たかが5Kg、されど5Kg 重さが教える身体の警告

たかが5Kg、されど5Kg 重さが教える身体の警告

 

猫を飼っている人なら、その重みをよく知っています。

平均的な家猫の体重はおよそ5キロ。

スーパーで買い物をすれば、袋はあっという間にそれを超えます。

実はこの「5キロ」という重さが、私たちの健康状態を測る指標になるのだそうです。

 

ヨーロッパとイスラエルの15か国、50歳以上の約51,500人を対象にした調査では、「5キロの荷物を持ち上げるのは困難ですか?」という質問に対し、約19.5%の人が「困難だ」と答えました。

そして、この人たちを約5年間追跡したところ、健康リスクが明らかに高くなっていたのです。

 

具体的には、生活の質(QoL)が低下するリスクは9.42%、うつ症状を発症するリスクは8.14%、握力が基準値を下回るリスクは7.38%、変形性関節症の発症リスクは6.98%も上昇していました。

また、関節リウマチや心臓発作、糖尿病、高血圧、アルツハイマー病、脳卒中、股関節骨折など、多くの病気のリスクも増加していました。

 

なぜ単なる重さを持ち上げることが健康に関係するのでしょうか。

研究者たちは、筋力の低下が運動不足の兆候であり、それが多くの病気のリスク要因になると説明しています。

また、筋肉は体を動かすエンジンであるだけでなく、タンパク質を蓄える大切な貯蔵庫でもあります。

この貯蔵庫が充実していると、病気や老化による消耗から体を守る助けとなるのです。

 

もちろん、5キロを持ち上げられないからといって、すぐに病気になるわけではありません。

あくまでも傾向を示しているに過ぎません。

ただ、この簡単な動作が難しくなってきたら、自分の健康状態の変化に気づく良いタイミングかもしれませんね。

 

今度、猫をひょいと抱き上げる時には、私たちは無意識に自分の健康を確かめてしまうのでしょう。

 

参考文献:

Qaisar R, Hussain MA, Franzese F, et al. The simple task of lifting five kilograms serves as a predictor of age-related disorders in old adults. Sci Rep. 2025;15(1):17833. Published 2025 May 22. doi:10.1038/s41598-025-03128-y

 

 

紹介した論文の音声概要を、NotebookLMでポッドキャスト化してみました。あわせてお楽しみください。