汗をかけばいいわけじゃない―ゆるい運動と心のほどよい関係

汗をかけばいいわけじゃない―ゆるい運動と心のほどよい関係

 

運動が体に良い。これはまあ、自明の理でしょう。

では、心の健康についてはどうでしょうか。

私などは昭和の人間ですから、イヤなことがあったりムシャクシャしたりするとガムシャラに汗を流して、気分を晴らそうとする派です。

そして、ヘトヘトになって、実際に晴れた気がするのです。

しかし、それは本当なのでしょうか。それとも、もっとうまい付き合い方があるのか。

 

上海の大学生241名を対象に、そんな問いに答えるような研究が行われました。

彼らをゴルフ、バスケットボール、卓球の3つのグループに分け、4ヶ月間にわたって週に1回、90分の授業を受けてもらったのです。

そして、心身にどんな変化が現れるかを調べました。

 

まず身体的な変化ですが、これは想像通りでした。

3グループとも肺活量が向上。バスケットボール組は瞬発力を示す立ち幅跳びの記録が伸び、ゴルフ組は体の柔軟性が増しました。

それぞれのスポーツが持つ特性が、素直に体に反映された形です。

 

本題はここからです。心の健康、つまり不安や抑うつの度合いはどう変わったか。

結果から言うと、最も大きな改善効果を見せたのはゴルフでした。不安症状を示すスコアが58.46から53.23へと約9%も改善されました。

次いでバスケットボールは57.24から55.68へ約3%改善しました。

卓球は抑うつの改善は見られたものの、不安への効果は限定的でした。不安スコアはわずか1.3%の改善にとどまりました。

ゴルフ場の緑や開放感が、何かしら良い影響を与えたのかもしれません。

 

さらに、この研究で浮かび上がったのは、運動の「強度」と「頻度」をめぐる少しばかり逆説的な関係です。

運動を週に2回以上行うような「高頻度」グループは、心の健康状態が良いという順当な結果でした。不安と抑うつがそれぞれ約2%、6%改善しました。

ところが、1回の運動時間が30分を超える「高強度」の運動をしている人たちは、不安や抑うつのレベルがむしろ高い傾向にあったのです。

不安はわずか約3%の改善に留まり、抑うつの改善も微々たるものでした。

 

つまり、心のためを思うなら、息を切らしてヘトヘトになるまで自分を追い込むより、散歩のような軽い運動でもいいから、生活の中に運動の機会をコンスタントに設ける方が有効かもしれない、ということです。

実際、低強度の運動は不安の改善効果が最も高く、改善率は約7%と顕著でした。

 

激しい運動が、必ずしも心の平穏につながるわけではない。

大切なのは、自分なりの心地よいペースを見つけて、それを淡々と続けること。

どうやら、心と体との付き合い方というのは、そういうことのようです。

 

参考文献:

Yu, D., Shimura, M. & Kawanishi, M. Influence of different training regimens and regular exercise habits on physical strength, anxiety, and depression in adolescents. Sci Rep 15, 24016 (2025). https://doi.org/10.1038/s41598-025-09793-3

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。