現在、西日本を中心に全国各地で猛烈な暑さが続いています。
熱中症と疑われる症状で搬送される人も相次ぎ、身体への影響が深刻になっています。
暑さを侮ってはいけません。
熱中症は生命の危機にも関わる病態です。
お互いに声をかけあうことが必要ですし、こまめに水分を摂って予防に努めることが大切です。
さて、昭和世代の私たちは、とかく精神論だけで押し通そうとする時代でした。
「暑いから何もしたくない」とボヤいたら、「たるんどる!」で一喝されたものです。
けれども、最近の研究によれば、暑いと何もしたくなくなるというのは、身体だけでなく、若者たちの心にも見過ごせない影響を及ぼしているようです。
中国の研究者たちは最近の大規模な調査を通じて、熱波と若者のメンタルヘルスの関係を明らかにしました。
全国の10~18歳の約2万人を対象としたこの調査では、強烈な熱波を経験した学生ほど抑うつや不安の症状を報告する割合が高いことが示されています。
具体的には、熱波の強さを示す「過剰熱指数(Excess Heat Factor)」が1単位上がるごとに、抑うつ症状のリスクは13%、不安症状のリスクは12%増加しました。
特に注目すべきは、こうした影響がすべての若者に一様ではない点です。
都市部よりも農村部に住む学生たち、そして一般的に不安や抑うつを訴えにくいとされる男子学生により顕著な影響が見られました。
男子学生では熱波への曝露が多いほど不安症状のリスクが22%も高まりましたが、女子では統計的に意味のある変化は見られませんでした。
この研究は単純な最高気温ではなく、短期的な気温の急上昇とその土地の平均的な気候からの乖離を組み合わせた指標を使用しています。
これにより、暑さが心身に与えるストレスの蓄積をよりリアルに捉えることができました。
もちろん、この研究だけで「熱波がうつを引き起こす」と完全に断定することはできません。
また、エアコンの有無など個人的な要因も考慮されていません。
しかしながら、暑さという自然現象が若者の心に影響を及ぼしている可能性は無視できないものでしょう。
私たち昭和世代は暑さを乗り越える術として、ひたすら精神論を振りかざしてきました。
がまん大会のような催しやテレビ番組まであった時代です。
暑さがまるで根性試しのように扱われ、それを耐え抜くことこそが一つの勲章なのでした。
でも時代は変わり、今求められるのはもっと具体的で実用的な対策です。
特に農村地域の学生や男子学生にとっては、冷却設備の整備や通気性の良い制服の採用といった現実的な配慮が欠かせません。
暑さが若者の心にもたらす見えにくい影響をしっかり理解し、環境に柔軟に適応していくことが、これから続く暑い日々を心穏やかに乗り切るための大切な鍵となるでしょう。
参考文献:
Hu J, Hu W, Xu Z, et al. Associations of exposure to heatwaves with depression and anxiety among adolescents: A cross-sectional study of the Chinese adolescent health survey. J Affect Disord. 2025;387:119499. doi:10.1016/j.jad.2025.119499

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。