変が少ないことが示されました。

これは単に認知症の症状が軽減されるだけではなく、根本的な病気の進行そのものが抑制されている可能性を示しています。

 

とはいえ、卵だけ食べていれば認知症にならない、というほど単純な話ではありません。

栄養バランスを考えた食生活や、適度な運動、知的な活動を日常的に行うことが重要なのは言うまでもありません。

しかし、この研究の結果は私たちが普段、気軽に食べている卵に秘められた、意外なポテンシャルを教えてくれます。

 

人生の後半戦、どうせ食べるなら、栄養のあるものを美味しく楽しみたいものです。

明日の朝食は卵を使った料理で、脳にも少しばかりのご褒美を与えてみるのはいかがでしょう。

 

参考文献:

Pan Y, Wallace TC, Karosas T, Bennett DA, Agarwal P, Chung M. Association of Egg Intake With Alzheimer’s Dementia Risk in Older Adults: The Rush Memory and Aging Project. J Nutr. 2024;154(7):2236-2243. doi:10.1016/j.tjnut.2024.05.012

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。