痛風と慢性腎臓病―少しずつ、慎重に

痛風と慢性腎臓病―少しずつ、慎重に

 

「風が吹いても痛い」から痛風。

なんとも詩的な病名ですが、経験者にとっては悪夢以外の何物でもありません。

特に慢性腎臓病(CKD)の患者さんにとっては、痛風は厄介な日常の難題です。

痛風は尿酸の結晶が関節に沈着し、激しい痛みを伴う炎症を起こします。

世界では2020年時点で5,580万人が痛風に悩まされており、2050年までに9,580万人に達すると予想されています。

CKDの患者さんはさらに痛風のリスクが高く、腎機能が低下するほど発症率が高まります。

 

CKD患者における痛風治療は、腎臓の機能低下による薬剤の制限で難しくなります。

特に、尿酸を下げる治療薬(尿酸降下療法)のひとつであるアロプリノールは、過去には腎機能に応じて使用量が厳しく制限されてきました。

しかし、近年の研究では、従来の制限を超える投与量でも安全かつ効果的に尿酸をコントロールできることが示されています。

ある研究では、CKD患者に対して、従来の腎機能に基づく推奨量を超えたアロプリノール投与で、尿酸値目標に達した割合が69%に達しました。

 

アロプリノールの副作用として稀に重篤な過敏症(AHS)が報告されています。

特に東アジア系やアフリカ系の患者さんでは、遺伝子型(HLA-B\*5801)が関連していることが知られています。

また、治療開始時に少量から始め、徐々に量を増やす「Start-low-go-slow」法が安全で有効とされています。

 

アロプリノールが合わない場合や効果が不十分な場合には、フェブキソスタットという薬剤が使われます。

ただし、心血管疾患のリスクとの関連が指摘されているため、患者さんの全身状態を考慮した慎重な判断が必要です。

また、免疫調節薬を併用することで、尿酸を分解するペグロティカーゼの効果を高める方法も登場しています。(日本未承認)

 

CKD患者さんでの急性痛風発作には、コルヒチンやステロイドが一般的ですが、特に腎機能が著しく低下している場合、ステロイドが第一選択となります。

ロキソニンなどの消炎鎮痛薬は腎障害のリスクがあるため、避けるべきです。

 

かつての常識が新しい知見によって書き換えられている今、痛風管理はCKD患者さんにとって、より安全で実効性のある方向へと進化しています。

薬剤使用の制限は慎重さという名の安全策でしたが、新たなエビデンスにより、従来より積極的な薬剤の使用が可能となってきました。

腎機能に配慮しつつも、積極的に目標達成を目指す治療が、患者さんの生活の質を高める次の一歩となると思います。

 

参考文献:

Ostrowski RA. Gout Management in Patients With CKD. Am J Kidney Dis. Published online July 1, 2025. doi:10.1053/j.ajkd.2025.04.020

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。